1-3.伝説/1-4.十歳のご主人様
戦いは予想以上に激しく、凄まじかった。
「赤黒煉獄」後世の人々はあの日のことをそう呼ぶ。
血まみれの赤と、闇の黒と、混ざり合い、まさに地獄のような惨状だった。
あの日、あの場で、200名以上のS級神、4000名以上のA級神、60000万を超えるB級及びB級以下の神、合計68711名の神が命を失った。
ロースにとって、そこまで高い対価を払っても、アルファンスさえ始末できれば、十分値する。しかし、ソランの存在のせいで彼はいつも落ち着かない。生まれたばかりの赤ん坊が、生存するはずがなかったが、ハーディンに連れて行かれた。あの赤ん坊は近い将来、天界の破滅にもたらす存在になると直感した。
この戦いは、六界の中、人間界以外の隅々まで歌われ、伝説となった。
時は流れ、あの日の赤ん坊は、10歳少年姿のハーフ魔族に成長した。
クレザとディニス、ハーディンが数多くの候補者から選んだ2人は、ソランの面倒をみる責任者だ。
クレザは現冥界三元帥の一人、冥界歴史上唯一の女元帥エーデルワイスの弟子で、ディニスは現冥界三元帥の中、最強と呼ばれているドイカオスの娘だ。2人の実力は間違いなくトップクラスだ。冥界で彼女たちに勝てるものは三元帥、十二神将、後数人の長老しかいない。
だけど、ソランにとっては、決していいことではない。
「ソラン様、待って―」(ディニス)
「ははは...はははははは...」(走るソラン)
「ソラン様、危ない...」(クレザ)
脚が滑って転びそうなソランを見て、クレザは一瞬でソランの前に移動し、ソランを抱きしめた。
「ははは...クレザに捕まった...」(ソラン)
クレザとディニス、2人は目の前にいるたった10歳児ぐらい姿の子供を、感情をこめて、つくづくと見ている。恋しくて、恋しくて、どうしようもないぐらい。彼女たちにとって、彼は全てだ。例えこの世の全てを敵に回しても、守らなければならない。ソランしか眼中にない。親や師匠どころか、もう冥王のことすら忘れている。
現在、冥王ハーディンが一番悩んでいること、それは彼女たちからの過剰な愛で、ソランは本当の実力を発揮するチャンスが一度もなかった。このままでは、身の危険や全力の戦いなどを味わうことができない。ソランは父親のように魔界の王にはなれない。溺愛しすぎると害になる。
ハーディンが思いついたのは、ソランをあるところに送り込み、鍛えることだ。そして、このことをクレザとディニスに教え
た。2人はこのことを聞いて、まるで「晴天の霹靂」のようで、とても悲しくて悲しくて堪えられない。彼女たちは大好きなソラン様と離れ離れになることが、どんなに辛いのかをはじめて知った。しかし、溺愛し過ぎると害になる。彼女たちもこのことをよく理解している。これはすべて彼女たちの大好きなソラン様のためだ。