表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

328/581

327、火の神殿の再興を宣言する

火の巫子マリナ・ルーの掲げる手から、激しく青い火柱が立ち、それが空いっぱいに広がって行く。

青い青い輝きが空から降り注ぎ、辺りはまるで水中のように青い世界に染め上がる。


「おお!」

「ひいっ!何だあれは!」


すっかり暗くなっていた空が、青く、青く燃え上がり、兵達が見た事もない景色に、この世の終わりかと恐れを持って頭を抱えた。

その輝きは街全体を、城の上までをも広がりルランの街を照らす。

家の中までを海中のように照らす青い輝きに、城下の人々が何ごとかと家を出てきた。


「お、おい!お前やり過ぎ……」


イネスがマリナを止めようとして、グレンにさえぎられる。

だが、イネスは大きく首を振ってマリナに叫んだ。


「でも!こんな事をしたら、城の者を敵に回してしまう!!

それはリリスの意志に反するだろう?あいつは王に認められて、きちんと順を追いたいんだ!」


イネスはリリスの言葉を代弁するように叫ぶ。

マリナのこの派手なやり方は、まるで王家への宣戦布告だ。

こんな事、リリスはきっと望んでいない。

だが、マリナはそれに静かに答えた。


「わかってるよ、地の巫子。でも、これはこうしなければ、いつまでも進まない。

私は先代に言われてきたんだ。王族と戦えと。


私の赤は、主から指輪を頂いた。

この身体を変われば、すぐにみそぎを終えることが出来る。

火の巫子の赤と青がそろって神器のみそぎを終えるのは、あの忌むべき事態ののち、この三百年近く無かった。

三百年だ、地の巫子。

その間、何百人の火の巫子が殺されたと思う?これはすでに、殺戮だよ。


私は黄泉で、すべての巫子となるべきだった者達と語ってきた。

ひどい物だよ、特に赤の巫子は。

赤い髪の子は、生まれてすぐに口を塞がれ、絞め殺され、川に沈められ、たとえ生き延びても……

見世物小屋に売られ、人買いに売られ、花売りに身をやつして路上で死んで行ったのだ。

半数以上が王族に生まれながらだ。


そして…………

3番目の目を奪われた火の神は、それを見ているしか無かった。


他の精霊王が、知らぬとは言わせない。世継ぎが13の時の旅の目的は、あの目を強固に封印する目的だ。

それは地水火風そろって出来ること、知っていて見ぬ振りをしてきたのさ」


「そんな事……!!」


「見ぬ振りだ!!目をそらしたのだ。それはすべて自分の巫子の為であろう、同じ運命をたどることを避けたのだ。

巫子として、満たされてきたお前達にはわかるまい。

我らは、これから生まれる火の巫子たちのためにも、戦わねばならぬ。

たとえ二人きりでも、それで命落としても。


私はかつて、神殿を起こすと言ったリリスに馬鹿だと言った。

首でも跳ねられればいいと思ったとも。

でも、わかっていたんだ。あいつの目指した物は、自分のためじゃない。

巫子として祭り上げられる、そんな安っぽい物望んでいない。


あるべき物が無いことで、沢山の人に影響が出る。

不幸になる者を黙って見ていられない。

あんな馬鹿な奴が他にいたかい?


だから私は決めたんだ、リリスは人々のために神殿を起こすだろう。

だが、私はリリスのために神殿を起こす。


我らの前には戦いの風が吹き荒れている。

ならば、共に戦おう、私はその為に長く修行をしてきた。

戦いの風に立ち向かい、打ち勝つため」


凜として語る、そこにいるのは、さっきまでのマリナではなかった。

それは確かに、長い修行ののちに覚悟を決めて再生した火の巫子の1人、青の巫子。


その赤い髪は青い火に照らされて青く輝き、色違いの瞳は青く青く燃えている。

そして、マリナは大きく息を吸って街の、そして城の方向へと、あの独特の揺らぎを持って叫んだ。



「   我は火の巫子、青の巫子マリナ・ルー



    人々よ!火をあがめよ! 


    天に輝く日は命のみなもと!我らを慈愛を持って照らし、導くもの。

    燃える炎は人々の暮らしに欠けてはならぬもの。


    炎の神、フレアゴートよ!我らにご加護を!

    天に輝く日の神よ、我らを見守りたまえ!」



マリナが放ったその言葉は、揺らぎを持ってここにいる一同の、そして町中の、更に城内にいる人々の胸を大きく揺さぶった。

イネス達さえ胸を押さえ、その場に膝を付いてしまう。


「く……そっ!い、一体何だ……この、力は?!」


その場の一同が驚きを持ってマリナを見上げる。

グレンは何ごとも無く彼のそばに控え、辺りを警戒していた。


マリナが人々を見回し、そしてまたゆっくりと大きく息を吸う。

掲げた腕輪が青い輝きを増し、彼の身体を包み込んだ。



「    人々よ!我は問う!!


    汝ら、なぜこの世に火の神殿の無い事を疑問に思わぬのか?!

    神は幾度も、汝らのために神殿を起こそうとなされた。

    だが!!王家はそれを許さない!!


    王家は、汝らと同じ人である!!

    汝らは王家が、火の神を見下げることに、怒りを覚えぬのか?!

    火を使う者なれば、火を崇め、恐れを覚えよ!



    ここに宣言しよう。城下ルランの人々よ!



    我ら火の巫子、青の巫子マリナ・ルーと赤の巫子リリスは、

    フレアゴートと空を頂く日の神をたてまつり、



     火の神殿を再興する!



     我らが決意を広めよ!力貸す者に、栄えあれ!  」



おおお!思わずその場にいた者達が声を上げる。

だが、マリナは1度目を閉じ大きく息を付くと、意を決して続けた。

戦いの風、その言葉を発したのは、リリスでは無くマリナでした。

リリスの姿をした、マリナ・ルー、彼は今どきの言葉で言うならゲームチェンジャーです。

彼が修行した青の巫子だからこそ、二人並んでバランスが良いのです。

そして人生で辛酸をなめてきた彼もまた、強力な巫子の1人です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