第7話 仕立て屋の女将と鍛冶屋の悪夢
第七話の投稿です。
お楽しみいただければ幸いです。
装備に関した記述を変更いたしました。
誤字・脱字の報告がありましたので、修正を行いました。
内容に不自然な部分があった為、修正を行いました。
俺はダルシアたちと別れて、ガンテに鍛冶をしている者を紹介してもらうと店へ向かっていた。そんな時、突然目の前にウィンドー画面が出てきてた。
<ティーゲル様に運営より通知とお届け物が来ております。>
そう書かれた文の下に<通知>と<届け物>の二つの選択肢が出ている。とりあえず大通りの脇に寄って止まり、まずは最初に通知の方を読もうと思い<通知>をタッチする。
<この度は迷惑行為の摘発にご協力をして頂きありがとうございます。今回のティーゲル様のご協力に対して、感謝の言葉とささやかなお礼の品を送らせてもらう事とまりました。また、迷惑行為の物的証拠を押さえる為に、お使いになった【2000G】はお礼の品ともにお返しいたします。そして、本来ならば我々運営が行わなければならないにも関わらず、摘発をティーゲル様に肩代わりして頂いたことに感謝ともに心から謝罪いたします。今後はより一層、迷惑行為の未然の防止、摘発及び拘束に力を入れて参ります。>
と書かれていた。読み終わった通知を閉じて今度は、<届け物>をタッチする。
【5000G】
【アイアンインゴット(品質B)×10】
【魔宝石(火属性)】
【爆裂草(品質B)×10】
お礼の中身は結構豪華だった。お金は元金に3000Gプラスしてあり、見たことのないアイテムが二つもあった。俺はその二つの説明を見るため、タッチしてウィンドー画面を出現させる。
<魔宝石(火属性):長い年月の間に魔力にさらされ、その場の環境によって属性が確定した物質。魔力を通すことによって、その属性に合わせた現象が発現する。その為、非常時の助けとして多くのパイオニアが欲する。また、その見た目から装飾品としての価値もある為、高く取引されている。>
<爆裂草:可燃性の植物にして名前の通り、火をつけると爆発する。また、乾燥させて粉末状にすると威力が倍増する。その破壊力は凄まじく、町や都市・多数の人がいる場所での使用は厳禁。>
という内容で、要約すると便利な物と物騒すぎる物を手に入れたことになる。はっきり言って、序盤の初心者に与える物ではない気がする。特に爆裂草。まぁ、この話は一度記憶の片隅に追いやっておこう。
俺は説明画面を閉じてガンテの店を目指すことにした。
しばらくして、北の大通りから南の大通りに移り、相変わらずの人集りの中を縫って進んでいくとガンテの店の看板が見えてきた。
「さて店には着いたが、ガンテはいるかな?さっき来た時は別の人が居たが・・・」
そう言いながら、俺は店の中を覗く。するとガンテの後ろ姿を見つけたが、何やらガンテの前にいてこちらからは姿が見えない人と言い合っているようだ。
「ガハハハッ、いいじゃないかっ。新規の客を得るためにサービスしたって。それで通ってもらえるんだから」
「だとしても、本来の値段から半額で売ってたんじゃっ、採算が合わないんだよっ! しかもっ、それなりに値の張るものばかりっ!」
「そうだとしても先行投資ってもは必要だろう?それに値が張るものばかりと言ったが、半額サービスは初めて来るヤツか、初心者の連中だけでそこまで高いものは買われていないはずだが? まぁ、例え赤字だったとしてもこれから巻き返すから大丈夫だっ! ガハハハハハハッ!!」
「そんな事でっ、商売がやっていけると思うなっ!!」
「ほげらっ!!」
と見事な右ストレートパンチがガンテを直撃し、俺の方に飛んできたので普通に避ける。
そして、ドッシャッ、ドッシャッ、ザザァァァ~と止まる。・・・二回ほど地面に激突して、顔面から地面へスライディングしたが大丈夫だろうか?
