第3話 降り立つティーゲルと犬耳と筋肉
第三話の投稿です。
いつも通り、楽しんでいただければ幸いです。
内容の改編を行いました。
「それでは、続いて初回特典としてアイテムをお渡しします。」
そうファレストが言うと<アイテムが届きました。受け取りますか?>というウィンドー画面が出てきて、<はい>と<いいえ>の選択肢も出てくる。俺は迷わず<はい>を選択すると<ポーチへ収納しました。>と知らせてくれる。
「アイテムの確認は、装備画面を開いてアイテムの項目を選択すると見ることができます。また、装備画面は手を横に振っていただければ開きます。」
ファレストにそう言われて、俺は手を横に振ろうと腕をあげる。すると、俺の目に薄い青色の袖とその上に革製の籠手が付いた腕が映る。その時になって俺は自分の姿が変わっていることに気づき、自身の姿を改めて見る。革製のグローブ・胸当てに、その下に着た薄青の長袖シャツ、下半身の革製のズボン・ブーツを身に着けていた。
一時、自分の姿を観察していたらファレストの顔が視界に入ったので顔を向けると、こちらを微笑ましいものを見るような笑顔で見ていたので、俺は目をそらし、咳払いをして素早く右腕を横に振った。
左端上に<ティーゲル:Lv1>と表示され、その下に<武装・ポーチ>と複数のメニューが縦に並んだウィンドー画面が出現した。左側に<武器1・武器2・頭・胴・腕・腰・足・サブ1・サブ2>という順に縦で装備項目が並べられ、装備品名の下に<耐久値:>となっている。真ん中には<ポーチ>という題名を一番上に4つの空白の一覧が並んでいて、右側に<ステータス・スキル・アイテム・服装・魔術>という項目のメニューが縦に並んで、右端下に<所持金:2000G>とある。それを確認したことを見計らったのか、ファレストが説明を始める。
「ポーチは、すぐに使いたいアイテムをセットしておく事ができ、武装や服装によってポーチ数が変化します。服は<上着・ズボン・下着・装飾品>を装備とは別に装着する事ができます。魔術は現在、習得しているものを確認することができますね。」
俺はファレストの項目説明を聞きながら、アイテムの項目をタッチして開き中身を見る。
<HP丸薬>HPが少量だけ回復する丸薬。薬草の苦みがそのまま残っているため、まずい。(×10)
<保存食>空腹を和らげ、体力の上限を一時的に上げるが、まずい。(×6)
<MP丸薬>MPが少量だけ回復する丸薬。薬草の苦みがそのまま残っているため、まずい。(×10)
<砥石>武器の切れ味をある程度回復させる(×5)
俺は手に入ってアイテムを早速、ポーチにセットしていく。
<1:HP丸薬>、<2:MP丸薬>、<3:保存食>、<4:砥石>
「セットしたアイテムは、左側にあるポーチを触ればポーチ覧の画面が出てきますので、アイテム名に触れれば使用できます。装備・ポーチ画面を閉じる時は横にスライドしていただければ、画面が消えます。」
ファレストに言われ、装備画面を横にスライドして消し、腰の左側を見るとポーチがあり、触ると目の前に4つのアイテムの名前がある画面がでてくる。中身はセットしたばかりなので、すぐに画面を横にスライドして閉じた。
「また、所持金も初回特典ですね。・・・では最後に諸注意を述べさせいただきます。まず、ティーゲル様は二十歳以上なので自動的に成人規制が解除され性行為ができるようになりますが、基本的に相手へ申請するかティーゲル様自身にきた申請を受理する必要がありますのでご注意ください。また、成人規制には血しぶきといった流血表現やグロテスク表現の緩和が含まれているので、その表現に慣れない場合は再度のダイブイン時に規制の再設定ができます。」
「わかった。覚えておこう。」
