異変〈2〉
6
日差しが差し込んでくる、まぶしいくらいの太陽が悠希を起こした
部屋がとてもきれいだし、お皿も洗ってある
昨日美香が全部やってくれたのだろう・・・
今日は下見の日だ、そうおもうとなぜだか緊張してくる
別に本番ではないのだが・・・
「あ、美香・・・」
悠希が起き上がろうとするとベットの下に美香が気持ちよさそうに眠っている
きっと疲れてねむちゃったのだろう
悠希は美香を起こさないようにしてそーっと準備をした
一枚の置手紙をテーブルに置いておいた
『今日は会議があるので行ってきます』
うそではあるがこれくらいがちょうどいいだろう
悠希は家をでた
駅前
周りをみてみるが謙太はまだきてないようだ
もう11時だから来ていると思ったのだが・・・
「おーい!悠希、ごめん遅れたわ」
どうやらかなり走ってきたようで汗が流れている
「いや大丈夫だよ、そんなに走ってくる事なかったのに」
「だってよ今日はお前がメインじゃん、おれが遅れたらいやじゃんか」
確かに今日は自分がメインではあるが、そこまで言われるとプレッシャーがある
悠希はさりげなく流してさっさと地下鉄に乗ろうとした
「おい待ってよー」
市街
「んで今日はどこに行くんだよ?」
市街についた二人は大通りにでていた
予定としては遊園地なのだが、遊園地は下見に行く必要はない
なので明日行く予定のレストランに行くつもりだった
「んーレストランに行こうかと思ってるんだけど・・・まだ早いよな」
謙太はこちらを見てうなずく
なんとなく11時に来てしまったのだが、正直早すぎた・・・
する事がないので二人は近くにあるファミレスに入った
「いらっしゃいませー2名さまですね、こちらへどうぞ」
案内されたのは一番奥の席
人が思ったより入っていない、店内はガラガラだ
二人は座った
「それじゃあおれはアイスコーヒーで、悠希は?」
「いやおれはのど渇いてないからいいよ」
実はというとあまりお金がない
ここまででかなりお金を使ってきたので、もう財布は空だ
あとは明日の分しかなかった
少したって飲み物が運ばれてきた
「ごゆっくりどうぞ」
店員はマニュアルどおり仕事を終わらせたというよな感じだった
「明日さ、どこでプロポーズすんの?」
待ってましたというように謙太は聞いてくる
決まってはいるがあまりいいたくはない
「まあなりゆき・・・みたいな??」
悠希は謙太の顔をうかがう
「そこはちゃんときめるべきでしょ?!」
それはわかっているが、それだけは他人に言いたくはない
謙太もそれぐらいはわかってほしい
しかしそうはいかないのが謙太だ
「わかった!今決めよう」
・・・そのあと3時間、やることはないシュチュエーションについて話しつづけた
7
黒い服を着た5人はある交差点をあるいていた
周りから見るとかなり怪しい集団である
すれ違う人が全員こちらをみている
向かう場所は・・・
「少し休んでから行かないか?」
一人の男がみんなに問う
全員が立ち止まり一人がつぶやいた
「そうだな、この暑さだし、まだ早い」
5人は近くにあるファミレスに入った
「いらっしゃいませー5名さまですね、こちらへどうぞ」
この暑さでこの服装なのに店員は特に気にせずマニュアル通りに仕事を進める
「こちらになります、お飲み物の注文はいかがいたしますか?」
全員がアイスティーを頼み、沈黙になった
会話一つない
この張り詰めた空気はなんなのだろうか
この重い空気の中口を開いたのはリーダー的な存在の男だった
「まだだいぶ時間がある、どうする?」
同じファミレスにいた悠希は前のほうにいる黒い服を着た5人組に気づいた
謙太は今までどおりひとりでしゃべりつづけている
・・・なんなんだあの集団は?
しかし特に気にせず、また仕方なく謙太の話にもどった
「ありがとうございました」
5人は店を出た
まだ太陽が照り付けている
さっきより暑いのではないだろうか?