そう思っていると、ムクッとガンテが起き上がり「ガハハハッ、中々に良い拳だっ!」と左頬を赤くして、大声で笑いながら立ち上がる。・・・心配は無用だった。そしてガンテは俺に気づき「おおっ、ティーゲルっ。」と笑いかけてくる。
「やぁガンテ、また会ったな。実は相談があって来たんだ」
「そうか。ならここじゃなんだから、店の奥で話そうか」
そう言って俺を店に案内する。そして、店に入ると先ほどガンテと言い合っていたと思われる、紫色の髪に、上が薄着で、下はズボンを穿き、腰に上着を巻いた姿で、腰に右手を当てて堂々と立っている女性がいた。
「んっ? なんだいアンタは?」
「初めまして、俺はティーゲル。今日始めたばかりの新人だ。今回はガンテに相談があってきた」
「そうかい。私はムラサメって言うんだ。ガンテと共にこの店を支えている。・・・うちの者が役に立っているようでうれしいが、すまないねぇ。まだ店は終わっていないから、また後で来てくれるとありがたいんだが」
彼女は申し訳なさそうな困った顔を浮かべて言うが、当の本人が「ガハハハッ、問題はねぇっ!」と言った。
「また店番を頼むぜ、ムラサメ。俺はこいつと奥で話てくる」
「ちょっと待ちなっ! アンタはこの店の主だって自覚はないのかいっ!? 事あるごとに、私に押し付けるんじゃないよっ!?」
「何言ってんだ? この店はお前のものでもあるんだぞ。だから、お前が任せる方が俺としては安心なんだよっ。頼りにしているぜ、ガハハハッ!」
と言って俺の肩に手を置きながら、俺を奥に連れて行く。そして、売り場のほうから「このっ、筋肉バカァァァ~っ!!」という腹の底から出てきたような大声が響き渡る。それに対してガンテは「ガハハハッ、元気だなっ」と言って笑っている。
「それで相談ってのは何なんだ? まさか、また面倒事を見っけてきたか?」
そう言いながら、ガンテは椅子を二つ持ってきて、俺に椅子を手渡して座る。
「いや、面倒事じゃない。というか俺は毎度、面倒事に巻き込まれるわけじゃない」
「ガハハハッ、今日初めて会ったヤツがいきなり面倒事を持ってくれば、そう思われても仕方ないだろうっ」
「はぁ~、まぁそれはいいか。今回は先駆者であるガンテに鍛冶をやっている人を紹介してもらいたくて来たんだ」
「堅苦しい言い方だなぁ。で紹介してほしいと言うが、どういうヤツを紹介してほしいんだ?」
「そうだな。あまり知名度は無くて、それでいて腕があるヤツが頼む」
「腕は良いのに知名度がないねぇ~。難しい注文だな。・・・ああ~、知名度はある意味なくて、腕の良いヤツならいるぞ」
「そうかいるのか。どういううヤツなんだ?」
「ああ~、言葉で説明するには難しいヤツでな。まぁ、今日もダイブインしているはずだから、これから会いにいくか?」
「そうだな。人を見極めるには、直に会ったほうがいいからな。その人の所に案内してくれるか?」
「ああ、いいぞ」と言って、ガンテは立ち上がって売り場のほうに行く。俺もその後に続く。店を出る際に、ガンテはムラサメに「そんじゃ、ちょっくら出てくる」と言ったが、「フンっ!!」とムラサメはそっぽを向く。俺もムラサメに「お邪魔しました」と言うと「ええ、また来なっ」と笑顔を見せた。・・・素早い変わり身だった。
「・・・あいつは、あれでも俺や他の連中を束ねるリーダーなんだ。<仕立て屋の女将>っていうあだ名まである」
そう言って、歩きながらガンテはムラサメについて語り始めた。
「あいつを筆頭に生産者のファミリーをつくってなぁ。結構な有数のファミリーに数えられるまで成長した。だが、あいつの苦労は日に日に増していった。それを見かねて、俺があいつの右腕になって荒事などの面倒事を全部引き受けたんだ」
「・・・なら、俺の相談に乗るべきではなかったじゃないのか? 忙しかったんだろう」
「なぁ~に、忙しいって言ってもそりゃぁ商売の話だ。今の状況が一番、あいつにとっていい状態なんだ。なんせ、以前はああやって声を張り上げることもなかった」
「・・・そうか。まぁ、俺は何も知らない、無関係の人間だ。今の状態が昔より良いなら、帰った後でご機嫌でも取ったらどうだ?」
「ガハハハッ、そうだな。またには、ご機嫌も取らないとなっ。・・・お前も店に来た時は、あいつを気遣ってやってくれ。そして、可能なら友人になって息抜きに付き合ってやってくれ」
「出来たらなぁ。気遣う努力はするよ」
