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赤い髪のリリス 戦いの風〜世継ぎの王子なのに赤い髪のせいで捨てられたけど、 魔導師になって仲間増やして巫子になって火の神殿再興します〜  作者: LLX
26、水の国の悪霊憑き

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城の中と外

フェイクが王子を部屋から追い出した時、魔導師の塔、自室にいたルークが顔を上げた。

苦々しい顔で、ドンッと杖を突く。


この気配は、精霊だ。

何かが動いた。

そしてその、原因があの悪霊である事だけは推測できる。

一体何をしているのか、探りを頼んだ黒猫のアイはリリスたちの一件から姿を見なくなってしまった。

どうせ謹慎中のレスラカーンのところにでも入り浸っているのだろう。


テーブルの向こうでニードが大きくため息をつく。

杖の先の水晶を磨きながら、ぼやくように呟いた。


「あー?何だろうな、今の感覚。魔導とは違うと思わないかい?」


「悪霊の呪いは魔導師の領域とは外れるからな。

それでもまあ、我らがこうして感じるほどに…… 」


「好き放題やってますねえ………俺達の事、忘れてるんじゃ無いの?」


「忘れていると言うより、どうせ何も出来ないと思っているのだろうさ。

実際何も出来てない。」


「塔の結界を出るとすぐに張り付いてくる。

その昔の王子って奴は、今の王子に取り憑いてるけど妙に力が拡散してると思わないかい?」


ニードの言う事には一理ある。

まるで、九頭のヘビのようだ。

悪霊という者が、これほど四方に力を分散できるのだろうか。

呪いという術がどこまで遠方に届くのか、相手は300年近く熟成した悪霊だ。

かなりの力が満ちている。


眉間にしわ寄せ、椅子にドカッと座ると、ニードが急に身を乗り出してきた。


「俺が考えるにだ。今、奴の情報が分散していると思わないかい?」


「つまり?」


「そうだな、はっきり言うと、あの赤い髪の少年と、手を組もうって言ってるのだよ、魔導師の長殿おさどの。」


「それは…………大胆だな。」


「悪霊が、えっ、そこまでやる?!って思うくらいの事しなきゃ、出し抜けないんじゃないかって事さ。

ただ、この作戦には一つ大きな問題がある。」


「どうやって城の外に出るかって事だな。

もしくは彼らを呼び出すかだ。

だが、彼はまだ巫子として認められていない。

しかも、指輪もない魔導師で、魔導師としても中途半端だ。

魔導師の塔が呼び出すには、名目として弱い。」


「君らしくないな。名目なんてどうでもいいだろ?

今回の地下侵入事件の容疑者でもいいんじゃないかね?」


「冗談じゃない……巫子を泥棒の容疑者になんて………」


他の神官は激怒するだろう。

それに、あの悪霊に神官を合わせるのは危険だ。恐らく敵討ちに走ってしまう。

まだ、そんな時期じゃない。


ふともらした言葉に、ニードがニイッと笑う。


「やっぱ本物なんだ〜」


何が本物なのか、恐らく自分が神官だったって事だろう。


「なあなあ、どーやって260?270年?くらい過ごしたんだ?まさか、時代を飛び越えて来たってんじゃないだろ?

昼寝してたら300年近く経っちまったって?え?どんな魔導術?

なあなあ、教えてくれよ長殿〜」


椅子をゴットンゴットン鳴らして、目を星みたいにキラキラさせて聞いてくる。

ほんとに、俺たちがどんな気持ちで眠りについたかなんて、


まっっったく、わかってない! だろ!!


「知らん。

で、さっきの話だ。

まあ、しかし、見たところ向こうを呼び出すより、こっちから接触した方が早い。

我らの触媒を託すには、信用できる適任がいらっしゃる。」


「ちぇっ、ケチ。

あー、なるほど、騎士長……だっけ?赤い髪の親父さん?ほんとの親じゃないんだろ?」


「養子だ。だが、絆は強い。何より、魔物も裸足で逃げ出すような最強だ。」


「ハハハ、どんな豪腕でも、魔物に憑かれたらへなちょこさ。

巫子でもなければ魔物には、どんな騎士も敵わないと思うね。」


「彼は風の精霊女王の夫君だ、女王が許さぬよ。」


「ふうん……風の精霊王にそんな力あるかね?巫子もいないのに。」


「さあ……なあ……」


「なんかはっきりしない返事だねえ…」


思わせぶりな返事に、ニードが何か言いたげな素振りを見せる。

キュッキュッと袖でふきながら、水晶玉の曇りに眉を寄せた。


「色々あるのさ。

しかし、それでもやはり、我々と接触するのは危険を伴うかもしれない。

堂々と騎士長の部屋を訪れるのは気が引けるな。」


「目をつけられている以上は、コソコソ動くしか無いか。

騎士長自身も監視されてるし……先日部分結界頼まれたけど、効きが悪いって苦情受けたし。」


どうも敵の手の中で動くのは、分が悪い。

その時、ドアの外でバタバタ階段を駆け上がり、廊下を慌てたように足音が近づいた。


バタバタバタバタッ!


ドンドンドンドンドン!!


「うわーうるせえ〜、女はおしとやかにって知らないのかね。」


ニードが杖を向けると、ドアがひとりでに開く。

開くと同時に、シャラナが飛び込んできた。


「ニード!!長殿!!巫子殿からご依頼が来たわ!」


「え?それって地の巫子?」


「ちっがうわよ!私が巫子殿って言ったら、水の巫子イルファ様に決まってるじゃない!

地の巫子と火の巫子からのご依頼よ、あたし城下に行ってくるわ。

長、許可願います!」


シャラナが一気に喋って、フーと息を吐く。

ルークが、愕然と立ち上がった。


「まっまさか!!向こうから来たか。しかも堂々と!」


「やっだ、なんて大胆なのかしら!!」


ニードが女言葉で、思わず杖を落とした。

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