表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤い髪のリリス 戦いの風〜世継ぎの王子なのに赤い髪のせいで捨てられたけど、 魔導師になって仲間増やして巫子になって火の神殿再興します〜  作者: LLX
22、城の地下道

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

229/581

228、身代わり札

ブルースが、顎の無精髭をザリザリ鳴らす。


「しかし墓場か……気が進まぬなあ……

ガーラントが本城ではそこへ行くのは禁忌であったと……俺はガキの頃から幽霊と女の涙だけはダメなんだ。」


「そう言ううわさで人払いをしているのでしょう。まあ、出ても精霊のイタズラと思って下さい。

王族としてもそこは何かあった時の逃げ道ですから、いざというとき使えるように整備は必要です。

何気なく目立たぬようにそこにあり、誰も興味を持たない。

しかも、人が手を入れても不思議とは思わない。そう言う意味では成功しています。」


「ま、罪人でも呪いの元になっちゃ本末転倒だ。昔は呪術もあったらしいからな。慰霊の意味もあったんだろうさ。」


「罪人でも人の死にかわりは無いですから、手向けは人間として最後の良心です。

えーと、剣は麻布で包んでいますか?」


ブルースが、腰をパンと叩く。

神官達も腰に小刀を差しているので、皆、麻布で巻いた棒状の物が腰にあり、一見奇妙な風体だ。

だが、リリスは皆を見回しチェックして頷いた。


「うん、皆様おそれいります。

お手数ですが、墓守の精霊はかなり好戦的なようです。

精霊の嫌う金物は、草木でくるまねば余計な争いを生むようです。

地図にも非常時以外、必ず剣は麻布で隠すようにとありますので。

夕暮れ以降は魔物には強い時間です。

墓守が精霊だけなのか魔物もいるのかが不明ですが、ホムラ様によると地の精霊が守っているのではないかと……」


「なんでわかるんだ?」


ブルースがホムラを見る。


「……精霊は属するもので、匂いやまとう色が違うのです。」


ホムラは答えず、グレンが答える。


「魔物か……魔物ってのはまずいな……で……魅入られたらどうすればいい?」


ブルースが、不安を隠して余所を向き口を濁す。

城で魔導師に身体を乗っ取られたのがどうしても許せない。

そして、また足を引っ張るのでは無かろうかと、一抹の不安となって胸に重かった。


「ブルース様は、一度魔導師に道を作られてしまっておられます。

それは魅入られやすいと言うことです。」


リリスが話すと、ショックを隠しきれず思わずブルースが顔を上げる。

だが、リリスはそれを手で制し、カバンから取り出した小さな包みを取り出した。


「慣れないので、これを作るのに一晩かかってしまいました。

ヴァルケン様直々に教えて頂いた、身代わり札を撚ったモノです。

これを腕につけてください。」


なるほどなにやら葉っぱ色に染まった緑色のこよりが3本。

リリスが彼の袖を上げ、1本1本腕に縛っていった。


「なんで3本なんだ?」


「だって、ブルース様、人が良すぎますから。」


「ええ〜〜……バッ、バカに……」


真っ赤な顔の彼に、キュッと笑ってリリスがハイ出来ましたとぎゅうっと手を握った。


「守りの上に守りを重ねて、あなたを守りますように。

良き騎士よ、あなたはあなたのままであれ。

アス ベルク、我が血、我が吐息、我らが眷族のかけらをより合わせた者よ、火炎の巫子リリス・ランディールが、我が名をもって汝に託す。

汝、身をもって守りし時は、その火、情けに充ち満ちてフレアゴートの御許へ昇華せり。」


ポッと、こよりが一瞬燃えて、継ぎ目のないつるの腕輪に変わった。

少し驚いてリリスの顔を見ると、さも上手く言ったという風に満面に笑みを浮かべている。

そして大きくうなずいた。


「よろしい、準備万端です。では!参りましょう!」


サッと立ち上がり、締まった顔で皆に微笑みかける。

ほどよい緊張が皆に伝わり、思わず一同が大きくうなずく。


同じく思わずうなずいてしまったホムラが意表を突かれ、渋い顔で顔の前垂れを降ろした。


「締まりの無い事よ!遊びに行くのでは無いのだぞ!」


「元より!皆々様、どうかご無理なさらぬように。

私は真っ先に逃げます!」


「ふふっ……そう言いながら、先陣を切って突破する。とか、言いそうな御仁よ。」


ブルースが苦笑して腕輪を隠すように袖を降ろす。

そして真剣な顔でリリスに向かって胸に手を置いた。


「我らはあなたの騎士でござる。

進む時は元より、引く時もあなたは我らの真ん中でありなされ。

我らはあなたを守るためにここにある。

我らにとって、あなたは絶対に守られねばならぬお人だ。

それだけは、それだけは重々お守りを。」


「わかりました、心します。

ありがとうございます、安心して前に進めます。

皆様,お世話になります、よろしゅうお願いします。」


ブルースに、そして皆に頭を下げるリリスに、ちっとも変わりないなと騎士二人が苦笑する。


「よしっ!参りましょうぞ!」


バンと彼の肩を叩き、そしてブルースは率先して馬車を降りはじめた。


「おう、ガーラントよ、貴様は後ろを頼む。

無理はするなと巫子様は仰せだ。」


茶化してブルースがコートを直す。

ガーラントは馬車から降りるリリスに手を貸しながら、フッと笑った。


「あなたが無理しなければ、我らも無理をすることはなかろう。

くれぐれも自重なされませ。」


「はい、よろしくお願いします。」


パドルーが、リリスの前に出て静かに頭を下げた。


「では、私は馬車を預かります。

危急の時はお逃げください、水鏡で見ておりますので、タイミングを見て墓場近くの道に走らせます。お任せを。」


「お願いします。」


パドルーがうなずいてサッと御者台に戻り、馬車を城の方角へ動かす。

一同は森へ入り、目的地の罪人の墓場と呼ばれる場所へと向かいはじめた。


足を引っ張ることは、自分が重荷になってしまうことは、騎士にとって身を割かれる思いです。

騎士は、人を守る為に騎士になったのだと、剣を手に騎士の本分をうたうのです。

カッコイイ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