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赤い髪のリリス 戦いの風〜世継ぎの王子なのに赤い髪のせいで捨てられたけど、 魔導師になって仲間増やして巫子になって火の神殿再興します〜  作者: LLX
26、水の国の悪霊憑き

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水の巫子イルファ

少女の怒鳴り声が清明に水盤から響き渡り、皆が思わずのぞき込む。


「え?どなたでしょうか?うぷっ!」


イネスがリリスの口を塞いで、水盤をチラリと見る。

水盤の水鏡に、慌てて傍らの布をバタバタと頭からかぶる少女の姿が映っていた。


『 ちょっとあなた!イネスじゃなくって?!あの性格わっる〜い地の巫子ね?!

くっ、何よ、よく私の前に顔を出したわね。

巫子はね!顔じゃ無いのよ!顔じゃ!


そっちの子はなに?』


薄物の上着をかぶって袖をアゴの下で縛り、チラリと控えめにリリスを向く。

そして水盤いっぱいに顔をのぞかせ、じいっとマジマジリリスを見つめる。

大きくため息をつくと、偉そうに腕を組んで反っくり返った。


『はぁ〜あ、へー、へー、美少年は美少年のお友達なんだー。

あーーーー嫌な奴!ほんと嫌な奴!』


いきなり怒りだす変わった女の子に、イネスが顔を背けてため息付いた。


「あー相変わらずひねた奴、顔じゃ無いって言うなら顔隠す必要ないだろう?

リリ、この自分の顔が大嫌いな女が水の巫子イルファだ。


イルファ、この、もう一人の、びっ!しょうねんがっ!火の巫子のリリだ。

なんでだろうなー、やっぱ巫子は顔だなー。」


『な、な、なんですってえええ!!

どうせあたしなんか、あたしなんか、普通の平凡ボンな顔よ!』


イルファが、わなわなと手を震わせる。

突然手を水に突っ込み、バシャバシャかき混ぜた。

それでも水鏡が途切れないのは、さすが水の巫子だからだろう。


プイと離れて揺れる水の中、小さくなった彼女の横顔に、リリスが嬉しそうにイネスの手から離れて一礼した。


「あの…あの…、私はまだ巫子では無いのです。

水の巫子様、お会いできて嬉しゅうございます。

私は、リリス、リリス・ランディールと申します。

今、とても困っていたので、水月の剣様に繋いで頂いたのです。

お許しも得ずに、大変失礼を致しました。」


静かに頭を下げるリリスに、イルファが顔を向ける。

また水鏡の前に座って、小さく首を振った。


『 いいわ、許します。

水鏡において、水月の剣は優先される。

さあおっしゃい、なにに困っているの?新顔の巫子さん。』


「ありがとうございます。

実は、魔導師の塔の方に連絡を入れたいのです。

今、……」


『 しっ!水の中で私の手を握りなさい。心話の方が早いわ。』


そう言って、彼女が水に手を入れ、リリスがイネスの顔を見る。

イネスがうなずいて、リリスがそっと水盤の水に手を入れた。

水の中で、柔らかい手が触れて、その手が戸惑うリリスの手を握る。


“ 私に心を開きなさい、あなたの記憶を追うの ”


記憶を?


“浅い記憶よ、最近のね。大丈夫、深く探ったりしないわ。

私に伝えたい事を思いなさい、その思いが強いほど伝わるから”


リリスがうなずいて目を閉じ、地下で起きた事から、そして追ってきた兵のこと、水の精が保護している少年の事を順を追って考える。


これで伝わるのかな?

