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赤い髪のリリス 戦いの風〜世継ぎの王子なのに赤い髪のせいで捨てられたけど、 魔導師になって仲間増やして巫子になって火の神殿再興します〜  作者: LLX
20、リリスの帰宅

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218、秘密の通路

急に黙り込んだブルースに、リリスが明るい声を上げる。


「何をおっしゃいます、ブルース様。

私も術に落ちてミスリルの方に食べられかけました。

あなた方がいなければ、今頃あの森には私の骨が転がっていたことでしょう。

ああ、まったく、まことに油断大敵。こう言う手があるのかと驚くばかりでございます。」


リリスが神妙な顔でキッシュを一口ほおばる。

むぐむぐかんで飲み込み、ブルースに向かってフォークを左右に振った。


「そんな顔しちゃ駄目です、あなた様らしくない。

魔導に抗うのは至難の業です、ご自分を責めてはなりません。

ミラン様はお城にいらっしゃるのですよ、きっと一番最良の手当を受けられているはず、私はそれで安心しています。」


「そう……かね。」


ブルースが苦笑いでガーラントを見る。

ガーラントは何とも思ってない様子で、リリスの仕草ににやりと笑った。


「リリス殿、行儀が悪いと神官殿ににらまれますぞ。」


見ると、ホムラが渋い顔でにらんでいる。

リリスが慌ててフォークを置いて、ぺろっと舌を出した。


「やっぱり、家に帰ると気が抜けます。

それでパドルー様、ラグンベルク様のお話はいかがでしたか?」


「はい、ラグンベルク様は、残念ながら火の巫子の指輪のことはご存じなかったのです。

が、恐らく王がご存じであっても返されることは無かろうと。

なので、探しに行くが良かろうと、これを書いてくださいました。

ただし、これは口外無用、巫子殿のためにのみ使うようにと。」


そう言って、パドルーが懐から一枚の紙を取り出す。

思わず手を出しかけたブルースにたたんだ紙を差し出しかけて、皆を見回し引っ込めた。


「なんだ、もったいぶるな。我らが信用できぬか?水の戦士殿。」


ブルースがあからさまに眉をひそめる。

しかしパドルーは席を立ってリリスの元に行き、改めて彼に差し出した。


「あなた様は王族なれば、元より知って当たり前なのだとお話でした。

かのお方は忍んで取りに行かれるが良かろうと仰いました。

あなたにはその権利があると。」


「馬鹿な!盗みに入れと仰せか?!」


「それこそバレたら死罪だぞ!冗談じゃ無い、そんな危険なことさせられるか!」


皆、驚いて口々にパドルーに声を上げる。

しかし、当のリリスは紙を受け取り開いて見ると、顎に握った手を置き考え始めた。


「まさか……まさか、まさかな事言わんでくれよ。」


引きつった顔でブルースが立ち上がる。

ガーラントは、無言でリリスの言葉を待った。



「行って、みましょう。」



リリスがうなずいて、皿を避け紙をテーブルに広げる。


「ばっ……」


言いかけたブルースに手で制し、リリスが至極真面目な顔を上げた。


「私は、指輪がどこにあるかを確実に知っておきたいのです。

これは良い機会です。指輪の力は酷く弱っていますが、これだけ近くまで行けたらわかると思います。

仮にそこにあるとわかりましても、きっと、宝物庫に入ることは出来ないでしょう。

でも、そこにある事さえわかれば、王に請いやすくなります……と、考えることも出来ましょう。」


「火の巫子が盗人のまねなど、理解できぬ!」


ホムラがたまらず火を吐くように怒鳴った。

リリスは、それも予定の内なのか驚くそぶりも見せない。

肉に添えてあったソースの味がする口元をぺろりとなめ、シャンと背を伸ばした。


「承知しております。今回は、指輪のありかを知るためです。

私も盗人になる気などさらさらございません。


ただ……一つよくお考え下さい、ホムラ様。

今の王族は、火の神殿再建にはご理解がありません。

まして、火の指輪のありかはご存じが無い、つまり指輪は行方知れずです。

それだけ過去の王家は火の巫子の存在を、なおざりにしたかったのでしょう。


今一番優先することは指輪のありかを探すこと、手に入れるのはそれから手を考えます。

指輪の力は弱っていて、城に入っただけではどこにあるのかまでわかりませんでした。

でも、恐らく宝物庫であろうとセレス様方が仰っておられましたから、まずそこを調べます。

その、すべは問いません。


ずっと考えてきたのです。

なぜ、この数百年という長い時間を秘密だった物が、今すべて解かれてゆくのか。

それは………今が、好機だからなのです。


時が、満ちています。

すべてが動き始めます。


私は予見は出来ませんが、何かが急くのです。早く動けと。」


「しかし……そう簡単に宝物庫に近づくなど……城のどこにあるかも知らぬものを。

捕まれば死罪ではないか。」


ホムラがため息をつき渋い顔で吐き捨てる。

リリスが小さく首を振ってうなずいた。


「承知の上です。ですが、まだ死にたくはありません。

私が死ぬ時は、このアトラーナから火が消える時だと肝に銘じております。

だからこそ、出来るだけの安全策を考えて、ラグンベルク様はこの地図を託されたのだと思います。」


皆が一斉にその紙をのぞき込む。

そこには、有事の時に城の中から外へと脱出する時の通路。

財を持ち出し人知れず逃げる為の、王族だけに伝わる秘密の通路の地図だった。

ラグンベルクは、リリスびいきです。

出来ればキアナルーサではなく、リリスに王を継いで欲しいと願っています。

それが正当であり、救うことが出来なかった、ふがいない兄への当て付けでもあります。

リリスは意外と後ろ盾になって良いとする高位の人の心を、すでに掴んでいます。

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