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赤い髪のリリス 戦いの風〜世継ぎの王子なのに赤い髪のせいで捨てられたけど、 魔導師になって仲間増やして巫子になって火の神殿再興します〜  作者: LLX
23、魔導師たちの密かな攻防

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242、悪霊憑きの王子

アデルが、見たことも無いほどに暗い顔で笑った。


「おのれ、クククク、王家め、ふざけたこの仕打ち、我らが治める地の下に、よりによってあの汚らわしい王子を密かに葬るなど……

どうしてくれようか、この城一つ叩き潰してやろうか……」


アデルの髪が総毛立ち、怒りがスパークとなってバチバチとあふれ出す。


「ア、アデルどの……」


息を飲んで下がるルークたちが壁際まで下がる。

逃げ場の無い部屋だけに恐怖が増幅した。

それを押しのけ、ずっとドアの所に控えていたオパールが前に出て、アデルにひざまずき腰の袋に入れていた木筒から砂糖菓子を取り出し、両手で恭しく差し出した。


「お静まりを。どうか我が君お静まりを。

城を潰すのは後ほどになさいますように。」


ジロリとアデルがオパールに目をやり、ガッと砂糖菓子を掴み一握り口に放り込む。


「くそっ、こんな物で僕の気持ちが収まるものか!」


バリバリボリボリ……もうひとつかみ。

見ているだけで歯が痛くなる。

ガリガリかじり終わる頃、ようやく怒りが収まりを見せてホッとした。


「巫子様ー、死ぬかと思ったんですけどー。

オパールさん、城潰すの駄目〜……」


ニードが杖を握りしめルークの後ろからささやく。

アデルがフンともう一握り砂糖菓子を口に放り込んだ。


「くそ、くそ、腹立つ。

おのれヴァシュラムめ!あのへそ曲がり、我らにも隠しておったな。

ムカつく、マジクソ野郎、死ね!死ね!」


口汚く罵りながら、バンバン、足を踏みならす。

巫子として抑えきれないほど腹が立ったと言うことは、やはり墓は空だったのだろう。

ようやく落ち着きを取り戻し、アデルが顔を上げた。


「墓は空だ。あの下には恐らくあの災厄の王子、ランドレールが葬られている。

しかも、恐らくだが、何があったのか知らんが巫子の指輪と一緒にだ。」


「何と……」


ルークが天を仰ぎ、ヨロヨロと崩れるように壁際の椅子に座り込む。

ずっと探していた物が、自分の足元にあるなど何という運命か。

グァシュラムを恨んでもどうしようもないが、恨み言の一つも言いたくなる。


ニードがルークの様子を見ながら首を傾げる。

彼にはどれほどその指輪が大切な物か今ひとつわからなかった。


「しかし死体だぜ?もう骨だろ?

何で生きても無い死体が毒を吐き始めたんだ?それも力が何十倍にもなってさ。」


「それは恐らく巫子の指輪の力だ。

陽に作用する力が大きければ、陰にも大きかろう。

そんな物試したことも無かったが、だからこそ誰にも知られなかったんだろうな。

だが、火の巫子の指輪は普通の人間が手にすると火に包まれたという逸話を聞いたことがある。王子は焼死したのかもしれぬ。」


皆が無言で聞き入り、誰もが心にあるもっとも聞きたい問いを飲み込む。

だが、ニードが思い切って聞いてみた。


「で、あなた様は何者で何歳なので?」


ン?とアデルが顔を上げる。

ふと考え、オパールの顔を見た。


「アデル様は10歳でございます。もうすぐ11歳になられますが。」


「だそうだ。何か問題が?」


「なんで自分の年を人に聞くんだよ。

なんだ、地龍の片割れか。

巫子とかウソばっか付きやがって、だいたい本物の巫子って一体誰なんだよ。

変だと思ったんだ地の巫子って現在4人だぜ?

5人いたこともあったって話、よくみんな信じて……およ」


ずいっとオパールが顔で攻めてきた。


「無礼者め、何か問題があるか?裏の森へ飛び降りたいようだな。

それともお前が毒にまみれて指輪を取りに行くか?」


「い、いえ、ご遠慮します……」


オパールの目が血走っている。

怖くて、ニードが焦って引いた。


「オパール、今は控えよ。

それだ、指輪を取り上げねばあの魔物は我が物顔で王子を操るぞ。

見ただろう、ルークよ。王子があの剣を携えているのを。


王子はランドレールに取り憑かれている。

王子がほこらを壊した犯人だろう。


ある地の御方が渡すまいとしたが、力及ばなかったと。

王子は憑かれた上に災厄の剣まで手に入れている。」


ゴクンとつばを飲んだ。

やはり、王子には魔物が憑いていたのか。

魔物を払うのは巫子の領分だが、この巫子は偽物だ。

元より魔を払うのは赤の巫子の仕事だった。

だからこそ城下に、魔導師の塔の真下に封じたのかもしれない。


「最近王子は人が変わったように取り巻きを連れている。

会って話をした事もあるが、魔物付きの気配もわからなかった。」


ルークのつぶやきに、アデルがクスリと笑う。


「魔物と言っても悪霊だ。

人で無い物ならばお前にもわかろうが、人に人が付いていては、異常を感じるのはそれこそ火の巫子ぐらいだろう。

問題は、世継ぎの王子と言うことだ。

つまり、王に何かがあれば、次の王はあの魔物付きだ。

このままでは隣国の二の舞だぞ。」


ゴクリと魔導師たちが唾を飲む。

この精霊の国が魔物に支配されるなど、考えるも恐ろしい事態に寒気が走った。

ようやく王子が悪霊憑きと知った魔導師たちです。

知らなければ対処出来ませんが、知ったからには乗り出します。

彼らは魔導師の塔の魔導師。

この国の護りの要です。

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