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133、誠意への答え

リリスが隠さず、メイスを保護したことを告げる。

すると、想像した通りの反応が返った。


「なんと!では、取り調べは?なぜ報告がないのだ?」


「あの子に魔力はありません。

ただ、利用されていただけです。

レナントの城を襲ったところを、地の巫子様に魔を払われようやく自分を取り戻したところでございます。

今後は地の神殿で修行をなさるこことなっております。」


「修行?何の?」


「あの方も巫子なのです。だからこそ、秘めたお力があり、それを利用されたのかと存じます。

恐らく……あの方も火の巫子かと。」


「火の?どうして火の巫子が問題を起こすのだ。」


「それは……あるべき神殿がないからです。

神殿が無いと、修行も出来ませんし、守る者もいません。

しかし巫子は、それでも変わらず力を継いでいきます。

私などは母上に守って頂きましたが、彼は守ってくれる方をすべて失ってしまいました。

良からぬ者が彼を利用しようとしても、彼に抗うすべは何もないのです。」


「なるほど…………そうか……そうであれば合点がいく。

レナントからは、今回の騒ぎは隣国の魔導師が引き起こしているらしいと連絡が来ている。

何かわかったことはないか?」


「いえ、それ以上のことは……

帰国なさった隣国の使者に、地の巫子セレス様が同行していらっしゃいます。

ガルシア様もセレス様のご報告をお待ちになっている状態かと存じます。」


「なるほど。

……では、リリス殿は巫子の許しを得てどうなされる。」


「はい、まずはこの国の脅威を取り除くことから。

出来ますれば私もアトラーナの巫子の一人として隣国を尋ね、恐らくはこの騒ぎの元となっているらしい魔導師と、なんとか和解出来たらと思いますが……」


「ふむ、確かに国同士の諍いには、中立の立場で巫子が仲裁に立つのが理想的ではある。

しかし、だからと言って向こうに聞く耳があるとは限らない。話し合いが駄目なら戦う覚悟も必要だ。」


「承知しております。

だからこそ、それを出来るだけ回避することを願って、すべて整えた上での話し合いを致したく。

隣国との戦争は、なんとしても避けなければなりません。

精霊王を後ろにした、巫子の力は周知のことです。それは敵にも脅威となりましょう。

その為にも私は、力を得るために王に話を聞いて頂かねばならないのです。

火の巫子、そして火の神殿は今こそ必要な時です、リリサレーン様の悲劇を繰り返さぬ為にも。」


「リリサレーンはたいそう力の強い巫子であったと聞く。それでもあのような騒ぎを起こした。

お主がそうならないという保証は無かろう。」


「……ありません……それは……

でも、火の巫子はたとえ私が死んだあとでも生まれるのです。

そしてそれを保護する神殿がない、その事の方がこの国には脅威となるでしょう。

それは先日肌身でお感じになったことと同じ事、身に秘めた力を持つ巫子が放置され利用されてしまう。

これはこの精霊の国アトラーナでは、あってはならないことなのです。」


「……精霊の……国か……」


ここは、精霊の聖地アトラーナ。

そうなのだ。

王家があって精霊があるのではない。

精霊あってこそのこの国の存在意義。

この国は人だけの物ではない。


「人から聞いたことではあるが、貴方は……何かを探してこの城を訪ねたと聞く。

王に直接何を申し出るつもりなのだ?私で良ければ話して貰えぬだろうか。

フェリアには借りがある。私は出来ればそなたの力になる事で、それを返したいと思うのだ。」


レスラカーンが思いがけない言葉を漏らす。


「えっ」


側近であるライア、そしてリリスたちには思ってもみなかった言葉に、一同が驚き目を剥いた。

リリス達が驚きを持って戸惑いの顔を見合わせる。

だがライアは、やはり恐れていたことと焦り、レスラカーンに声をかけた。


「レスラカーン様、どうか今夜は……」


「良いのだライア。

リリス殿、今の私には大した力はない。

貴方が必要な物、それを知ったとしても何も出来ぬだろう。

だが、なにか……この私にもできる事があるかも知れぬ。

そなたは火の巫子の許しを得に来たと聞いた。

火は魔を払い、人々の生活を助け、闇の中の灯火ともなる。

この国にひと筋の灯火ともなるならば、神殿は再興しても構わないと思う。

私は、そなたの力となろう。」


「なりません!」


ライアが焦りを見せてレスラカーンの前に出る。

この国の行く末を考える前に、何より彼には主の安全が最優先なのだ。

もう、2度と危険な目に合わせたくない。

ましてようやく父の後を継ぎたいと明るい目標が出来て喜んでいたのに、こんな危険なリスクを背負わせるなど許せなかった。


リリスが誠意を持って、正直に包み隠さず話すことに、レスラカーンは答えようとします。

でも、今彼に手を貸すことが、どれだけ危険なことかライアは知っています。

どう判断するか、見極めるのは困難です。

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