「・・続いて、D・L・Oの武器やアイテム、スキル、モンスターなどの種類やフィールド、システムはAIによって自動的に生成されるので我々運営はプレイヤーの皆様が発見した段階で告知いたします。また、スキル選択の時に申しましたが皆様の要望によって増える事もあります。しかし、スキルは技ではなく技術でなくてはいけないのでお気をつけください。魔術のみ、技として要望することができます。」
「ほう。AIがゲーム自体の調整を行っているのか。」
俺が感心したように言うと、ファレストは笑顔を浮かべて答える。
「はい。現にサービスが開始したばかりの頃は、パーティーは初めからありましたが途中から大多数のプレイヤーを束ねる<ファミリー>という新システムが生まれました。ですので、我々運営は基本的にAIに全てを任せ、時には手伝いますが、ほとんどは皆様の中に紛れて共に楽しみながら、お手伝いと迷惑行為の発見・摘発、罰則を行っています。ですから、またあちらでもお会いする事もできますし、ともに楽しく遊ぶこともできます。」
「そうか。・・・そういえば、各国に支部を置くことで、世界中の人々が共にプレイできることがこのゲームの特徴で、醍醐味だと聞いたが言葉の障害はないのか?」
「その心配はありません。AIによって喋る言葉もチャットの文やアイテムなどの説明文もその相手の母国語に変換されるので、意思疎通は安心して行えます。」
「分かった、説明ありがとう。」と俺は言った。
「それでは、これでチュートリアルを終了させていただきます。何かご質問があれば、お答えしますが。」
「魔術はどう使えばいいのかな?」
「魔術は、技名を言えば発動時間が経過した時点で使えます。発動時間は足元に魔法陣が出てくるので、それで分かります。また、発動時間は魔術のLvやその効果・用途で変わるのでご注意ください。」
「わかった。じゃぁ、次に俺だけではなくプレイヤー自体に関係ないことで完全なお節介なんだが、迷惑行為の摘発は運営の皆さんが行うとしても、人数が明らかに足りないと思うのだが大丈夫なのか?」
「ご心配、ありがとうございます。確かに、我々運営だけでは無理ですが、そこはAIが監視するので、AIからの報告とプレイヤーの皆様からの<GMコール>でユーザーアカウントの停止を勧告・実行いたします。ですので、ティーゲル様自身や周りの方々に何かありましたら<GMコール>してください。」
「わかった。いらんお節介を焼いてすまないな。それじゃ、質問はこれで終わりだ。」
「わかりました。それではこれよりスタート地点へ転送いたします。・・・では準備ができましたので存分にD・L・Oの世界をお楽しみください。」
「ああ、言われなくてもやるからには楽しむさっ!ありがとうな。」
俺はファレストにそう答えた。するとファレストは光に包まれる俺に近づいて口を開く。
「・・・・ティーゲル様、またお会いしましょう。それまでお元気で。」
転送される、その瞬間に聞こえ見えたファレストの笑顔と言葉に俺は「ああ、いつかまた。」と返したが、ファレストに届いたかは分からなかった。
光に包まれた事で俺は目を細めたが、すぐに眩しさは無くなり目を開いて俺が最初に見たのもは周りにいる大勢の人だった。しばし大勢の人々とその喧騒や熱気に圧倒されていたが、次第に呆然と立っていた俺にどうしたのかと周りの人たちが見てくる。それに俺はすぐ気づき、咳払いをしてその場を離れようと人集りの外を目指し歩き始める。
ガヤガヤとした大勢の声に混じって「そこの大きい人っ!ちょっといいかい?」という声も聞こえる。
なかなか賑わっていると改めて思いながら、目に映る街並みをどこから見て行こうかと考えながら俺は足を進めていく。
「おいっ!アンタだよっ!アンタっ!」
と俺の腕を掴んでくるヤツがいたので、俺は自分を呼んでいたのかと思いつつ振り返る。
「済まないな。俺だとは思わなかった。」
そこに立っていたのは、俺より年下にしか見えない鉄製の軽装備の青年が少し不満げな顔でいた。
