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115、野宿の夜

夕暮れになると、空が鮮やかにオレンジ色に燃え上がる。

吹く風も冷たくなり、小川で水を水筒に入れると急いで火に戻った。


パチパチと、木の爆ぜる音も心地よく森の中でたき火を囲む。

出来ればどこかで宿をとも思っていたが、ルートの近くには家がポツポツ点在するばかりで結局野宿になった。

まあ、それだけの準備はしてきたので、食料は十分だ。

リリスが精霊の導きを元に、小さな小川を捜してその近くに休むことにした。


旅慣れたリリスは、てきぱきと薪を拾って着火に四苦八苦するミランから火打ち石を受け取り、あっという間に火をつけてしまう。

そして金物に水を入れて湯を沸かし、またコックのおじさんが包んで持たせてくれた豆と米に味をつけて蒸した料理や、キッシュのような物などを更に葉で幾重にも包み、たき火の下に入れて蒸し焼きにして軽く暖める。


騎士3人が自分も何かしなくてはとウロウロ、おろおろ。

しかし、あれよという間に食事の準備が整ってしまった。


「さあ、冷めないうちにいただきましょう。」


「まことに、……申し訳ない、巫子殿。」


「いえ、まだ巫子じゃありませんから、お気遣いなく。」


にこやかに勧めるリリスから苦笑いで食事を受け取り、落ち着いて食べ始める。

まったく、結局は召使い歴の長いリリスに、こう言うことに敵う者はいなかった。


「美味しいですね、コックのおじさんに帰ったら御礼を言わなくては。

なんだかちょっと、楽しいです。」


どこか楽しそうで、多弁なリリスは無理して何かをごまかしているようにも見える。

ミランやブルースはあまり気がつかない様子だが、ガーラントは心配そうな顔でチラリと彼の顔を見て白湯を口に運んだ。


「ミラン様は弓がお上手なのですか?」


思いがけず弓を背負ってきたミランに、珍しそうにリリスが聞いた。


「ええ、『弓も』上手いのですよ。」


ニイッと笑う彼に、リリスがアッと口をふさぐ。


「これは失礼しました。弓も、お上手なのですね?」


「うふふ、ええ、私は目がいいのです。今年のグルクで空を飛びながら目標に当てる競技では2番でした。

優勝戦で一つはずして、惜しかったんですよ。」


「まあ、それでも一発はずしたわけだ。」


横から茶々を入れるブルースに、ミランがプウッとむくれる。

自慢も2番止まりは悔しい。


「大丈夫です。来年はちゃんと1番取ってご覧に入れますから!」


「へえ、そりゃ楽しみだ。クックック」


「意地悪ですね、ブルース殿。

性格の悪さを競う競技だときっと一番でございましょう。」


「じゃあ、気の弱さじゃミランが一番だな。」


「うむうーー……」


ギリギリにらみ合う二人に、リリスが楽しそうに笑う。

ブルースは明るく陽気な男で、やがてミランを引っ張って歌を歌い出した。

ガーラントが嫌そうな様子で顔をそらすと、次はガーラントの子供の頃の話で盛り上がる。

殴り合いになりそうになりながら、その夜は酒もないのに随分盛り上がった。



「じゃ、明日は早いし寝ますか。」


「順番は先ほどの通りで、リリス殿はごゆっくり。」


「本当にいいんですか?私も仲間に入れて下さいませ。」


「これは騎士の勤め、子供はごゆっくりどうぞ。」


騎士3人が順に火の番をすることにして、まずはブルースが、次にミラン、そしてガーラントが起きることになった。

リリスは恐らく眠れないのではと思うガーラントの配慮を、他の二人も無言のうちにわかってくれたのだろう。



皆が寝静まると、暗く静かな森の中、木の爆ぜる音と小さな小川のせせらぎが、静かにささやくように響く。

不安な気持ちを払拭するように、リリスは身体にかけるイネスのコートをギュッと握りしめた。

コートから香る神殿の香りと、イネスの優しい匂いが心を落ち着かせてくれる。

今はただ、セフィーリアとザレルとフェリアの姿を思いながら、久しぶりに会えることを楽しみにしようかと心をそらし眠りについた。




遠くにクスクスと笑い声がする。

しかしそれは、風に流され人の耳には聞こえない音域で心地よく、リリスの周りに居る精霊達も静かに夜のとばりを楽しんでいた。

精霊達は、リリスが好きです。

それは火の巫子だから、と言う事が大きいです。

近くに居るだけで心地いい、だから彼の周りは常に精霊が群れます。

だからこそ、魔力も大きく魔導の力も大きいのです。

それを考えると、半精霊のミスリルには居場所は丸見えかもしれません。

いいことが大きいと、悪いことも大きい。

そんな感じです。

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