表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤い髪のリリス 戦いの風〜世継ぎの王子なのに赤い髪のせいで捨てられたけど、 魔導師になって仲間増やして巫子になって火の神殿再興します〜  作者: LLX
29、城を包む暗雲

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

348/581

347、闇に飲まれるサラカーン

キアナルーサの姿のランドレールの顔が、不気味に笑った。


サラカーンに流し込まれた悪霊の澱が、堰を切ったようにドッと彼の身体を侵食して行く。

腹の中からどす黒い物に覆われて、サラカーンの身体が引きつり、その場に倒れ込んで白目になると、ビクビク何度も痙攣した。


「おお……うおおお…………おおお…………」


「可愛そうな叔父様。

私と手を組みましょう。あの王を撃ち倒さねば、この国に先はないのです。

この国の為に。この国を救う為に。

私と1つになって、この決意を揺るがぬ物にして下さい。


そう、


そうだ、


あの玉座は私の物。

この城すべてが私の物になるはずだったのだ!


悔しや、我を焼き殺した火の指輪。

おのれ、許すまじ火の巫子、火の神、火の精霊!

殺しても殺しても生まれ来る火の巫子、どうすれば断たれるのか、この系譜。

許す物か、火の神殿など。


ああ、だから私の愛する叔父上様、どうか、この私にお力を。

その為にも、決意をお示し下さい」


ガクリと意識を失ったようなサラカーンが、ゆらりと起き上がった。


「おお、おお、おおおお……キ……アナ…………」


ゆっくりと立ち上がり、ふらりと数歩よろめいた彼を、キアナルーサが妖艶に笑って抱きつき、寝室へと手を引いて行く。


「おお……おお……レスファーナ、レスラよ……我が罪は……おおお……キアナ……キアナ……」


許しを請う彼のその心の奥底で、暗い闇の底に落ちて行くサラカーンが必死で抗う。

黒いドロドロとした物をかき分けても、ドンドン心は底なし沼に堕ちて行く。


あれは!あれは!違う!キアナルーサではない!


助けてくれ兄上!兄者!助けて!誰か!


宰相の意識の奥深くで、正常な意識が闇に埋もれながら、遠く目に映るキアナルーサだという少年の顔を見つめる。


あれは!キアナルーサではないなら、誰なんだ?!


あの子は性にうとく、愚鈍で……こんな破廉恥な事など!

美形の親にも少しも似たところがなくて、このような妖艶さなどなかった。

最近は雄々しささえ感じて、立派になったと思っていたのに!


私は、私は!何をしているのだ!


私は!誰か!あいつを!あいつを!!


レスラ!レスラ!これはもう父では無い!

私に!あいつに近寄ってはならん!レスラーーーー!!


レスラカーーーンッ!!逃げよ!逃げよおおおおお!!!



ゴブリと、サラカーンの意識が泥に飲まれ、完全に覆い尽くされる。


手を引かれる今の彼の目の前にいるのは、キアナルーサだと強烈に刷り込まれる。

だが現実のそれは、15歳のキアナルーサではなく、すでに20前後の青年に見える。

知らないはずなのに、それがキアナルーサだと刷り込まれる。


がらんどうの頭が、ドロリとした目で青年を見る。

無意識に、最後の抵抗のようにバシンとランドレールの手を払った。


サラカーンには、精一杯の最後の抵抗でしかない。

ランドレールがククククッと笑い、彼の手をそっと握る。

闇の底からの声のように、その声が不気味に彼を支配した。


「宰相よ、無駄なあがきなどやめるがいい。

さあ、この契りを持って、私たちは一心同体になるのだ。


一緒に、あの王と戦いましょう。

火の巫子など王家の敵、なのに王は敵に転んでしまった。

私たちで、この王家の盛りを存続させるのです。

あなたは1人などではない。

もう1人で苦しむことはない。


さあ、


さあ、私と一緒に


お前の精気を私に注ぎ、私をお前の一部にするのだ。

さすればお前を私の一部にしてやろう。


私の中に、私に溺れて下さいませ。さあ、叔父上様。

ああ、激しく、思うままに。叔父上のこの……」


サラリと部屋着を脱いだ裸体の青年が、サラカーンの上着を、そして服を脱がせて合わせから現れる胸に、口づけを落とす。

唇が、舌が、胸から腹へと。


グラグラと揺れていたサラカーンが、グッと青年の腕を掴み、グイと立ち上がらせ口づけを交わした。

頭の中が、黒く、暗く落ちて行く。

目の前の獲物に、獣のように激しく口づけた。


はあ、はあ、はあ、


「契りを、持って、……」


「そう、あなたと私は一心同体。

叔父上様、どうか私を抱いて、私をあなたのものにして、そして私の為に働いて下さいませ」


バサリ、バサリとサラカーンが服を脱ぎ捨て、見たことも無いはずの青年をベッドに押し倒す。


はあ はあ はあ はあ はあ


はあ はあ はあ はあ


部屋には異様な息遣いが満ちて、青年の顔が、キアナルーサとランドレールの顔が交互に写り、そして重なってランドレールへとなって行く。

それは悪霊の身体。


「クククク、さあ、私の中へ溺れよ宰相サラカーン。

私を満足させよ、すべてのお前の権力を私の為に使うのだ、私1人の為に」


サラカーンが正気を失い、その身体をまさぐると、その手がドプリと真っ黒い液体に沈んだ。

ランドレールの身体の中の、黒い澱みにドブドブと溺れていく。

青年を抱いているようで、青年の身体の中に沈み、黒い澱みの中でただ一人行為にふけっていた。


「クククク……やったぞ。見よ!魔導師どもが、この部屋は見通せまい。

王族の部屋は強い結界が敷いてある。

これは地の精霊王との契約の上で成り立つ強固なモノだ。

主の許し無くては、王家以外何人も入れない。

これは昔から変わらない契約だ。


だが、


私は死しても王族、何の障害でもないのさ。

クククク……

宰相さえ手に入れればあとはどうとでもなる。

この男は王家の刃。


兵も騎士も、隙を突いて何人もの男と契りを持った。

あの騎士長はめざとい。あの盲目の息子も同じだ、気づかれる前になんとしても殺さねば。

まずは息子だ、あの盲目の。美しい青年。

ああ、あの美しいレスラカーン、私がこの手で殺めたい。

だが、あの側近は手強い。

しかしそれも、この男を手に入れるとたやすい。たやすいことだ。



クククク、ああ、なんと言う愉悦。

これほど開放感に満ちた事など無かった。

楽しき事よ。思い通りに、すべてがやっと運び始めた。


ああ、ああ、生きた人間の心地よい熱さよ。

熱いほどの、この生気に満ちた身体。

それを汚して行く楽しみ。

我が血族よ、我が糧になれ、


女などより男が良い。この気持ち、生きている時は誰にも言えなかった。

はあ、はあ、ああ、良い、良い。

今宵は幻のような楽しみに酔いしれよう」


ズブズブと、宰相サラカーンの身体は青年に飲まれて背中しか見えていない。

その中で、サラカーンは悪霊の泥のような澱みと次第に一体化し始めていた。

魔導師が管理する城なのに、ランドレールのやり方はあまりに扇情的で若いニードには耐えられず思わず目をそらします。

でも、一件色欲を満たしているだけに見えて、彼はそれでどんどん城の人間を侵食しています。

その情報を、ニード達は知りません。

彼らは城という建物に孤立して、情報不足なのです。

だからこそ、シャラナを外へと出しました。

ただただ戦力不足です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