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320、青の火の巫子

話は、リリスとマリナが入れ替わった時に戻る。



ゆらゆらと揺らめく青い世界にマリナが降りて、リリスの身体にストンと落ちた。

手を合わせ、うつむいていたリリスの身体がゆらりと傾ぎ、ゴウカが慌てて彼の身体を抱き止める。


「赤様! いかがなされました?! 」


その瞬間、トゲトゲの生えたウニのような黒く巨大な球体がこちらに向かってきた。

それは、カレンが身体を魔物に乗っ取られて変貌したもの。

ゴウカがリリスの身体を抱いたまま、飛び上がって避ける。


トゲの生えた球体は、相変わらずただゴロゴロ転がって、ここにいるリリスたち、地の巫子イネス、水の巫子イルファ、そして水の魔導師シャラナ、あとはカレンを心配してきたものの、水の精霊によって身体を半魚人のように変えられてしまったセリアス。そのそれぞれのメンバーを襲ってくるだけだ。

多少拍子抜けした様子だが、この球体の正体がなんなのか、リリスがマリナの力を借りようと語りかけたところだった。


リリスの身体のマリナが、閉じていた目をゴウカの手の中でパチリと開いて、彼の顔を見上げる。

手を伸ばし、彼の顔の前垂れをスッと上げた。


「あ、赤様? 」


「うふふっ、君がゴウカ? 灰のゴウカだね? ふふっ」


キュッとイタズラっぽく笑う仕草が、リリスと違う。


「あなた様は? 」


「あはっ! 決まってるよ、赤が交われると言えば、僕しかいない。だろ? 」


そう言って、一緒に移動してきた青の巫子の腕輪を見せた。


「僕は青の火の巫子マリナ・ルー。先代から名を継いだ青の巫子だよ。

ゴウカ、よろしくね」


「えっ?! えええええええええ?? どっ、どういう事でございますか?

赤様は? 一体どちらへ? 」


思わずマリナを落としそうになる。

イネスとイルファ達も、驚いて思わず駆け寄ろうとした。


「な! なんですって? あたしの空間で、何勝手なことやってんのよ!

え?! でも、この狭間の空間に影響は無い。もう! どういうこと?? 」


「マリナ? 何だそれ、女に変わったってことか? 」


「質問は後で受けるよ、地と水の巫子。おや? 地の君は…… うふふ、そうか。

君の大事なリリには、彼の仕事があるのさ。だからね、くふふ…… 」


「なっ! 何言ってんだこいつ! 」


カアッと顔を真っ赤にするイネスをよそに、マリナはゴウカの服にしがみつき、また向かってくる球体を見た。


「あとで話しはしよう。今はアレをどうするか迷っているのだろう?

そちらの女性は水の巫子だね?

僕は青の火の巫子マリナ・ルー、故あってリリスと身体を入れ替わった。

なるほど、ここは君が作った閉鎖空間か、かなり安定している。素晴らしい」


「す、素晴らしいなんて、当たり前の事よ! でもうれしいわ、ありがと」


「ここは衝撃にどのくらい耐えられる? 」


「衝撃ですって? 水は波紋で伝わるわ。

でも、だからこそ衝撃は外に逃がすことが出来る。

この狭間は急ごしらえと言っても私が作った物よ。私が安定させるわ」


「よし、まかせた! 」 マリナがニッコリ微笑んでうなずく。


やだ、可愛い…………


イルファがポッと前垂れの中の顔が赤くなった。

マリナが、次にイネスを向いて声を上げる。


「地の巫子、君の手には大きな剣が見える。

だが、まだその剣は不安定だ。そうであろう?」


ハッとイネスが自分の手を後ろにかくし、唇を噛んでマリナを見る。

痛いところをはっきり言われ、少し驚いた。


「だからと言って、お前に何が出来る! 初対面で、偉そうに言うな! 」


思わず毒突くイネスに、マリナが首を振る。


「確かに、僕には何も出来ない。

それは、指輪を手に入れた私の赤、リリスでないと安定させられない。

でも、今はその不完全な剣でも十分だ。

僕が合図したらあれを切れ! 」


「何だ! その私の赤ってのはっ!! いちいち腹立つな、お前!! 自分でやれ! 」


「だって、リリは私の赤なんだもの。それは変えようのない事実だ。

それに、僕には攻撃の手は何も無いんだ。

何しろ普段は、役立たずのただの入れ物なのでね。

攻撃は戦える巫子にまかせるよ。


では、仕事だ。ゴウカ、僕を降ろしたら補佐よろしくね。

リリの身体は軽いけど、僕は体術はからっきしなんだ。いいマトになっちゃうから」


「承知致しました」


ゴウカの手から降りるマリナに、イネスがはあ? と首を傾げた。

彼は今来たばかりで何も情報を知らない。

いきなりすぎる。


「お前、だいたい何が問題なのかわかっているのか? わかって言ってるのか? 」


マリナがニイッと笑う。


「もちろんだよ。

私に言葉はいらぬ。私はすべてを見通し、そしてその内を見抜く。

汝の心も、そしてあのトゲトゲの中の物も」


「ぐっ!! 」


イネスが、思わず胸を押さえて横を向く。

心の中を見透かされるなんて、冗談じゃ無い。恥ずかしいなんて感情、初めてだ。


「そこの半分魚の人間よ! お前はあの中の者を大切に思っているな?

良いか、あのトゲの悪意の残渣(ざんさ)と共に、()ぜて消えぬよう呼びかけるのだ!

声はてるまで呼び続けよ! お前の大切に思う気持ちでこの世に引き留めよ!

アレは半分同化してしまっている。

お前の気持ちが、中の人間が帰ってくるかどうかを決めるのだ。

良いな? 」


半分魚の姿のセリアスが、自分に出来ることがあると聞いてホッとする。

彼は力強く手に拳を作り、大きくうなずいた。


「わかりました! その為にここにいるのです。力の限り呼び続けます! 」


「よしっ! すべてはこの一瞬で決まる!

皆々のもの、心せよ!! 」


イネスが、バッと振り向く。

この一瞬で、何か手があるとは、答えを出せるとは思えない。

自分たちは何も情報を語っていないのだ。


「待て! 貴様に手があるとでも言うのか?! 」


「クフッ! 僕はこのためにここに来たんだよ?

私の赤も命がけで戦っている。ならば、私も力を見せずしてなんとする」


その表情の厳しさに、イネスがハッとする。


「失敗したら殴るぞ」


「なに、僕が失敗した時のために神官はいるのだ。心配無用」


ゴウカがスッと頭を下げる。


「あらためて言おう。皆々、心せよ。


いざ、参る」


ゴロゴロ転がる球体に向け、皆が気持ちを集中する。

手を合わせて大きく深呼吸すると、マリナがその両手を球体に向けた。

お久しぶりです、さて、お待たせしました青の巫子マリナ・ルー編です。

彼はすでに黄泉で数百年の修行を終え、そして青の巫子の腕輪も手にしています。

肉体的には最弱ですが、精神的には最強巫子です。

元のメイスの暗さ、弱さなど、微塵も感じさせない強さを彼は手に入れています。

彼はいわゆるゲームチェンジャー。ご期待下さい。


書きためた分を集中連載、そしてまた休止になります。

よろしくお付き合い下さい。


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