ちょっと色々と雑念が交じってしまった。

最近色々ありすぎて、頭が混乱する。


首を少し傾げ、目を開いて水鏡を見る。

水鏡のイルファが、小さくうなずいた。


『わかったわ、塔にいるシャラナには私から連絡入れてあげる。

精霊の国のお話し、ちょっと厄介だわ。この件は私も力になりましょう』


「えっ!!引きこもりのお前が出てくるって?!」


イネスの驚愕に、イルファが憤慨してイネスを指さす。

その指がブルブル震えて、水がゆらゆら揺れた。


『 お前って誰よ!あなたも来なさい白頭!一度その口かきむしってやるわ!じゃ、ね!』


「あ、あ、はい、ありがとうござ……」


リリスがお礼を言う間もなく、水鏡が消えた。

呆然とイネスを見ると、イネスがひょいと肩を上げリリスの肩をパンと叩く。


「水のも来てくれるそうだぞ、良かったな、リリ。」


えーと、そんな爽やかに言われても、何か凄いものを見た気がする。

え?水の巫子様って、神殿の奥に秘密に覆われた、凄く神秘的なものを思っていたのだけれど、なんか普通の女の子だったし。


いきなり始まった巫子同士の喧嘩に、夢の壊れた感じのリリスはなんだか呆然とするしかなかった。




と………


そんなやりとりがあり、イルファは早速シャラナに連絡を入れてくれた。


「イルファって、あの引きこもり巫子が??」


ニードが思わず落とした杖を拾いながら問う。

水の巫子は引きこもりで有名だ。

顔さえまともに見た人は、神殿に行ってもほんの一握りしかいない。

神事にも民衆の前には神職しか姿を現さず、表に出る時は顔には分厚いベールをかぶせて側近に手を引かれて出てくる。

わかるのは、若い女って事くらいだ。


「失礼ね、巫子は簡単に人前に出ないものよ。

だいたいおたくの地の巫子って何よ、なんで4人もいる訳?」


カチンときたシャラナが言い返す。

だが、その言葉は地の人間には禁句だ。


「えー、その件に関しては、回答不可で。1人は地龍だったし。」


「で?それで、巫子直々にどんなご依頼なんだ?」


興奮したシャラナに、ルークが冷ましたハーブ茶を差し出す。

それをグッと飲み干して、ほうっといつもの冷静なシャラナに戻った。


「お茶、ありがと、落ち着いたわ。

巫子殿が聞いた話だと、いわく付きの人間が一人、あとその子の知り合いが一人精霊の国に行ったらしいのよ。

二人を水の精霊が預かっているから、道を作ってくれって。

それがどうも、一人は……ほら、先日首になったって言う、王子の小姓だったらしいの。」


「ああ……あのうわさの。なんで精霊の国なんか……

で、いわく付きって?」


「どうも、なにかが憑いているらしいわ。

精霊の国は人間界と別次元よ。恐らくあの王子が関連しているとしたら、王子の監視からは逃れているんじゃ無いかしら。」


ルークが大きくうなずいた。

これは当事者から、はっきりした事が聞けるかもしれない。

やもすれば、証言者にもなり得る。

火の巫子を襲った、彼らが連れ帰ったらしい兵からも証言は聞けたのかも興味がある。


「よし、わかった。城下へ下る許可を出す。

彼らからも話を聞きたい、急いで準備しよう。よかった、これで堂々と繋ぎが付ける。

何しろ向こうに地の巫子がいるってのは心強い。」


「地の、第1巫子かしら、第2巫子かしら?どっちも凄くきれいな子よね。近くで見られるなんて、光栄だわ。」


ウキウキするシャラナの横で、ルークが急に忙しそうにバタバタし始める。

それを横目に、ニードがのんびりシャラナに囁いた。


「なー、美少年だからって、うちの巫子に手、出すなよ?」


「あら、魔導師に色欲は邪魔なだけだわ。でも、目の保養は必要よ?」


プッとニードが吹き出して彼女に親指を立てる。

今度はシャラナがプッと吹き出して、触媒について相談し始めた。

水のあるところ、どこでも姿を現すシールーンにも巫子はいます。

シールーンはほとんど神殿にはいないのですが、イルファはやはり彼女の巫子です。

水のあるところはどこでも見通せるので、水鏡で外の世界を眺めるのは彼女の趣味です。


リリスと同年代のイルファは、今絶賛反抗期。

ちょっとした事に妙に腹が立って、気にかかるとどうにも嫌い。

彼女は自分の容姿に凄まじくコンプレックスを抱えているので、いつも顔を隠しています。

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