表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
国なき娘~白貂娘異聞~  作者: いちたすいち
第三部 南行編
109/147

第三十六章 比禁、白貂娘と面会する 3

 その同じ頃、白約楽(はくやくがく)王蘭玉(おうらんぎょく)と共に旅を急いでいた。目的地は氾江(はんこう)に巣食う水賊の親玉である、龍嵐児(りゅうらんじ)の元である。

 水賊を味方に付ける、という話を、彼が正式に回徳(かいとく)益兼(えきけん)に通したのは、前日の夜のことであった。

 白貂娘(はくちょうにゃん)から、その可能性について聞かされていた益兼(えきけん)は、それほど驚きはしなかったが、回徳(かいとく)の方は、そうはいかなかった。

 大変驚くと同時に、猛烈に反対したのである。当然といえば当然である。天下国家が水賊に助けを求めるなど、甚だ外聞が悪い。

 益兼(えきけん)の取り成しも、今回ばかりは効果がないかにみえたが、彼を説得したのは太子の一言であった。

「外聞を気にして南華を失うのでは、本末転倒ではないのか」

 回徳(かいとく)も、水軍無しで(てい)王の相手をする愚は判っている。ただ、白約楽(はくやくがく)が常に先走り、事後承諾を求めることに対して反発したのである。

 結局、太子の取り成しという形で、回徳(かいとく)白約楽(はくやくがく)の策を飲んだ。

 白約楽(はくやくがく)は後のことを益兼(えきけん)回徳(かいとく)、そして白貂娘(はくちょうにゃん)に委ね、その夜に王蘭玉(おうらんぎょく)と共に旅立ったのである。


 船に揺られながら、白約楽(はくやくがく)白羊策(はくようさく)から聞かされた話を思い起こしていた。

(てい)王の謀臣である重傑(じゅうけつ)は、高遂(こうすい)の養子である」

 高遂(こうすい)は表向きは南華地方で水運業の元締めをしていた。しかし裏で私塩売買の総元締めという立場にあった。

 本来、塩の売買は国が握っており、それは国の収入に直結している。当然のことながら私塩売買は禁止されている。

 しかし禁止されているからこそ、その儲けは大きい。官製の塩の半値で売っても十分な利益が出る上、民衆からも感謝される。

 昔から官吏の目をかすめ、時には賄賂攻勢をかけて見逃してもらいながら、絶え間なく続けられてきたのには、そのような訳がある。

 特に南華地方では、長年の分裂のため取り締まりも行き届かず、ほとんど放置に近い状態となっていた。

 しかし、それも(えい)が天下を統一したことで転機を迎えることになった。

 (えい)としては、私塩が大量に出回っている状態を看過するわけにはいかない。南華地方を中心に、私塩業者の取り締まりを強化したのである。

 そしてこの時、私塩売買の首魁であった高遂(こうすい)が捕らえられ、陽安(ようあん)で処刑されたのである。

 高遂(こうすい)の養子という重傑(じゅうけつ)が、復讐のために(てい)王を利用していることは間違いないのだろう。

 問題は、高遂(こうすい)、という名前の持つ影響力である。

 彼は南華の水運業と私塩の両方の総元締めをしていたことからも判るように、この地方でも有数の大侠客であった。その繋がりは各地の顔役や侠客は言うに及ばず、水賊にまで及んでいたはずである。

 白羊策(はくようさく)の尽力で彼らを表面的に抑えたとはいえ、重傑(じゅうけつ)の持つ影響力によっては、それもひっくり返される恐れがあった。

 そして、何よりも白約楽(はくやくがく)が向かっている、龍嵐児(りゅうらんじ)にも既に手が回っていると見て間違いなかった。

「まあ、事ここに至った以上、私も後戻りするわけにはいかない」

 白約楽(はくやくがく)は覚悟を決めた。そして、覚悟を決めると肩の力も抜けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