そんな風な会話をしながら、俺たちは歩いていく。
そして、店を出てガンテの後に続くこと数分、南の門が近くに見える所まで来ると脇道に入った。暗い路地を進んでいくと、次第にちらほらと店があった。
「ここいらは、表通りで店を出せなかったり、細々とやりたい連中が店を出す所だ。まぁ、その分利用料が割高だったりするが、それなりにいい取引もできるから、お前さんみたいに利用時の混雑を避けたいヤツにはいい場所だ」
そう説明しながらガンテは進む。そして、少し派手な色の建物に着いた。
「ここがお前さんに紹介する鍛冶屋の【カブキ】だ」
そう言うとガンテは扉を開いて「おぉ~い、カブキ。いるかっ?」と言い、店の主人を呼ぶ。
するとカウンターと思われる場所にある扉の奥から、ギシギシッと床を鳴らしながらこちらに近づいて来る者がいた。
「・・・・・・へっ!?」
俺が間抜けな声を出した理由は、目の前にいるカウンターの奥から出てきた人物が原因だ。
その人物は、スキンヘッドに、筋肉隆々の体、俺と同じくらいの身長、そしてチャイナ服をパッツンパッツンして着て、化粧を施した顔を持つ異形のものがいた。・・・誰か俺の頬を引っ叩いて、この夢を終わらせてくれ。
「あら~、ガンテじゃないぃ~。久しぶりねぇ。今日はどうしたの?」
「ようっ! 久しぶりだなカブキ。今日はお前に紹介したいヤツが居てな」
そう言ってガンテが話を進め、俺に異形の者の視線を移させる。俺はそれに気づき、いち早く現実逃避をやめる。
「ふ~ん、中々いい体をしているわねぇ~。お名前は?」
「あ、俺はて、ティーゲルだ。今回は武器の修復を、お、お願いしに来た」
「あら~、そうなの。じゃ、なんだから店の中に入ってちょうだい」
そう言ってガンテと俺を店に案内するカブキ。
「それじゃぁ~、武器のほうを見せてもらっていいかしらぁ?」
「ああ、もちろんだ」と言って、装備画面から二つの武器を外し、実体化させる。それをカブキに渡す。
「ん~、確かに耐久値が結構減っているわねぇ。まぁ、でもこれぐらいなら、すぐに終わるわ。あっ!もし素材があれば、修復じゃなく別の武器に変えることができるけどどうするぅ?」
「おいおい、ティーゲルは始めたばかりの初心者だぞ?武器の改良に必要な素材を持っている訳ないじゃないか」
そうガンテが横やりを入れるが、俺はそれに心当たりがあった。
「いや、なりそうな物をもっている。ちょっと待ってくれ」
そう言って、俺は装備画面の<アイテム>項目をタッチして、素材を実体化させて取り出す。
<【ウルフの皮】×2>
<【ラージウルフの皮】×2>
<【骨】×4>
<【アイアンインゴット】×10>
「あらっ、中々な良い素材じゃない。これなら良いものが作れるわ」
「なら、お願いする。それと料金はいくら位になる?」
俺は素材を渡しながら、必要になるはずのお金の事を聞く。
「そうねぇ。ん~、まだどういうものになるか分からないから、出来てから決めましょう」
そう言ってカブキは奥のほうに戻っていく。すると、しばらくして金属を叩く音が聞こえてくる。
「カブキはあんなふざけたなりだが、腕は保証できる。まぁ、お前も最初に絶句しただろう。そのおかげで、いくら客を紹介しても増えることがねぇ。まったく、困ったもんだぁ。しかも、紹介した俺にわざわざ文句を言いに来るヤツまでいるからなぁ」
とガンテにしては珍しく溜め息をはく。
「そういやぁ、あの素材の数はなんだぁ?初心者じゃぁ、あれだけ集めるのはかなり時間が掛かるはずだが」
そう聞かれたので、俺は【平穏の森】での事と運営からのお礼の事を話した。
「あぁ~、そいつは中々スリルある冒険をしたんだな。・・・何というか、期待どおりだったと思うべきか、悩む所だな」
とマチルダと似た顔をする。俺にとっては普通の事なので、とても心外だ。
そうやって雑談をして待ち時間をつぶしていると、奥から聞こえていた音が無くなり、また床を鳴らしながらカブキが出てくる。
「お待たせぇ~、出来たわよぉ~」
そう言ってカブキが出来た武器を見せてくれた。
<【飢狼のロングソード】:ウルフの骨を十字型の中心軸にして、質の良い鉄を使って刃と柄、鍔を形成しているので、攻撃力と耐久値が倍増している。柄はウルフの皮を巻き、滑り止めの役目と持った時のフィット感を自然にする効果を出している。>
<性能:【攻撃能力:B】、【耐久力:250】、【装飾:B】、【特殊効果:飢狼の威厳】>
