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赤い髪のリリス 戦いの風〜世継ぎの王子なのに赤い髪のせいで捨てられたけど、 魔導師になって仲間増やして巫子になって火の神殿再興します〜  作者: LLX
23、魔導師たちの密かな攻防

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248、灰燼のゴウカ

リリス達が、暗く、どんどん狭くなっていく地龍の中、一本角の犬のあとを付いていく。

松明の火の光も吸収されるのか、火はあるのにどんどん暗くなって行く道に、皆の心が不安で鉛のように感じていた頃、フッと急に辺りが明るく照らされた。


「あれ?出られたんでしょうか?」


「そのようだな、ここは覚えがある。」


リリスが明るく振り返ると、皆が一様にホッとした顔に見える。

守られているのか、捕らわれているのかはっきりしない状況は、奇妙なストレスで心臓に悪い。

気がつくと、あの一本角の犬は消えていた。


「あの犬どこに行ったんでしょうね。」


「さあね……さて、犬よりも。……で、どうするかね?巫子殿。

いきなり放り出されても、どちらが出口かどこにいるのかもさっぱりだな。

……ここは城の下なのか、それとも……?」


ガーラントが腰に手を置き、一息を付く。

辺りを見回すが、地龍の姿などどこにも無い。

動く音さえ聞こえないのは不気味でもある。

あれは本当に地龍だったのかという疑問は後で考えるとして、城の地下にいる状況は変わらないのだ。


「ここがどこであれ、私が指輪を感じるのは…向こうです。

行くにしても、出口の方向は確認しておく必要はありますね。

その手段があればの話ですが……」


リリスはまた目を閉じ、スッと右を指す。

通路の前を見ても後ろを見ても同じような暗闇が続く。

どちらが奥になるのか出口になるのか、とりあえずホムラを見る。

ホムラがゴウカに目配せすると、ゴウカがうなずきリリスの前に来て頭を下げた。


「ゴウカの名は身を滅ぼす火の意だそうです。

この力だからこそその名が付いたと思いますが、リリサレーン様はそうでは無いと仰せでした。


様子を見て参ります……驚かれるな、ごめん。」


リリスにそう語り、床に伏した。

ゴウカの身体が一瞬影が消えて真っ白になり、ぼやけて見える。

そう感じたのは目の錯覚では無い、彼の身体は突然灰のようになり、風も無いのにサッと通路の両方へと散っていった。


灰は瞬く間に通路の隅々まで飛び、扉を見つけるとそのスキマから別の通路へ侵入して一瞬で戻る。

その灰のような粒子一つ一つに意思があるのか、ゴウカ自身にもわからない。

灰のように別れても、彼は一人なのだ。


まるで通路を俯瞰してみるような彼の目が、現在地を確認する。

そうして通路すべてを把握して、一時もたたずまたリリスの元へと戻ってくる。

リリスの前で灰がらせんに巻き上がると、人型になりゴウカの姿を成してリリスに膝をついた。


「お見苦しい物をお見せ致しました……ですが、状況は把握出来ました。

御手で指されたのは通路の奥、現在地はこの通路の入り口から8割ほど来たところでございます。

恐らくは城の中央、やや魔導師の塔があった場所に近いかと思われます。」


ゴウカは一息にそう告げ、目を閉じて動けなかった。


しんと、空気の温度が下がったように感じる。


この力のせいで、子供の頃から親にでさえ疎まれた。

灰の塊で生まれ、身体は灰のまま性別さえも無く、子供の頃は眠っていると部屋中に散らばる。

自分は一体何なのかと悩み苦しみ、それでも生きている証に、なんとか人型を保つことを覚えた。


そして、両親は彼の行く末を案じ、御方様…ガラリアに相談した。

ガラリアは、灰なれば火の神殿に相談しましょうと。

彼はガラリアに連れられて火の神殿へと赴いたのだ。


それが、彼の人生を大きく変えた。

彼を一目見るなり、リリサレーンは言ったのだ。


「まあ!あなたは火種ね、灰の中に煌々と力強い命の明かりが見えるわ」


リリサレーンの言葉は、うつうつとした自分の心を洗い流したようだった。


そうして、彼は火の神殿で修行を積み、燃えさかるゴウカの名を与えられた。

業の火では無く、業さえ燃やす、剛の火であれと。



ああ……今世の巫子よ、あなたは私を見てなんと言うのでしょう。

気味が悪いと仰っても構いません。

私を避けられても良いのです。

私は、…それでも私は、ひっそりとあなたに仕えましょう。

私は火の巫子を、今度こそお守りする為にと生き延びたのです。



皆が息をのみ、言葉を選ぶ。

ホムラが目をそらし、探るような目でリリスを見た。


バケモノと、何度その言葉を聞いてきただろう。

この子も我らをそう言うのだろうか……


リリスも無言でキョロキョロと皆の表情をうかがっている。

子供には荷が重いかと息を吐いた時、ずいとリリスがホムラに顔を近づけ首を傾げた。


生まれた時から灰の身体のゴウカは、それは果たして生き物と言えるのか、親も首を傾げる不思議なミスリルでした。

彼に形はないので、見た目の年ではありません。

悩み苦しむ彼を、ガラリアもリリサレーンも優しく受け入れ、生きやすいように導いた恩人なのです。

それがすべて打ち砕かれた過去の災厄は、彼の心も大きく傷つけました。

こうして今世によみがえった彼の決意は、並々ならぬ大きなものです。

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