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赤い髪のリリス 戦いの風〜世継ぎの王子なのに赤い髪のせいで捨てられたけど、 魔導師になって仲間増やして巫子になって火の神殿再興します〜  作者: LLX
25、青の巫子の目覚め

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ミランとの再会


コーン……


ブルースが、セフィーリアの館の庭で、薪割りをして額の汗を拭う。

人間が増えただけ、湯を沸かす頻度が増えてまきの数がどんどん減って行く。

薪を慌てて注文して届けてもらったものの、届いた途端にリリスがヨシと袖をまくった。


薪割りはザレルの仕事だったので、ここは自分がと病み上がりのリリスが斧を持って、おもむろに割り始める。

何をするのかと遠目に見ていた騎士や神官たちが、驚いて駆け寄ると斧を取り上げた。


「え、だって割らないと燃えにくいですし。」


「そう言う問題ではない、どうして貴方は頼み方を知らんのか?!」


「はあ、でも、割らないとですね…」


「男手は余るほどある。何故割れと一言くださらない?」


「大丈夫です!これは私の仕事ですし!」


大丈夫じゃない、薪割りする巫子様なんて聞いたことが無い。


どんなに座っていて下さいと言っても、気がつけば廊下を掃除しているし、目を離せば水汲みを始める。

見ている彼らが焦るほどに、人に頼むという選択肢がない。


そのたびに神官たちがガンガン吠えまくり、はいはいとリリスが椅子に座る。

しかし、次の瞬間目を離せばもういない。

なんでも自分でやったが早いと言う、フットワークの良さが巫子様らしくない。


人に頼むことを知らない困った巫子だ。

笑い転げるイネスを横目に、まあ、彼は薪割りだけは下手くそなので非常に助かる。

騎士二人が交代で薪を割り、割った薪を束ねて置き場に運ぶ。


「まったく、なんでも自分でやっちまう困った巫子さんだな。え?ガーラントよ。」


「ああ、そろそろ交代しよう。疲れただろう。」


「は?え?!俺がなんで?誰が疲れたって?」


眉をひそめて大げさに声を上げるブルースに、ガーラントが先ほど割った薪を合わせてみせる。

真っ二つではあるが、かなり中心を外れて大小はなはだしい。


「見ろ、木の中心からどんどん外れている。今の貴様は巫子殿といい勝負だ。」


「うぬううう、これはわざとだ!疲れてなどおらぬ!」


「こんな下手くそな薪を残しては騎士の名折れ、騎士長に恥ずかしくて顔向け出来ん。」


「なにいっ!」



「ぷうっ、くくくく、相変わらずですねえ、二人とも。」



背後で笑う声がして、小道から庭へミュー馬を引いて青年が入ってきた。


「お久しゅうございます。やっと合流できました。」


ブルースが、その姿に呆然と立ち尽くす。

斧をその場に落とし、知らず彼の元へと歩み始める。

そして駆け出すと、ニコニコ朗らかに笑う青年に大きく手を広げ、ギュッと抱きしめた。


「良かった、良かった、良かった………」


何度も背を叩いて、両肩を握り、身体を離してまた、体中バンバン叩く。


自分のせいでケガを負った青年のことが、一時たりとも頭を離れなかった。

自分のせいで剣を置くことになってしまったら、自分のせいで、そう自分を責めて、懸命に彼の分まで頑張ってきたけれど………ああ………


ボロボロ涙が流れて青年の顔がぼやけてよく見えない。

青年が、ぺこりと一つお辞儀した。


「ブルース殿、私がいない間、私の分まで頑張って頂いてありがとうございました。」


「ミラン………すまない、すまなかった。本当に、本当に、良かった……」


「ふふふ、ご心配おかけしました。

ほら、この通り、また万全の状態で働けます!

ガーラント殿、長らく留守にして申し訳ありませんでした。」


ブルースが流れる涙をふいて、一緒にガーラントのところへ向かう。

ガーラントと話す青年の横顔に、体中のつっかえが一つボロボロと剥がれ落ちて行くのを感じ、ああと息をついた。

落とした斧を拾ってふと気がつく。

そして、そうだ!と叫び、拳を上げた。


「巫子殿に知らせてくる!きっとビックリするぞ!」


「え?あっ、ブルース殿!斧、斧持ったまま!」


その声も聞こえないようで、ブルースはうれしさのあまり母屋へと駆けだした。




リリスから、青の巫子が現世に生まれたことを聞いて、火の神官たちは息を呑んで顔を見合わせた。


「お守りに参じねば」


「しかし、誰が行く?我ら3人で二手に分かれるのは……」


「火打ち石が認めたエリン殿がいる、誰が残るが最良か…」


うなずき合い、直後3人でしばらく話し合いを始め、リリスは意外とビックリしないんだなあと、ちょっと肩すかしを食らったような気がする。

長椅子にイネスがいたのでお茶を持っていくと、彼はもそもそ果物かじりながら、頬杖ついて腐っていた。


「火の巫子には二人いるって、ほんとなんだな。」


彼の不機嫌な訳はすぐわかる。

何故か、自分の施した癒やしの術が、今のリリスには半分も効かなかったのだ。

ところが、マリナと会ったと言ったリリスは、その一瞬で元気になってしまった。

ショックだ。こんなにショックなことはない。


「チチチ……ピピピピ!!イネスは焼いてるのよねー」


「焼いてるって、どういう事ですか?」


不思議そうなリリスに、イネスの頭に座ったまま小鳥のヨーコが笑う。

彼女はリリスがレナントから旅立ったあと、ずっとイネスについている。

それがここへ来て再会を喜んだ後も変わらないので、イネスが煩わしそうに左右に首を振ってヨーコ鳥にぼやいた。


「なんでもない!リリは知らなくていいんだ。

だいたいお前は何でリリに行かないんだ? あんなにリリ、リリって言ってたじゃないか。」


「ピピッ、だって、リリスに会うの久しぶりじゃない?あのきれいな顔見ていたいのよ。

それに、あの怖そうなおじさんたちが、巫子を足蹴にするなって怒るの。」


「俺だって巫子だ、お前はだいたい何で俺の頭ばかりに止まるんだ。」


「ピピピピ!」


バタバタ、羽根をばたつかせて明るく鳴いた。


まあ、どうでもいいや。


諦め気味のイネスは、何故かリリスを見ようとしない。

視線を避けるのがあからさまで、リリスがあれあれ?っと、彼の顔の前に顔を出す。


「どうしたんです?何故見てくださらないんです?リリスは寂しいです。」


イネスが右を向くと右に来て、左を向くと左に座る。

その様が可愛くて、リリスもクスクス笑いながら、自分もようやくお茶を飲んで一息ついた。

15章の「火の鳥」以来の再会です。

彼は魔導師に操られたブルースに切られ、重傷を負って一時的に舞台から去っていました。

この世界、ろくに薬が無い代わりに、魔導師の癒やしがあります。

城で療養できたのは、この世界では最良の医療が受けられたという事です。

どんどん登場人物が増えてきます。大変ですw

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