<【飢狼のグレートアックス】:ウルフの骨を中心軸にして、質の良い鉄を使って刃と柄を形成しているので、攻撃力と耐久値が倍増している。柄にウルフの皮を巻き、滑り止めの役目と持った時のフィット感を自然にする効果を出している。>
<性能:【攻撃能力:B】、【耐久値:200】、【装飾:B】、【特殊効果:飢狼の威厳】>
「ほうぉ、中々な出来だな。しかも、特殊効果付きとはなぁ。これならいくらでも貰い手は出てくるだろう」
「そうねぇ。自分でも過去に作った武器の五本の指に入ると思っているわぁ」
「確かに、いい出来の武器だ。しかし、特殊効果というのは何なんだ?」
「特殊効果ってのは、製作時に使った素材によって、たまに付属される補助能力だ。詳しく知りてなら、特殊効果の部分をタッチしてみな。その効果について説明が出てくるはずだ」
ガンテに言われてタッチしてみると、新たな画面が出てきた。
<【飢狼の威厳】:【グレート・ウルフ】の毛皮を使用した事で、グレート・ウルフの畏怖が剣に憑依して生まれた能力。戦闘時、自身より格下の相手にプレシャーを与える。>
「ほうぉ、中々の能力だな。初期のプレイヤーが持つ物としたは、一級品だぞ」
「そうねぇ~。特殊効果って必ず付くって訳はないけど、付いたからと言って良いものだと限らないから、運が良いのねティーゲル君はぁ~」
ガンテとカブキの言葉を聞きながら、俺もこの効果が付いたのは、ひとえに幸運だと感じた。
「ありがとな、カブキ。お前に頼んだのは、どうやら正しかった様だ」
「いえいえ、お気になさらずぅ~。これも顧客ゲットの為だからぁ~」
「確かになっ。お前はいつも客に逃げられるもんなっ。 ガハハハッ!」
「笑ってじゃないわよっ、ガンテっ! ほとんどのお客は、あなたを介して来るんだからっ、少しは連れてくるお客も考えてよぉ~」
「ガハハハハッ!! すまん、すまん。今度から、そういった事も考慮するわっ」
それぞれの感想を言った後に雑談を終えると、カブキが「さてっ」と前置きの言葉を言う。
「この武器の制作費だけど、結構いい出来になちゃったから高く値をつけるところだけど、今回は依頼料の無しでいいわぁ」
「どうしてだ?これだけの物なら、惜しむことなく全財産を渡したって文句はないが」
「まぁ~、そうなんだけどねぇ。でも、あなたは素材の持ち込みで依頼をしたから、材料費はないしねぇ。ん~じゃ、こうしましょう。今回だけ初回のサービスにしてあげる。だから、これからもうちを利用してくれると嬉しいわぁ」
「いいのか? 初対面にそんなに親切で? 製作費だけでも払うが」
「いいのよぉ。言わば、先行投資の様なものなんだから。それにさっきも言ったけど、あくまで今回限りのサービス。今度からはきっちりと料金をもらうからねぇ」
とカブキはウィンクをする。・・・はっきり言って、あまり見たくないものだった。
「それと今度からも素材の持ち込みはありだから。その分、材料費は引いてあげる」
「分かった。有難くもらっていく」
そう言って、俺は二つの武器を受け取り、装備した。
そして、俺とガンテはカブキの店を出ていく。後ろから「また来てねぇ~」とカブキが見送ってくれた。そして、表通りに戻ってきた。
「よかったなっ。良い武器を作ってもらってっ」
「ああ、本当に良かった。最初はあの姿を見て不安だったが、人は見かけによらないな。紹介してくれて、助かったよガンテ」
「何いいってことよっ。そんじゃ、俺は店に戻ってムラサメのご機嫌を取らなきゃならないから、またなっ」
そう言ってガンテは手を振りながら、店のほうに歩いていった。その後ろ姿に「ああ、またな。」と言って俺も手を振って見送る。
「・・・さて、武器の修復、いや新調が終わったからダルシアたちの所に戻るか」
そう言って、俺はダルシア・ファミリーの拠点に戻ろうとした所で、<空腹値が限界値にきています。食事をしてください。>というウィンドー画面が出てきたので、俺は空腹システムがあった事を思い出して、まずは食事を済ませる為に食事ができる所を探し始める。
第七話、いかがでしたか?
ガンテの再登場とガンテに関わる人物の登場、そして鍛冶屋の漢女ことカブキの登場でしたが、またもぶっつけ本番のように話を入れたので、少し文章が変な感じかもしれません。その時は誤字・脱字の知らせと共に教えていただけると助かります。
それではまた次回にお会いしましょう。