「まぁ、いいけど。よしっ!じゃぁ、本題のこれをアンタにあげよう。」
すぐに笑顔になって、そう言う青年は俺に羊皮紙の巻物ような物を渡してくる。
「これは?」と俺が首をかしげながら巻物を開くと巻物が光り始め、目を背け眩しさがなくなった所で目線を戻すと巻物は無くなていた。すると<リリースのマップが更新されました。>というシステム音声が頭に響き、ウィンドー画面が出現した。
「それはこの都市、通称<始まりの町:リリース>のマップだ。マップ画面はお馴染み横スライドで都市に入った時点で出せるし、閉じることもできる。」
「運営の人か?」と俺が尋ねると。
「いや、違うよ。俺はプレイヤーで運営の依頼でこのマップを配布して回っているんだ。ほら、他にも俺と同じようにやっているヤツらいるだろう。」
そう青年は言うので、広場を見ると青年と同じように話しかけている者たちがいる。
「そうか、なら有難くもらっていくよ。依頼、頑張れよ。」
俺はそう言って、青年から離れようとすると「案内もするけど、いいのか?」と言ってくるので「ああ、自分で見て回るのも楽しいからな。」と言って手を振って歩き出す。「俺はここにいるから、何かあったら来いよっ!」と同じく手を振って青年が見送てくれる。
「あっ、名前を聞いてなかったな。」と今更ながら気づいたが、初めて会った人に「そうそう再会することもないだろうぉ。」と呟きながらマップを出して道角を曲がるとドンっ!と何かにぶつかった。
「あっと!・・危ないなぁ。なん・・・だ」
俺がマップを閉じながら、ぶつかった何かを確認しようと目を向けると
「いった~い!どこに目ぇつけてのよっ!アンタっ!危ないじゃないのよ!」
そう言って俺に非難の目を向け、非難の言葉をかけてくるのは小柄でクリーム色の髪に〝完全な犬耳に、スカートから出ている尻尾〟がある少女だった。
「・・・あ、ああぁ、済まなかった。大丈夫か?お嬢さん。」
驚きながらもそう謝りながら、俺は少女に手を差し伸べる。彼女は俺の姿を見て一瞬ビクッと体を引いたが、フンっと顔を背けながら俺の手を掴む。俺は苦笑しながら彼女を引き上げて立たせる。
「まったくっ!ちゃんと前を見なさいよねっ!・・・まぁ、手を貸してくれたから帳消しにしてあげる。」
「ああ、本当に済まなかった。ケガはなかったか?」
「ええ、大丈夫よ。」
「そうか。それなら一安心だ。次からは気をつけて歩くよ。君も気をつけてな。・・じゃぁ、俺はもう行く事にするから、これで。」
そう言って俺はその場を後にしようと歩き出す。すると・・・「ちょっとまちなさいっ!アンタっ、名前はっ!」と止められ、「ティーゲルだが、他になにか用があるのか?」と振り返って尋ねると
「フ~ン、ティーゲルっね。じゃぁ、聞くけどアンタは第一陣?」
「いや、違う。俺は第二陣のプレイヤーだ。それと相手に名前を聞くときは、自分も名乗るが礼儀だと思うのだが?」
「・・・私は、<テル>。アンタと同じで第二陣のプレイヤー。言っとくけど、これでも二十歳の大人なんだからね。」
「いや、そこまでは聞いていない。」と言いながら、テルの姿を改めて見る。190に近い身長の俺に比べて、大体160越しているか、いないかぐらいの身長、慎ましやかなちょうど良い大きさの胸に、ほっそりとした体型が特徴の体。現代の日本人平均身長の170に比べると低いので、テルはこれまでそういった扱いを受けたのだろうと思いながら、テルにもう一度質問する。
「それでテルさん。あなたは俺になんの用があるのかな?」
「・・・一緒にこの町を見て回らない?」
一瞬の沈黙のあと、そう首をかしげながら提案してくるテルは見かたによっては可愛く見えるが、俺はそれよりも初対面の人間に同行を頼んでくるテルに不信感と警戒心を抱いていた。
「・・・俺も始めたばかりだから、案内がほしいなら広場のほうに行って第一陣のプレイヤーに頼むか、依頼でこの町のマップを配っている人がいるから行って来たらどうだ?」
