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赤い髪のリリス 戦いの風〜世継ぎの王子なのに赤い髪のせいで捨てられたけど、 魔導師になって仲間増やして巫子になって火の神殿再興します〜  作者: LLX
24、黒い悪霊からの逃亡

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巫子の資質

グルクがびょうびょうと風を切る。

真っ暗な中で、星を頼りにサファイアが急がせる。


キキーーーーーィーーー


グルクが、今日は休み無しで疲れたのか一声鳴いた。


「ミランダ、頑張れ!もうちょっとだ!明日からいっぱい休ませてやるから!

城はまだか?」


「もうすぐです。もうすぐ城に……」


「待て!」


急に、イネスが静かになる。

ジッと、何かに集中しているようで、身動きせず返答を待つ。

すでに、昼間なら城が見える距離だ。

だが、イネスはスッと、城とは違う方向を示した。


「向こうだ、リリの……リリは、向こうから呼んでる。」


「あちらは、セフィーリア様の館ですね。」


「うん……なんだろう、リリの感じが…こう、なんて言うか。

ずいぶん前に、水の巫女と会った時の、あんな感じだ。


ああ……


ああ、リリは……本当に巫子だったんだなあ……そっか……」


イネスは、恐らく彼が同じ巫子だからこそ居場所がわかるのだ。

兄巫子セレスの言葉が間違ったことは無い。

自分は、ずっと彼を助ける兄のつもりでいるのに、彼も巫子なのか。

ちょっと残念な…複雑な気がする。

あいつが一番不安で、一番そばにいなくてはならない時も、そばについていてやれなかった。


「俺は、何してるんだろう…」


リリスの、ニッコリ笑って、大丈夫ですという顔ばかりが浮かぶ。


リリはちっとも頼ってくれない。

もっと、助けて欲しいと言って欲しい。

あいつはしっかりしてて、しっかりしすぎてて……時々無茶をする。


「この胸騒ぎは、……また、リリになんかあったのかもしれない。

あいつは自分の命をかえりみない。


リリの元に急がねば、サファイア。」


「はっ、承知しました。」


城の方向だという方の、なんと異様な雰囲気。

魔導師たちは何をしているのか。

何があったのか、報告も受けたい。受けなければならない。


「なんだろうな、城から感じるこの気持ち悪さは。

城から何か、とても悪い気を感じる。

ヴァシュラム様はどこに行かれたのか、兄様もどこに行ってしまわれたんだろう。

生きてることはわかるのに、どこにいるのかわからない。

こんな事、初めてでとても不安だ。」


暗闇が苦手の彼が、それを押してリリスの元へと向かう。

彼が巫子なら、本来はまずは城に上がるのが常套じょうとうだろう。

だが、今はそんな礼儀など、どうでもいいと思う。


「地の巫子である自分は、何をすればいいのか……

兄様がいないと、俺は何も出来ない。どうすればいいのかわからない。

巫子は、人々に道を指し示さないと行けないのに。

それをしていた兄様は…なんて凄いんだろう……」


いつもいつも毅然と前を向いて、頼ってくる人々に道を指し示す。

その姿を小さい頃からずっと見てきた。

兄様は、自分とは格が違うと思う。

本当の巫子はあんな、いつも光り輝いているものだと思う。

自分は巫子だと言うけれど、金色の兄と違って自分はいぶされた鉛のようだ。


「俺は、巫子としての資質がないのかもしれない……」


珍しく、イネスが弱気でぼやく。

サファイアは、背中に彼の体温を感じながら、フフッと笑った。


「イネス様らしくも無い。

あなたはこうして行動しているではありませんか。

苦手な暗闇の中、こうして羽ばたいているではありませんか。

空をご覧下さい。満天の星が、月が、ほら、雲を打ち消してあなたを見ていますよ。」


言われて空を仰ぎ見る。

瞬く星の距離感がつかめず、吸い込まれそうでいつも何故か怖いと思う。

それでも、リリと二人で見る星空は、本当にきれいだと思えた。


一人で行動することが怖い。

誰も頼れない辛さなんて、感じたことはなかった。

兄様も、リリスも、それにずっと耐えてきたんだと思うと、自分はまだ修行が足りない。


「あなた様は、まだ歩き始めたばかりではありませんか。

これからなのです、それが、若さというものですよ。」


サファイアが知ったようなことを言う。


「そんなこと言ったって!リリは俺より若いじゃないか!もう!もう!俺って、もう!」


なんだかムウッとして、抱きついたまま左右にグイグイ引っ張った。


「ちょ、イネス様、お静かに、あ、あ、ミランダ頑張れ!」


「わああ!!落ちるうう!!」


背中で暴れる主人に首を振り、一気に高度を落としてグルクがキイーっと声を上げた。

セレスは名を変え年を変えずっと巫子業をしてきたので、巫子という仕事が板に付いています。

彼は本当の巫子ではないのですが、常にヴァシュラムが第一巫子の座に置くので、第二巫子に据えられるしかない本当の巫子たちは巫子として未熟でなかなか本来の巫子として成熟してくれません。

自分がいることで起きる弊害を、セレスが一番知っていて一番憂いています。

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