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354、地龍を連れてきたよ!

皆、落ち着いて談笑しながら、時々チラリとリリスを見る。

ここまで来てガタガタしても仕方が無いが、もうすでに水と食糧は尽きている。

途中、小さな村で多少なりとも食料を分けてもらったがまったく足りず、ホムラが飛んで調達して来た。

これも、リリスの身体の為に馬車の足を遅くしてもらったからだ。

魔物から逃げる為に激しく走った為、馬車の車輪に痛みがあり、ゆっくり移動しないと揺れてリリスの安静が取れなかった。

それは、同行の戦士達も皆、同意してのことだが、やっと屋根のある場所で眠れると思ったらこれだ。

人のいるところに来ただけに気のゆるみもあり、皆疲れが見えていた。


「お?あれはなんだ?」


「ありゃあ、あの変な犬じゃねえか?」


しばらくすると、地面にポッカリと小さな穴を開けて、中からあの犬さんがピョンと跳びだした。


「おーい、おーい」


とっとっとっと、兵をかき分け、リリスの所に走ってくる。


「あれ、連れ、きた」


「そんなに簡単にいらっしゃるので?あの城の下にいらっしゃった地龍様?」


「うん、来た」


白蛇シオンが、彼の首からするんと降りる。

そして、少し離れると、見る間に大きい大蛇になって行く。


「うおお……何だ?これが……地龍、殿?」


身震いしてひざまずく一同を見回すと、ニイッと蛇なのに笑った。


リリスが地にひざまずこうとすると、ホムラが彼を止める。

見上げると、大きく首を振って必要ないというので、仕方なくそのまま木に座って深々と頭を下げた。


「これは、地龍様、わざわざのお出ましありがとうございます。

私は……」


「良い。赤の巫子殿、お前を知らぬ者はいない。いかがした」


「はい。我ら、せきにはばまれ、進めず苦慮しております。どうかお力をお貸し下さい」


リリスが手を合わせ、うやうやしく頭を下げた。


「おや?ほう、レナントのじゃじゃ馬姫も一緒か」


「な、なんですってぇ!お前!あの時の失礼な地龍ね?!

ぶっ!無礼者!下がりなさい!」


真っ赤な顔のルシリアが、一番会いたくない地龍だったのだろう。

それでも頼るしかない現状に、グッとこらえて一歩引いた。


「ふむ。相変わらず可愛い女よ。よかろう、赤の巫子よ、どこに行きたい?」


「はい、風様の御館へ」


「ククク、あれはお前の家であろう。風殿もお前が帰れば家に戻るだろう。

風殿は今、この国の方々(ほうぼう)を飛び回って異常がないかと見回っている。

先日お前が戦った一件では、力になれずに合わせる顔がないと仰せのようだ。

早う会って安心させよ」


「母上様が……! はい、早くお会いしとうございます!」


「では、一同、準備は良いか?」


クルリと、大蛇が皆を見る。


「えっ!?」


「えっ?!ちょっ、待っ……!」


横でたき火して、今まで話し合っていた兵達が慌ててたき火を消そうとしたときだった。


「ではな。皆少々疲れが見える。館は準備万端よ、ゆっくり休むといい」


「えっ!?」 「あっ!」


「ぎゃああああああああ!!!」


白蛇が霊体になって大きく膨らみ、巨大な口を開くと、悲鳴を上げる姫や兵や馬車や馬ごと一行を飲み込んだ。


「あれ?」


一瞬の風にバッと吹かれ、ぽつんと、リリスと神官2人が残された。

キョロキョロ周りを見回して、リリスが首を傾げる。


「あのー、私たちは?」


そう言うと、地龍である白蛇はドンドンしぼんで小さくなり、人型のシオンに変わってリリスに右膝を付いて頭を下げた。


「火の御使いを食ったと御方様が知れば、我らお叱りを受けてしまいます。

あとは神官殿にお任せしましょう。

ところで、巫子殿は王子の御霊みたまの行き先をご存じでありましょうか?」


「王子?ですか?王子に何かあったのですか?」


そう言えば、カレンが王子にと何か言っていた。

詳しく聞けなかったことが悔やまれる。


「城の世継ぎが、最近様子ががらりと変わって、好き放題なされています。

王や王妃はなげいて何度か注意なされましたが、現状対応に苦慮されたあげく見て見ぬ振りなのです。

我らもあまりに悪気が強くてそばに寄れぬ有様。

恐らくは、王子は魔物に憑依されたのではと我らは考えています。

巫子殿が戦った物も、関係するのではないかと」


「あれが?王子が関係すると?

城から随分離れた場所で起きたことですが」


「トランの魔導師の件もしかり、魔物は思った以上の力を持っていると考えております。

あのご様子では王子の浸食も思った以上にあり、もしや、王子はあの身体を逃げ出したのではと思いまして」


「逃げた?!と?」


リリスが、大きく目を見開く。


「は、見たところ、ますます王子のけがれは深刻になり、あれではもうお身体に戻れないかも知れませぬ」


「そんな……馬鹿な。

ご自分の身体を放棄されたという事か?

それでは現し身がないと消えておしまいになるのも、時間の問題ではないか!」


「ですから、お探ししているのですが。

セフィーリア様には、王子の気配は凡庸ぼんようすぎてわからぬと……

いえ、まあ、普通の人間ですから、そのような感じでしょうが。

何か動物の中などに弾かれたのではないかと、近くの森など、お探し頂いています」


「ああ、それで、母様はお帰りになっていないのですね」


「こくんとうなずいて、地龍が言いにくそうに顔を背ける。


「は、実は先日青の巫子が…………えー、なんと言いましょうか〜えー」


「存じております。あれでは王家への宣戦布告ですね」


リリスが、ハアッと大きくため息を付いた。


この地龍は、言うまでもなく、地の3の巫子をやってるアデルです。

ちょっと意地悪な子ですから、姫とのもめ事もくだらない物でしょう。

まあ、この姫は強いけど見かけによらず可愛いのです。

短編にでも書ければいいなあ。


仕事がちょっと落ち着きそうです。

次は税の申告があるので全然気が休まらないのですが……

現実は厳しい〜

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