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国なき娘~白貂娘異聞~  作者: いちたすいち
第三部 南行編
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第二十二章 王蘭玉、白貂娘と再会し旧交を温める 2

 白約楽(はくやくがく)は、王蘭玉(おうらんぎょく)に少し遅れて広場に着いたが、そこで見た意外な取り合わせに驚いた。しかし、王蘭玉(おうらんぎょく)(てい)王謀反の事に触れようとしているのに気付き、慌てて割り込んだのである。

「あ、(はく)諌議士」

 白貂娘(はくちょうにゃん)も、突然、白約楽(はくやくがく)が現れたので驚いた。しかし、王蘭玉(おうらんぎょく)は話を遮られたことで機嫌を悪くして、彼に食って掛かった。

「なんだい、旧交を温めちゃあ悪いとでも言うのかい」

「え、いや、そうではないですが」

 そう言ってから、白約楽(はくやくがく)は小声で王蘭玉(おうらんぎょく)に耳打ちをした。

(てい)王の話はまだ秘密なんです。彼女にも言わないでください」

「ああ、判っているよ。いちいちうるさいね。そんなに私が信用できないのかい」

 王蘭玉(おうらんぎょく)が大声で返事をしたため、白約楽(はくやくがく)は余計に動揺した。その白約楽(はくやくがく)を助けたのは白貂娘(はくちょうにゃん)の質問だった。

蘭玉(らんぎょく)姉さんと(はく)諌議士は、お知り合いなのですか」

 彼女の質問に、二人は一瞬、顔を見合わせたが、すぐに王蘭玉(おうらんぎょく)が口を開いた。

「そんなたいしたもんじゃないけどね。私は昔、こいつの父親に随分お世話になったのさ」

 王蘭玉(おうらんぎょく)白約楽(はくやくがく)を指差しながらそう答えると、話題がそれたことで白約楽(はくやくがく)も安心したため、今度は彼が白貂娘(はくちょうにゃん)に質問をした。

(おう)次傅は蘭玉(らんぎょく)さんとどこで知り合ったのですか。同じ(おう)姓ですが、身内ではないのでしょう」

 白約楽(はくやくがく)は昔から王蘭玉(おうらんぎょく)との付き合いがあるが、王礼里(おうれいり)という妹がいるという話は聞いたことがなかった。


 王という姓は、比較的ありふれた姓である。王蘭玉(おうらんぎょく)は誰にでも、自分を「姉さん」と呼ばせるので、白貂娘(はくちょうにゃん)が彼女を姉さんと呼んでも不思議はないのである。


 白貂娘(はくちょうにゃん)が答えようとする前に、やはり王蘭玉(おうらんぎょく)が話し出した。

(ほう)の国でだよ。礼里がまだ七歳か八歳位の頃だったかねえ。身寄りがなかったから、私が引き取ってしばらく一緒に旅をしたのさ。ほんの数ヶ月だったけどね。その時に私が王礼里(おうれいり)という名前をつけてやったのさ」

「姉さん」

 白貂娘(はくちょうにゃん)王蘭玉(おうらんぎょく)が口にした話にうろたえてそう叫んだ。

「あ、名前のことは秘密だったっけ。今言ったことは忘れておくれ」

「忘れてといっても」

 そう簡単に忘れられるような話ではない。しかし、王蘭玉(おうらんぎょく)にそう釘をさされては、白約楽(はくやくがく)もその場でそれ以上、追求することはできなかった。

 仕方がなく、彼は最初の質問を繰り返した。

「次傅は何故、こんな所に一人でいたのですか。体調がまだ優れないと聞いていましたが」

「ええ、まだ本調子ではないのですが」

 法詠華(ほうえいか)のことを言うべきかどうか、白貂娘(はくちょうにゃん)は迷ったが、彼女が答える前に、王蘭玉(おうらんぎょく)が再び二人のやり取りに口を挟んだ。

「なんだい、礼里(れいり)は体を壊しているのかい」

「え、はい。船旅が続いたものですから」

「彼女は酷い船酔いをするんですよ。ここ一週間ほど、まともにものを食べることができませんでしたからね」

 白約楽(はくやくがく)が、白貂娘(はくちょうにゃん)の返事にそう付け加えると、王蘭玉(おうらんぎょく)は笑って答えた。

「そうかい、礼里(れいり)は船に弱かったんだねえ。しかし、本当になんでそんな体で街に出てきたんだい」

 その時、彼女の質問に答えるように、後ろから声が聞こえてきた。

白貂娘(はくちょうにゃん)、もう疲れも取れたでしょう。向こうに面白い物があるわ。行ってみましょう」

 白約楽(はくやくがく)王蘭玉(おうらんぎょく)が振り向くと、そこには一人の若い女性が立っていた。

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