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赤い髪のリリス 戦いの風〜世継ぎの王子なのに赤い髪のせいで捨てられたけど、 魔導師になって仲間増やして巫子になって火の神殿再興します〜  作者: LLX
22、城の地下道

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232、墓守の守護精霊

「エリン様」

ホッと息を吐いてリリスが駆け寄ると、エリンは仮面を取ってリリスに膝をつく。

彼は自然に、リリスを主としていた。


「お待ちしておりました、墓場に変わりございません。

精霊避けの香り粉を焚いておりますゆえ、音を立てずに地下への入り口にお入り下さい。

場所は確認しております。」


「さすがエリン様、ご苦労をおかけします。

でも、香り粉など焚いては悟られませんか?」


周囲にクンクン鼻を立てる。

まだ、ここまでは香りはしない。

それとも、人間にはわからない香りかもしれない。


「あれは濃度が一定にならないと効きませんので。

香りも少なく限定的で少々扱いにくいのですが、こう言う隠密行動には向いております。

今日は風が穏やかなので使えました。」


「ああ、本当ですね。

母上も邪魔はせぬと仰いましたから、風の精霊達も控えているようです。

道行き、お任せ致します。」


「は、お任せ下さい。途中までは下調べも済ませてございます。」


「途中まで?先に進めないのか?」


ブルースが墓場の方を見る。


「中は迷路ですが、あの手紙が途中までしか記述がありません。

ただ、迷路は間違えるとすぐに行き止まりや戻る性質のものですし、正解にも一定の法則があるので覚えやすいものです。」


リリスが感嘆してうなずく。

エリンの記憶力は驚くばかりだ。



ここへ来る前、

不安を感じていたリリスに、先に墓地へ行って様子を見に行くことを進言した彼は、リリスが自分のカバンにある手紙に杞憂を持っていることを知っていた。

ラグンベルクの手紙の存在が、本城に渡れば大変なことになる。


でも、だからと言ってこれをどうして良いのかリリスにはわからない。

それには地下道の道順と、宝物庫の場所が書いてあったからだ。


内容は酷く複雑で、とても覚えきれないと思っていた。

だが、リリスがエリンに手紙を渡すと、彼は一目で覚えて、リリスに許しを得ると火を付けて燃やしてしまった。


「このようなことこそ、我らミスリルにお任せを。

いまだ私のような者に頭を下げてしまうあなた様には酷かもしれませんが、我らミスリルは道具で構わないのです。

むしろそれこそ本望、あなた様の為なら命さえいといません。

どうか、この私をお使い下さい。」


そう言って、エリンは頭を下げた。

リリスは、しばし目を閉じ、意を決したように大きくうなずき彼の手を取ってギュッと握りしめた。


「命は、命だけはあなたの財産です。大切になさって下さい。

でも、そのお気持ちは私の財産となりましょう。ありがとうございます。」


リリスに出来ることなど今はその言葉しか無かったけれど、エリンにはその信頼が大きな力となった。




エリンが、城の方角を指さして言う。


「兵は、あの先の小道を行き来しています。

先ほどこの辺の見回りが終わりましたので、次の見回りまで間があります。

お急ぎを。」


「わかりました、とりあえず行きましょう。

案内をお願いします。」


うなずき、先を行くエリンが、リリスの手の感触を思い出すように手をグッと握りしめる。

心を集中し、耳を澄ませて周囲の気配を探りながら、主の命を預かる気負いで先を歩き始めた。



そこは、罪人の墓場と言っても草むらの石畳に石碑のような物が3つ。

罪人と言え、やはり怨みや呪いは避けたかったのだろう。

あえて地の神殿の印であるユリの紋章を入れなかったらしいが、鎮魂の為にと地の神殿が、王の許しを得て建立した物だ。


入るべからずの木札が立っているが、元々色んなうわさが災いして訪れる人は少ない。

ここにユリの紋が入っていたなら、信心深い人々は守の精霊なども恐れず立ち入ったことだろう。

信仰心は何よりも勝る事を、人間は愚かだと言いつつもヴァシュラムは知っている。


「石畳を踏んだら音を立てないで下さい。

石畳は所々に守護精霊をつなぎ止めている呪文があります。

あれを踏んだ瞬間に守護精霊が現れる仕組みでしょうが、一応呪文封じの針を通り道には刺しています。


墓守の守護精霊は、好戦的だと記述にあります。

針で刺してはいますが、心を平静に、戦意が無いことを示すことも大事です。

彼らを刺激しないように願います。」


針は、目をこらすと石の中央にくるぶしほどの長さでキラリと光る。

一体どうやって刺すのか、硬い石を物ともせずしっかりと刺さって立っていた。


「あとでどうやって刺すのかご指南願いたいねえ。」


ブルースが顎の無精ヒゲをさすってザリザリ言わせる。


「あなたが出来るなら、私の存在意義が揺らいでしまいますので、ご遠慮致します。」


珍しくエリンが、穏やかな顔でクスリと笑って返した。

しっと指を立て、針と針の間を歩き始める。

2カ所に置かれた香炉から香が立ちこめ、あたりは花のような爽やかで薄く甘い香りがして、守の精霊なのか薄いボンヤリとした人型の光がじっと頭をもたげ動く気配がない。

それは十数体もあって、いくつかは地面から半分ニョキニョキと身体や頭を中途の状態で出していた。

エリンはレスラカーンに仕えることを目指して、腕を磨いていたミスリルです。

ですが、彼は顔が猫のような獣系で人間らしくなかった為に、父親のサラカーンに侮蔑の言葉を持って不適格者の印を押され、他の貴族に仕えることさえ出来なくなってしまいました。


たとえどんなに素晴らしいミスリルでも、王家に不適格だと告げられたミスリルは、他の貴族も雇おうとはしないからです。

そういうミスリルは、食う為にはぐれミスリルとなって、傭兵まがいの仕事や暗殺者などの汚れ仕事しか出来なくなってしまいます。


無情の中で絶望にくれていた彼をリリスの守に送ったのは、サラカーン付きのミスリルである兄キリルが彼の才覚を惜しいと思ったからです。

リリスに守のミスリルをとレスラカーンが言った時、兄のキリルが真っ先に思い浮かべたのは彼の顔でした。

どうにも出来ない容姿の為に、辛い修行にも耐えてきた弟の絶望を一番知っていたのは、やはり兄なのです。

彼はリリスに出会えて、幸せを感じています。

レスラカーン、いい仕事していますねーです。

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