俺が広場のほうを指さしながらそう言うと、「マップならもっているわ。」とテルが答える。
「じゃぁ、どうして見ず知らずの俺と行動を共にしたと?」
「そんなの決まってるじゃない。アンタと一緒のほうが変な虫が寄ってこないと思うから。それにアンタは先、私とぶつかったけどちゃんと助けてくれたからね。ある程度は信用できると感じたわ。・・・それに私の人を見る目は良いからね。なにより私という美女とひと時でも共に過ごせるのだから男として役得でしょ。」
自意識過剰だなぁと心内で溜め息を吐きながら、どうするか考えているとふと時間が気になって装備画面を開いて見ると右端の上にデジタル数字で9時前と表示されていた。深雪たちとの待ち合わせまでまだ時間があるので、テルに付き合うのもいいかと結論した。
「わかった。一緒に見回っていいが俺にも予定があるから、長くは付き合えないぞ。」
俺がそう言うと、テルは「OKっ☆」とウィンクして横に並んでくる。
「それじゃぁ、まずどこからみて行こうか?」とテルが言うので、俺はマップを出して目的地を決める。
<リリース>の町は、俺が転送された広場が中心部となっていて、それを基点にして東西南北と壁に沿って大通りが存在し、それぞれの方角に門がある六角形の都市となっている。北に位置する左の町は<ファミリー街>と書いてある。右の町は<ギルド街>と書いてある。そして、南に位置する左右の町は<生産街>なっている。
「今、俺たちがいる位置が南東よりだから<生産街>を見て回りながら、門の方向に行かないか?」
「どうして、門のほうに行くの?普通はそのまま、北のほうに戻って<ファミリー街>や<ギルド街>に行かないの?」
「言ったろ、俺にも予定があると。俺は門の外に出て戦闘で武器の具合を確かめたいのさ。」
「なに、その戦闘狂そのままな行動と予定は?」とテルは呆れた表情を浮かべて見てくる。
「まぁ、これでも現実世界で戦争をやって生き残ってきた人間なんでなぁ。自分の得物の調子ぐらいは早い内に知っておくのが戦いで生き残れる一つの道なんでね。・・・なんて言ったが、ただの癖でしかないがな。」
俺がそう言うと、テルは真剣な表情に顔を切り替えて「・・・アンタ、どこの国の出身なの。」と尋ねてくる。
「出身は日本だ。色々あってなぁ、傭兵としてある国の内戦で戦っていただけさぁ。」
俺が苦笑しながら言うとテルは、「・・・深くは聞かないであげる。」と顔を前に向けながら言って俺より前を歩く。そんなテルに、「気を遣わせて、悪いなぁ。」と言うと「気にしないで。」と返してくれた。
「それじゃ、アンタが言ったとおりに<生産街>を見て回って、門で別れましょうか。」
「ああ、そうしてくれるとありがたい。それと俺の名前はティーゲルだから、アンタじゃなくてティーゲルと呼んでくれ。」
「ええ、わかったわ。ティーゲルっ☆じゃっ、私のこともテルと呼んで。」とまたもウィンクをしながらテルは答える。
「・・・わかった。・・・そういえば、テルはどうして犬耳姿になっているんだ?」
俺がそう言うと、テルは胸を張って自信満々の顔で答える。
「それは、私が一度でいいからファンタジーの住人になってみたいと思っていたからよ。その中で私が好きな動物の特徴を持つ獣人に合わせた調整をしたから、今の姿になったのよ。」
「そうか。まぁ、自分のモチベーションがそれで上がるなら、それも一種のプレイスタイルなんだろうなぁ。」
そんな話をしながら、生産街を見て行くと多くの人が通りを歩き、ある者は鍛冶屋で武器や防具を見ていたり、注文をしたりしている。他にも食材や素材を売っている店や日用品、家具、装飾品などを売っている店も見受けられる。しかし、大通りから見えにくい細道にも店が見えるので一概に表の店だけで身支度を整えるは惜しいかもしれないと俺は思った。そんな俺の横には、表通りの店を興奮気味で興味深々に見るテルは尻尾がもの凄い勢いで左右に揺れている。俺は(よく再現されているなぁ。)と微笑ましく思いながら苦笑を浮かべる。
