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赤い髪のリリス 戦いの風〜世継ぎの王子なのに赤い髪のせいで捨てられたけど、 魔導師になって仲間増やして巫子になって火の神殿再興します〜  作者: LLX
25、青の巫子の目覚め

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お帰りなさい

すねるイネスの隣で、リリスがお茶を一口飲む。

リリスにとって、彼がいてくれることだけで心強いのに、彼にとってはそれだけでは不満なのだろう。


「ずっとお会いしたかったのに、癒やしの術の効果なんて、些細なことではありませんか。

イネス様の癒やしはとても心が落ち着きます。」


そう思うのだが、イネスにとってはリリスが遠くなったようで辛い。

それは彼にとって大きな問題で、ヴァシュラムの言った「魂の双子」という言葉が、一人じゃ無いような気がしてずっと嬉しくもあったのだ。


「もう!どうせ俺なんか!地の巫子だし!全然違う巫子だし!

どうせお前の半身にはなれないんだ!」


じたじた地団駄ふんで、椅子にコロンと横になる。

クスンと鼻をすすって、涙がつうっと横に流れた。


「チチチ、いじけちゃった!」


リリスがペロリと舌を出して、指をさしだしヨーコ鳥を停める。

頭をそっと撫でながら、彼女に語りかけた。


「フフフ、リリスの兄様は本当に頼りになるので、たまには泣き虫でも良いのです。

巫子としての半身は青の巫子ですが、私の大切な兄様はこの世でただお一人なのですから。」


ガバッとイネスが飛び起きた。

うるうるした目でリリスを見て、ぎゅうっと彼を抱きしめる。


「リリ〜、お前はぁ〜、ほんと、もう!くそう!くそう!

なんてずるい奴なんだ。もう!俺はお前の兄だから泣かないぞ!くそう!」


ギュッと抱きしめられて、大きく息をついて抱き返す。

イネスはいつもいい香りがする。

それがどこか懐かしいような気持ちがするのは、代々地の神殿とはもっとも親しく、持ちつ持たれつの関係だった火の神殿の巫子たちの記憶のせいだろうか。


やっと、イネスを兄と呼べたことにホッとする。

自分はもう、下働きの使用人ではない。

自分はもう……


「巫子殿!ビックリする奴がきたぞ!!」


薪割りしていたブルースが、斧を持ったまま息を切らして部屋に飛び込んできた。

嬉しそうに斧を振り上げるその姿があまりにも物騒で、二人が思わず抱き合ったまま立ち上がった。

すかさずサファイアが二人の前に出る。


「あっ!すまん、慌てたもので斧まで持ってきてしまった。」


ブルースが慌てて斧を部屋の端っこに立てかけて置いた。


「相変わらずおっちょこちょいですねえ、ブルース殿は。

巫子様、お久しゅうございます。私のこと、覚えておいででしょうか?」


ミランがそう言って、二人に向かって頭を下げた。


きょとんとするイネスから離れ、リリスが小さく悲鳴のような声を上げて彼に駆け寄る。

そして、彼の手をギュッと握り、声も出ない様子で彼に抱きついた。


「うう……これは、これは夢でしょうか?」


涙が、次々とこぼれる。

本城でリリスはさらわれた後、ミランがケガをして城に残ったことを聞いて、自分のためにケガをしてしまったことを、心の底でひどく悔いていた。

もしや、何か障害が残るのではないか、騎士をそれで廃業してしまった人を知っているだけに、それが心配で、心配で、彼の運命まで変えてしまったのではと、ずっと心配だった。


「ご立派になられましたね。」


ミランが彼の足下に膝を付き、胸に手を当て頭を下げる。


「巫子様、このミラン、長く離れていたことをお詫び申し上げます。

ケガは城の医師と魔導師殿のおかげですっかり治りました。

運良く私は元のように腕も動きますし、身体も以前と変わりません。

またおそばで守りにつくことをお許しください。」


リリスが離れて涙をふき、頭を上げた彼の顔を見る。


「また、ケガをするかもしれません。」


「承知の上でございます。」


「私は、危険なことにも首を突っ込むたちです。」


「存じております。何なりと、お申し付けください。

私はいつでもあなたの盾となり、剣となりましょう。

ですが、あなたはもう巫子です、代われる者ののいない事を心に留め置き下さい。」


リリスがうふふと笑って涙をふく。

自分に命を預けてくれる。その重さを感じて、一つ大きく深呼吸した。


「騎士様、ミラン・リール様、お帰りなさいませ。どうぞ、こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。」


「ありがたき幸せ。ミラン・リール、ただいま戻りました。」



互いにお辞儀した後、ミランが周りを見回す。


「風様の…お母様のお姿が無いようですが。」


「母様は、シールーン様から何か頼まれたそうで、お出かけになられました。

フレア様を探しに行くと仰ったのですが、私は探さずともいいような気がして……

指輪があると、もっとはっきり存在がわかると思うのですが、まだボンヤリしています。

……うーん、もしかしたら、フレア様ご自身が、ご自分の気配をお隠しになっているのかもしれません。」


「なるほど、皆様動いていらっしゃるのですね。それで、一つお話が。」


早速話を持ち込んだ。

セリアスのことだ。


「リリス様に、…巫子様にお話があるのです。

一人の騎士がたいそう困っているのですが、それがどうも何か引っかかって……」


「なんでしょう?ちょうど地の巫子様もいらしています。

あちらで一緒にうかがいましょう。」


ガタン


「あ、ホム……きゃっ!」


二人がイネスの前に行こうとしたとき、ホムラがいきなりドアから飛び込んでくる。

リリスとミランの間に滑り込むと、リリスを片手に抱いて飛び退き、腰の短剣に手を回した。


「その方、何者か?」


「え?えーと、こちらは……」


ミランが立ち上がろうとすると、身体が動かない。

気がつくと左右に白装束の男が立ち、顔の前垂れの奥からギロリとにらみ付けた。

リリスは生まれてからずっと人の下で働いてきましたが、巫子を意識してからは、どんどん自分の下に付いてくれる人が増えていきます。

それは彼にとって人の命を預かること、人の運命を左右させてしまうことに感じて、ずっとその重さが常に肩に重責となっています。

最初は受け入れがたいと思っていましたが、巫子であることの事実は変わらずその運命を受け入れる決心がようやく固まってきたようです。

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