第二十二章 王蘭玉、白貂娘と再会し旧交を温める 2
白約楽は、王蘭玉に少し遅れて広場に着いたが、そこで見た意外な取り合わせに驚いた。しかし、王蘭玉が程王謀反の事に触れようとしているのに気付き、慌てて割り込んだのである。
「あ、白諌議士」
白貂娘も、突然、白約楽が現れたので驚いた。しかし、王蘭玉は話を遮られたことで機嫌を悪くして、彼に食って掛かった。
「なんだい、旧交を温めちゃあ悪いとでも言うのかい」
「え、いや、そうではないですが」
そう言ってから、白約楽は小声で王蘭玉に耳打ちをした。
「程王の話はまだ秘密なんです。彼女にも言わないでください」
「ああ、判っているよ。いちいちうるさいね。そんなに私が信用できないのかい」
王蘭玉が大声で返事をしたため、白約楽は余計に動揺した。その白約楽を助けたのは白貂娘の質問だった。
「蘭玉姉さんと白諌議士は、お知り合いなのですか」
彼女の質問に、二人は一瞬、顔を見合わせたが、すぐに王蘭玉が口を開いた。
「そんなたいしたもんじゃないけどね。私は昔、こいつの父親に随分お世話になったのさ」
王蘭玉が白約楽を指差しながらそう答えると、話題がそれたことで白約楽も安心したため、今度は彼が白貂娘に質問をした。
「王次傅は蘭玉さんとどこで知り合ったのですか。同じ王姓ですが、身内ではないのでしょう」
白約楽は昔から王蘭玉との付き合いがあるが、王礼里という妹がいるという話は聞いたことがなかった。
王という姓は、比較的ありふれた姓である。王蘭玉は誰にでも、自分を「姉さん」と呼ばせるので、白貂娘が彼女を姉さんと呼んでも不思議はないのである。
白貂娘が答えようとする前に、やはり王蘭玉が話し出した。
「奉の国でだよ。礼里がまだ七歳か八歳位の頃だったかねえ。身寄りがなかったから、私が引き取ってしばらく一緒に旅をしたのさ。ほんの数ヶ月だったけどね。その時に私が王礼里という名前をつけてやったのさ」
「姉さん」
白貂娘は王蘭玉が口にした話にうろたえてそう叫んだ。
「あ、名前のことは秘密だったっけ。今言ったことは忘れておくれ」
「忘れてといっても」
そう簡単に忘れられるような話ではない。しかし、王蘭玉にそう釘をさされては、白約楽もその場でそれ以上、追求することはできなかった。
仕方がなく、彼は最初の質問を繰り返した。
「次傅は何故、こんな所に一人でいたのですか。体調がまだ優れないと聞いていましたが」
「ええ、まだ本調子ではないのですが」
法詠華のことを言うべきかどうか、白貂娘は迷ったが、彼女が答える前に、王蘭玉が再び二人のやり取りに口を挟んだ。
「なんだい、礼里は体を壊しているのかい」
「え、はい。船旅が続いたものですから」
「彼女は酷い船酔いをするんですよ。ここ一週間ほど、まともにものを食べることができませんでしたからね」
白約楽が、白貂娘の返事にそう付け加えると、王蘭玉は笑って答えた。
「そうかい、礼里は船に弱かったんだねえ。しかし、本当になんでそんな体で街に出てきたんだい」
その時、彼女の質問に答えるように、後ろから声が聞こえてきた。
「白貂娘、もう疲れも取れたでしょう。向こうに面白い物があるわ。行ってみましょう」
白約楽と王蘭玉が振り向くと、そこには一人の若い女性が立っていた。