「あっ!あれ、服屋よっ!チュートリアルで聞いた時から行ってみたかったのよね。」
と言って骨を見つけた犬並みにまっしぐらに走って行った。その速さは車の速度を越えているのではないかと思えるぐらい早かった。
「わぁ~、結構いいデザインなものばかりね。ねぇ、そう思わないティーゲル。」
「ははは、俺に言われてもなぁ。生憎、どれを着てもきれいだどか、可愛いとしか言えないぞ。」
俺が苦笑しながら、そう言うと「なな、なにを言ってるの?!」とテルは顔を真っ赤にしてうろたえる。
すると店の奥から「い~やぁ~、初々しいお二人さんだね。」と言ってくる人物がいた。
「しかも、大小のお似合いペアときたもんだ。いいねぇ、青春を謳歌してる若者はっ!」
そんな事を言いながら、出てきた男は身長が大体170ぐらいの全身筋肉の鎧で覆われた、ドワーフ風の立派な髭を生やした〝漢〟だった。そして、その男にテルがもの凄く赤面した状態で食って掛かる。
「私とこいつはっ、まったくの赤の他人っ!たまたま、出会って行動を共にしているだけだからっ!勘違いしてんじゃっないわよっ!」
と男にぐるぐるパンチをしながら叫んでいるが、はっきり言ってほとんど効いているようには見えない。実際に男・・・親ッさんが合いそうな風格だから親ッさんと呼ぼう。実際に親ッさんは「ガハハハッ!そう恥ずかしがるなっ!嬢ちゃんっ!」と笑っている。
俺はその二人を見かねて、テルを後ろから両腕を取り押さえて「テルの言っていることは本当だ。親ッさん。」と言う。
「んっ?そうなのか?じゃっ、悪かったな、嬢ちゃん。お詫びに好きな服一式を一つ半額でやるよ。」
そう言われた瞬間、テルは動きを止めて「ほんとっ?」と真剣な顔で親ッさんに聞き返した。そんなテルに「ああ、男に二言はねぇ!初回サービスという事にしといてやるよ。」と親ッさんは豪語した瞬間、テルはまたも目にも止まらぬ速さで店へ入っていた。
「だから、これからうちの常連になってくれっていねぇし。・・・なんというか一直線な娘だなぁ。お前さんも気苦労が絶えないじゃないかぁ?」
そんな風に、店で次々に商品を物色するテルを見ながら俺の肩をたたきながら労って溜め息を吐く。
「親ッさん、言ったはずだ。俺とテルは会ったばかり、確かにテルのテンションの上がり下がりに合わせていると疲れると思うが、何分そこまでの付き合いではないからなぁ。・・・見ている分には面白い。」
「ガハハハッ、そうか。しかしなんだ、先から親ッさんと呼んでいるがどこかで会ったことあったか?」
「いや、なんとなく親ッさんが合っていると思ってなぁ。気を悪くしたか?」
「いやっ!よく仲間や常連からも同じ理由で呼ばれるよっ!ガハハハッ!・・・そういやぁ、自己紹介がまだだったなぁ。俺は<ガンテ>って言うんだ。」
そう言って、<ガンテ>は俺に手を差し出し握手を求める。
「俺はティーゲル、よろしくなガンテ。」
と言ってガンテと同じく俺は手を出してガンテの手を握り、握手して小さく笑い合う。そうしていると買う服を決めて金を払ったらしいテルが「~~♪。いい買い物ができたわっ♪」と言って戻ってきた。
そして、握手し合う俺たちを見て「・・・なにしてるの?男同士で暑苦しい。」としかめっ面を浮かべて、わざとらしく体を引く。
「なにっ、嬢ちゃんは可愛いと話し認め合っていたのさっ!」とガンテは豪快に笑う。その言葉を聞いてテルはまたも赤面になり「ななっ、何を言ってっ!・・ん~っ!!人をからかってっ!」とガンテと俺にぐるぐるパンチをしてくる。
「それじゃぁ、俺はまだ店があるからな。ここで戻ることにするわぁ。じゃないとどやされちまうからな。」
