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国なき娘~白貂娘異聞~  作者: いちたすいち
第三部 南行編
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第三十三章 白貂娘、事の次第を悟り、益兼に問いただす 3

 彼は驚きついでに、もう一つ質問をした。

「もし(おう)次傅が、この街の防御を任されたなら、どうやって守りますか」

 益兼(えきけん)の質問に、白貂娘(はくちょうにゃん)は少し考えてから答えた。

「そうですね。まず最初は討って出ましょうか」

「ほう、防御に回る側が、いきなり討って出ますか」

(てい)王は、謀反という失敗の許されない行為に出る以上、緒戦で勝利を収めて、自軍の優勢を天下に知らしめようとするはずです」

「それだけ彼らの意気込みも違うでしょう。それでも、討って出るのですか」

 益兼(えきけん)が更に聞いたが、白貂娘(はくちょうにゃん)は直ぐに答えず、益兼(えきけん)の方を見つめた。

「どうかしましたか」

「いえ。大司馬は私の答えようとしている事を、もう知っているのではないですか」

 その質問に、益兼(えきけん)は笑って答えた。

「確かに私も、自分なりにこの街で(てい)王を食い止める方法は考えてあります。しかし、こういった事は、様々な人に聞いた方が良いのですよ。そのことで自分の考えを見直す事もできますし、あるいはもっと良い作戦があるかもしれませんからね」

 その言葉を聞いて、白貂娘(はくちょうにゃん)は改めて益兼(えきけん)の質問に答えた。

「私の考えが大司馬の参考になるか判りません。ただ、謀反という行為には、勢いが重要ではないかと思うのです。その勢いが挫かれるなら、それは後々まで尾を引く事になるでしょう。それに、相手もこちらが最初から篭城すると考えているでしょう。最初の一撃、別にそこで大勝する必要はありません。軽い打撃を与えるだけで、相手に残る後遺症は重いものとなるはずです」

「しかし、口では簡単に言えますが、その軽い打撃を与える事は可能でしょうか」

「さあ、五分五分と言ったところでしょうか。相手のいる事ですから、今の時点ではそれ以上は判りません」

「ははは。期限の決まった戦で、五分五分の戦いができるなら、守備側は勝ったも同じでしょう」

 益兼(えきけん)白貂娘(はくちょうにゃん)の答えを聞くと、満足したようにそう言った。

「さて、そろそろ太子が起きる時間ですね」

「あの、この事は太子もご存知なのですか」

 白貂娘(はくちょうにゃん)は最初から抱いていた疑問を口にした。

「もちろんです。この事を知っているのは、現時点では太子と諌議士、太傅、それに私と(たく)太守、そしてあなただけです」




 白貂娘(はくちょうにゃん)益兼(えきけん)と共に太子の部屋へ行くと、そこには既に白約楽(はくやくがく)がいた。

「諌議士、どうされました」

「太子に個人的なお願いがありまして。少し時間を割いて頂いたのです」

 白約楽(はくやくがく)は、いたずらを見られた子供のように苦笑いしながら答えた。

「そうですか。ところで、例の件ですが、ついに次傅に見破られましたよ」

 益兼(えきけん)白約楽(はくやくがく)を問い詰める事はせず、先程の白貂娘(はくちょうにゃん)との話について、かいつまんで説明した。

「そうか。私から知らせたかったが、やはり気付かれたか」

 太子は少し残念そうにそう言った。

「太子の側に居りながら、今まで気付かなかった不明をお詫び致します」

「なに、諌議士も大司馬も、礼里(れいり)には知らせた方がよいと言っておったのだがな。私が知らせるなと言ったのだ」

「左様ですか」

 白貂娘(はくちょうにゃん)の心の中に、一瞬、自分が信頼されていないのではないか、という考えがよぎったが、直ぐにその考えを否定した。

 しかし、太子はその白貂娘(はくちょうにゃん)の心の動きを察したように、言葉を続けた。

「別に礼里(れいり)を信頼しなかった訳ではないぞ。そちに気付かれなければ、他の者に気付かれる事もあるまいと、そう思ったのだ」

「太子は自分が囮となる事を怖いとは思わなかったのですか」

「判らない。ただ、礼里(れいり)もいるし、諌議士も大司馬もいる。それに父上は必ず兵を率いてきてくれる。私としては、父上の期待に応えたかったのだ」

 白貂娘(はくちょうにゃん)はそれを聞いて、改めて納得した。

「判りました。では、私も太子と陛下のために少しでも役立てるよう、力を尽くします」

「ところで諌議士、そちは礼里(れいり)に用があったのではないのか」

「ええ。後でと思いましたが、今、お願いした方がよろしそうですね」


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