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赤い髪のリリス 戦いの風〜世継ぎの王子なのに赤い髪のせいで捨てられたけど、 魔導師になって仲間増やして巫子になって火の神殿再興します〜  作者: LLX
30、火の巫子そろう

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355、地龍から聞く城のこと

「宣戦布告とは、穏やかではありませんね」


ふと、横からエリンが顔を上げる。


「ええ、青が言っちゃったのです。

お城に向かって、災厄は魔物のせいで火には一切落ち度はない、巫子を殺した過去の王子が悪いのだと。

代々の火の巫子を殺したこと、ぜーんぶ赤の巫子に罪をなすりつけたこと、許せぬと。

だから王家は火の神と火の巫子にかしずいて謝れって。

私はその時、あれの声が聞こえていましたから、もう、意識はもうろうとしてるのに、卒倒しそうでした」


「なるほど青様が……、 あの時そのような事が」


うなずくホムラに、エリンが首を傾げる。


「え?いつのお話しでしょうか?」


「そなたが寝ている間の話だ。お二人の会話が皆に聞こえてしまった。

赤様が止めようとなさったのだが、それがそのような事とは我らも知らぬ。

だが、青様が外からお力で声を拡散なされたならば、城下全域の者が聞いたのだろう。

さて、青様は今ごろどうなさっているのか、捕らえられていらっしゃればお助けせねばならん」


「いえ、大丈夫のようです。私の心には、飄々(ひょうひょう)とした青の心の内しか見えません。

ただ、城内がどうなっているかは心配ですね」


そこでもう一つ、シオンの姿の地龍が言いにくそうに口を開く。


「実は先ほど感じたことですが、レスラカーン様が城を脱出されたようです。

果たしてどこへ行くのか……、 もしやそちらの館へ向かうのではと」


「レスラカーン様が??

いけません、これは色々ありすぎて頭が追いつきません。どうしてそのような事に? 」


問われても答える事が出来ず、シオンはひたすら頭を下げた。


「この事態、我が領域でありながらそれを許した(とが)は後々この身で負いましょう。

魔導師どもの尻も叩いたのですが、何しろ城は古からの約定で縛られています故、王族の許し無くては何も手出しできない状況。どうかおわかり頂きたく」


「わかります。城におりますと、それをひしひしと感じておりました。

館にお見えになりましたら、詳しくお話も聞けることでしょう。

まずは帰って身体を交換しなくては。

今の体調であれば、青なら自力で回復するでしょう」


胸に手を当て、小さくうなずく。


「では、この子は地の者との連絡用に同行させますので。

どうぞ見知り置きを」


そう言うと、シオンがまた小さな白蛇になってリリスの足首に巻き付く。


「それは助かります。

では、ホムラ様、家までよろしくお願いしますね?」


「承知致しました。

そなたは赤様が落ちないように、補佐を頼む」


エリンに頼むホムラに、リリスがギュッと腕を引いた。


「駄目ですよ、エリン様はもうオキビ様なのですから、ちゃんとオキビって呼んで下さいね! 」


と、言われてもまだエリンに神官の気配は薄い。


「は、しかし、まだオキビの儀式が終わっておりませんので、まだエリン殿でございます」


リリスの手をそっと離し、両手で握って額にあてる。

神官への気遣いなど、無用のことだ。


「リリス様…… 赤様、まだエリンと呼んで下さい。

先日、私はあの状況でも一切のお力を発揮できませんでした。

それに、何をどうすれば良いのかも浮かばないのです。

今はただ、受け継いでいるのは記憶のみでございます」


「儀式…… たったそれだけなのに…… 」


「儀式を経なければ、巫子と守は繋がりが浅く、同化した火打ち石にも火が灯りませぬ。

エリン殿が何も出来なかったというのは、それが原因かと」


ああ…… 何だか、とても残念な気がする。

でも、本人の気持ちがまだ受け入れられないのかもしれない。


「わかりました。では、これまで通り、私もエリン様とお呼びします」


「いえ、様はいらないのですが」


申し訳なさそうにエリンが言うが、これは、これだけは〜〜〜


「まだ無理」

大きくため息を漏らす。


「ですか〜、頑張って、どうかその内はずしてくださいませ」


「どっ…… りょくっ、します」


ふううう…… 思わず顔を背けた。


「じゃっ、乗れ」


意気揚々と、犬さんがリリスの足の間から無理矢理顔を出す。

ハッとホムラが、慌ててリリスの身体をヒョイと抱き上げた。


「汝はまだ信用できぬ! 空を飛ぶなどとんでもござらん!

さ、私の背へ」


「わんわんわん! 乗るの! 」


「駄目だ! お前は先に帰れ! 」


ギリギリ、犬さんとホムラがにらみ合う。

その内、犬さんの身体がムクムクと大きくなり、ボッと火をまとった。



「えと、犬さん、先に帰って、私が帰りますと、お伝え願えますか?」


パッと犬が、大きくうなずいた。


「わかった! わんわん! なら先に行く! 」


言うなり、ぴょーんと道を走り出した。

リリスが胸を押さえて何だか苦しそうに眉根を寄せる。


「ううっ、純粋な犬さんを、何かだましてるようで心苦しいのですが」


「致し方ございませぬ。あの犬の正体がはっきりしませぬ故」


「では、皆様。  帰りましょう! 」


「  はっ!  」  「 承知! 」


ホムラがグルクの姿になり、その背にエリンがリリスを乗せて後ろに乗ると、二人の腰を紐で繋ぐ。


「エリン様のポケットはなんでも入っているんですね」


「ええ、身体中物入れが隠れているんですよ。

でも、先日魔物と戦ったことで、すっかり減ってしまいましたが。

風の御館の薬剤倉庫を見せて頂こうかと」


「いいですよ、でも、薬ばかりでお役に立つかどうかわかりませんが」


「はい、構いません。ホムラ殿、準備できました」


「よし、では! 参ります! 」


バッと、ホムラが飛び立つ。


「わっ! 久しぶりの空ですね。ああ、やっぱり気持ちいい!

ほら、関にあんなにいっぱい人が、皆さん困っているのでしょうね。

気の毒なことをしてしまいました」


眼下の一本道に出来た関では、人々が行列を作って関の通過を待っている。

すべて、自分たちを捕らえる為だったのだろうと思えば、徒労に終わったと言わざるを得ない。

これもあの宰相の指示だったのだろう。

ザレルが振り回され、苦労しているのではないかと案じてため息が出た。

リリスが黒い鹿退治に行った後、めまぐるしく色々のことが起きているのでまとめた感じです。

アデルが魔物の前に出なかったのは、地の巫子が関わるのを良しとしなかったのと、自分まで操られたら終わりだと思ったのかも知れません。

まるで伝染病のようで厄介な悪霊です。

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