しぶしぶ5人は目的地へ向け歩き始めた
一人の男がつぶやいた
「雨がくるな・・・」
あやしい雲が太陽を隠した
8
ようやく謙太の話が終わり、二人を店をでた
時計を見ると5時を回っていた
あのあと世間話をしていたらかなり時間がたっていたようだ
すでに謙太はシュチュエーションの話は忘れている
そういう性格だから仕方ない
「ちょうどいいじゃん、レストランにいくんだべ?」
「うん、そうしようちょっどいいし」
二人はレストランに向かう事にした
ここからは少し道のりがあるのでちょうどいだろう
二人は歩き始めた
30分後
「もうそろじゃない?」
あっというまに違う路地まできていた
とても高級そうな店がいくつも並んでいる
こんなところで食事をするのか・・・そうおもうと悠希はまたプレッシャーを感じた
「あった!ここじゃん」
とても広い敷地
とてもおおきい店だ
外観はとても美しく
ライトアップされた庭は幻想的である
圧倒されそうになるが迷ってはいられない二人は早速中に入ることにした
店内もとても広く、執事が何人もいる
「いらっしゃいませ、ご予約者のお名前は?」
さっきのファミレスの店員とはちがい、温かさがある聞き方だ
悠希は立石ですとつげた
「立石様ですね、かしこまりました。こちらへどうぞ」
案内されたのは完全個室の大きい部屋だった
周りには生け花、ちいさな池まである
謙太もさすがに圧倒されて、声が出ないようだ
「コース料理を選択されていますので、ただいまお運びいたします。少々おまちくださいませ」
下見にきておいて良かった、悠希は心からそう思った
明日キョロキョロなんてしていられない
悠希は自分を落ち着かせた
「おいおいすごいなここは・・・明日大丈夫か?」
ようやく口を開いた謙太だが、まだあたりを見回している
「たぶん大丈夫だよ・・・」
そうはいっているが心の中では緊張の二文字しか浮かばない
「でも今日来ておいてよかったな」
「ああ、その通りだね」
それから少したって料理が次々と運ばれてきた
みたこともない食材に二人は戸惑う
全ての料理が運ばれたところで執事がシャンパンを開けてくれた
あまりお酒は得意ではないが、明日も少しは飲む事になるだろうと思い悠希は少しだけ飲む事にした
「んじゃあ食べ・・・ますか」
あまりの料理の多さに驚いたが、多さとはうらはらに量は少ない
男ならばこれぐらい余裕で食べられるだろう
二人は無言で食べ進めた
「あーけっこうきついなぁ悠希全部食べ終わった?」
「うん一応・・・意外と多いな」
そうなのだ意外と多いのだ
美香は小食なのでこれだけの量食べられるか心配である
いざとなったら自分が余した分を食べてやろう
そう自分の中で決めておいた
「それじゃあ行くか?」
「ああそうするか」
店を出た二人を待っていたのは大粒の雨だった
「うわー降ってるよ」
今日は予報を見ていないので雨が降るなど全く知らない
「お客様、傘をお貸ししましょうか?」
そういって近づいてきたのはさっきの執事だった
手には二本の傘を持っている
「いいんですか?」
悠希が申しわけなさそうに聞く
もちろんといったような顔でその執事はうなずいた
「ありがとうございます、ではお借りします」
二人は執事から傘を受け取った
マニュアルではない執事が一瞬光って見えた
駅前
「これで明日は大丈夫じゃない?」
「うん、たぶんね。それと今日はサンキューな」
悠希は軽く手を挙げて歩き始めた
「おう!頑張れよ」
二人は反対方向に歩いていった
雨はまだ降り続いている
9
いつもの家路についた悠希はまた明日の段取りを考えていた
明日は本当に自分の人生がかかっているといっても過言ではない
そう思えば思うほど緊張感が増してくる
プロポーズはここまで緊張するものなのかと改めて思った
「ガチャ」
いつものように電気をつけ悠希はきがえもせずにベッドに倒れこんだ
「あーー」
深いため息をつく
浮かんでくるのはやはり緊張
失敗した時の事しかイメージできない
その時だった
「ぷるるるるる」
電話が鳴っている
近くにある子機を手にとりすぐ電話に出た
「もしもし」
「あ、悠希か?なにだれた声だしとんじゃ?」
電話の相手は親父だった
そういえば家族にはまだ伝えていない
それどころかここ一年会ってもいないし、電話もしていなかった
タイミングよくこの日にかけてくるとは・・・
「いや、今仕事から帰ってきたから疲れてたんだよ」
「そうなんか、土曜日も仕事か・・・大変だな」
悠希としてはさっさと用件を話して終わらせたかった
「うんまあね、んでどうしたの?」
「いやー母さんがな、悠希と会いたいって言ってたぞ。そろそろいっかいぐらい帰ってきてもいいんじゃないか?」
悠希もそろそろ一回は帰ろうかと思っていたので都合がいい
しかもその頃にはもしかすると美香も連れて帰るかもしれない
親には美香のことは伝えてあるのできっと婚約したといったらびっくりするだろう
「うんわかったよ、休みとったら連絡するわ」
「そうか、母さんに伝えておくよ。あと美香さんとはどうなんだ?」
やはりそこはついてくるのか・・・
「うまくいってるよ!ちょっと今日は眠いから寝るわ、じゃあね」
「お、おい・・・」
強制的に電話を切った
なんか今はそんなこと話している気分じゃない
親父には悪いが今はまだ伏せておきたい
そして再び電話が鳴り響いた
またか・・・とおもいながらだるそうに電話に出る
「もしもしー」
「どうしたのぉ?そんなにだるそうにー」
悠希はとびあがった
「み、美香?!」
「そうだよーどうしたのさぁなんかあった?」
なんともタイミングが良すぎる
また親父だと思ったのでついだるい声をだしてしまった
「いやなんでもない、明日大丈夫だよな?」
話をそらし明日のことを聞く
「う、うん大丈夫だよ・・・どうしたの?なんかへんだよぉ」
くすくすと笑いながらたずねてくるが、悠希はなんでもないと言い張った
明日のことをまた考えてしまったので緊張してきたのだ
心臓がバクバクしている
これ以上美香と話していたら心臓が張り裂けそうなので、明日向かいに行く時間だけ伝えて電話を切った
ついに明日となった・・・
悠希は何度も何度も大丈夫だと言い聞かせてなんとか眠りについた
そして・・・ここからすべてがはじまった
10
「よし、行くぞ」
5人組の男はなんと国会の目の前にいた
「ほんとにこの時間にいるのか?」
「大丈夫だ」
5人の男は国会に忍び込んだ
いったいこれから何をしようというのか
知っているのはこの5人だけだ
「いたぞ・・・」
目の前には国会議員・・・
首相もいる
5人は怪しげに近づいく
「な、なんだ?!お前ら」
・・・そして全てが・・始まった