表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤い髪のリリス 戦いの風〜世継ぎの王子なのに赤い髪のせいで捨てられたけど、 魔導師になって仲間増やして巫子になって火の神殿再興します〜  作者: LLX
24、黒い悪霊からの逃亡

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

262/581

黒いもやを吐く3人の男

リリスたち一行は森の中を、兵に警戒しながら急ぎ足で進む。

騎士2人は剣の封印を解き、いつでも抜けるように周囲を見計らった。


森の入り口に、小さく灯りが見える。

恐らくそれは、パドルーの馬車だろう。



ザザザザザザ!

ザザッザザザッ!


無言で来る追っ手に気がつき、神官たちに緊張が走った。

周囲が何か、重い空気で満たされる。


「これは?!悪霊の気配が!馬鹿な、私の封印は完全なはず!」


ゴウカが信じられないと思わず声を上げる。


「致し方ない、あれは通路を塞いだだけだ。グレン!」


ホムラが声を上げると、グレンがうなずき走ってくる3人の兵に向かう。

長い爪の手を前に差し出すと、指を動かし爪をカラカラ言わせ始めた。


「オム、オム、オム、狂え、狂え、時よ狂え。狭間よ来たれ、仇成すものを、封じよここに


縛!」


指を奇妙に重ね、パチンと、爪を弾く。

向かってくる男たちの前の空間がぐにゃりと歪み、彼らの姿がかすんで消える。

だが、次の瞬間、彼らはその歪みを物ともせず、一歩踏み出した。

暗い顔には表情は無く、口からは黒いもやが吐き出される。

ミスリルたちの目には、顔に血で書かれた呪いの文様が浮き出て見えた。



「術が!効かない!」


グレンが、驚愕してとっさに腰から竹筒を取る。

ハッとホムラが顔を上げ、思わず叫んだ。


「ならぬ!グレン!毒を使うは早い!!」


「しかし!この汚れた輩を止めるには!…くっ!」


グレンが、大きく首を振って竹筒を腰に直し、そして短剣を取った。

ホムラが、キッと騎士たちを見る。


「騎士殿、グレンに加勢を頼む!我は先に巫子を馬車に!すぐ戻る!!」


「おう!頼むぞ!俺達も行く!」 「まかせよ!」


「待って!私も戦いま………きゃあっ!」


ホムラはリリスを抱えたまま、その身を変化させて一瞬で大きな翼のある獣へと変貌した。


「ガーラント様!!ブルース様!!グレン様ーーー!!」


獣は翼をリリスに巻き付け、落とさないよう固定して走り去り、みるみる声は小さく消える。


「なんて便利な奴だろう、なあガーラント!」


「一緒に戦いますなど、まったく不要!」


「おう!」


男三人が、人の早さと思えぬスピードで、こちらへやってくる。

ガーラントとブルースは剣を抜き、男たちへと向かっていった。





「 マズい 」


「は?何か?」


「マズいぞ!やっぱり胸騒ぎが当たった!森で寝なくて良かった!」


空の上、グルクに乗った少年が後ろからボカボカと騎手を殴ると、騎手のミスリルが大きくため息をついた。


「いかがなさいますか?どうなさったので?」


「近くに行けば、もっとわかる!城だ!城に行け!あの辺の森から、リリの声が聞こえた!」


バッと、感じた方向を白い手が指さす。

その拍子にサイズの合ってないコートのフードが後ろに倒れて白い髪が風に舞い上がり、寒さで真っ赤になった鼻の少年の赤い瞳が生き生きと輝いた。


「俺は!俺は!リリのことなら何でもわかるんだ!

いいか!リリの兄なんだぞ!俺はーーー!!リリーーのぉーーーーー!!」


異様にハイになった主人にウンザリした様子で、殴られながらミスリルのサファイアがグルクを城の方角へと向かわせる。

夕刻、日も沈んだところで森で野宿の準備をしていたら、いきなり主人が今から飛ぶとわめきだして、急いで出発してきた。

暗闇が大嫌いな主人だけに、背中にしがみつく手がいつもより力が入るので、きっと腰にはアザが出来ている。

それでも、彼はそんなことよりリリスなのだ。


「承知しております、城へ向かいます、承知しましたから殴るのをおやめ下さい。

背中の骨が折れてしまいます。」


そう言うと、主人は手を止めて必死で風に舞うコートのフードを直し始める。

上手く行かないいらだちに、今度は足をバタバタし出した。


「く、く、くそ、このガルシアのコートの馬鹿でかさは一体何だ。

あいつは何でこんなコートをデカく作るんだ!」


「それは身体を大きく見せる為ですよ。国境くにざかいの御領主は大変ですね。」


「なんでもいいから早く行け!あああ!!!寒い〜〜〜〜!!

リリ、待ってろおおおぉぉぉ!!」


鼻水をすすりながら真っ白な顔が、暗闇の中で大きく叫ぶ。

それはガルシアに許しを得て来た地の巫子イネス。

来る途中、森で危機を迎えたリリスの声を聞き駆けつける、もっとも頼りになる助け手だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