俺は「ああ、またな。」と言って、まだ暴れるテルを引きずって行こうとすると「あっ、忘れてた。」と言ってガンテが戻ってくる。
「俺の<パートナーズ・カード>を渡しそびれていたぜ。ほらよっ。」
とガンテが言うと<ガンテ様よりパートナーズ・カードが送られてきました。受け取りますか?>とウィンドー画面が出てきて<はい・いいえ>の選択肢が出る。<はい>を選択しようとした所で横のテルが静かになっている事に気づき目だけを動かし様子を窺うと、俺と同じくガンテから送られてきた<パートナーズ・カード>をどうするか考えている様で、怪しむようにガンテを窺っている。
「これは?」と目線をガンテに戻して俺は聞く。
「んっ?なんだぁ、お前たちは第二陣なのかぁ。そりゃぁ、知らないよな。<パートナーズ・カード>はいわば知り合った奴らとの通信やチャットのやり取りをするための交換端末または登録端末だ。使うには耳を触ることで操作画面が出てくる。だから、怪しむ必要はねぇよ。嬢ちゃん。」
「私にはテルって名前がある。それに私は二十歳よっ。嬢ちゃんじゃない。」
とテルは不満気そうな顔で静かに言いながら、ウィンドー画面を閉じる。ガンテが満足そうな顔を浮かべているので受け取ったと思われる。するとガンテのほうにもウィンドー画面が出てきて何やら操作をして閉じる。俺も右に倣えのように<はい>を押す。すると<受け取りました。>と出て、その次に<ガンテ様にパートナーズ・カードを送りますか?>と出てきたので<はい>を選択する。そして、またガンテの目の前に画面が出てきて笑顔で操作し、<ガンテ様がパートナーズ・カードを受け取りました。>と出てくる。
「それじゃぁ、何か相談や注文があればいつでも連絡してくれ。」
と言って今度こそ、ガンテは店に戻っていった。俺は「じゃぁ、行こうか。」と言ってテルを促す。
「・・・いい人だったわね。少しカンに障るけど、服も良いものばかりだったし通ってもいいかもね。」
と目つきは鋭く、不機嫌そうだがうれしそうに口元が微笑んでいるので、本心は喜んでいるのだろう。
そう思いながら、テルと一緒に歩いていると大きな門が開いた状態であるのが見えてきた。
「テル、門に着いた。ここでお別れだな。」と言うとテルは顔を下げる。「どうした?」と聞くと、「そうね、ここまでありがとっ!」と笑顔で言ってくる。すると<テル様からパートナーズ・カードが送られてきました。受け取りますか。>とウィンドー画面が出てきたので、テルのほうを見ると彼女は少し不安そうな表情で俺を見ている。
俺は、ウィンドー画面を操作してテルのカードを受け取り、自分のカードを「ありがとな。」と笑顔で言いながら送り、テルの頭を撫でる。ふっわふわした気持ちいい髪で、少し長めに撫でていると<テル様がパートナーズ・カードを受け取りました。>と返ってくる。そして、手を頭から離し俺は門のほうに歩き出す。しかし、一旦止まって俺は振り返える。
「テルっ!また会おうっ!いつでも連絡してくれっ!」
と俺が言うとテルは、あっかんべーとした後に俺といた短い間に見せなかった飛び切りな笑顔を浮かべて「かならずっ、連絡するからっ!」と町の中に走っていた。それを見送り、装備画面を開き時間を確認すると丁度10時を過ぎたあたりだったので、まだ時間には余裕があるなと思いながら俺は向き直して門の外を見据える。
「さてっ!一年ぶりの戦いかぁ、体が鈍くなっているはずだからリハビリも兼ねて深雪たちとの待ち合わせまで慣らしておくかぁ。」
そう言って、俺は南の門から外に出て目の前に見える森を目指す。
第三話、いかがでしたか?
元々はガンテの親ッさんは構想には居なかったのですが、テルとの町巡りで一つイベントを入れたかったので、登場しました。親ッさんとの絡みはどうだったでしょうか?
それでは、誤字・脱字や感想があればコメントでご報告ください。では、第四話でまたお会いしましょう。