表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
訳あり元傭兵のVRMMO  作者: 大佐
19/22

第18話 二度目の道具屋と魔のねぐら

 お待たせしました、第18話の投稿です。

 楽しんで頂ければ、幸いです。

 とりあえずは、びしょ濡れになったティファナを何とかする為に、現地点から一番近い俺の拠点に案内する事になった。


 「着いたぞ。この中で焚き火でもして、服を乾かすといい。ちなみに、代えの服を持っているか?」


 「はい、持っています。しかし、すごい所に住んでいるんですねぇ。・・・クシュっ!!」


 「ほら、火を付けてやるから来い」


 俺はそう言いながら、ツタを掻き分けて奥へ進む。その後をティファナもついて来る。


 奥の広場に着き、朝に消した焚き火に追加の枝を並べて火打石で<カンッ! カンッ! カンッ!>と鳴らしながら火花を散らす。すぐに枯れ草に火が付いたので、火打石を仕舞い込んで外へ出ていく。


 「ティーゲルさん、もう出るんですか?」


 「そりゃぁ、女性のティファナが服を脱ぐんだ。男である俺が、ここにいる訳にもいかないだろう。服が乾いたら出てこい、外で持っているからよ」


 「分かりました。本当に、最初から最後までありがとうございます」


 そうお礼の言葉を言いながら、出ていく俺の背中に向けてお辞儀をあする。そんな言葉に、俺は振り向く事なく、「別に気にする事じゃない」と返した。


 <キャンっ!>


 洞窟から出て数分が経った頃、俺は一頭のウルフを蹴り上げて所だった。なぜ戦闘中なのかと言うと、洞窟の入口から少し離れた位置で待っていたら、茂みからはぐれと思われるウルフが威嚇しながら出てきた。最初はすぐに居なくなると思ったが、俺に睨みをきかせながら近寄り、襲ってきたので蹴り上げるという状況になった。


 そして、倒れたウルフの首に剣を突き刺す。鳴き声をあげる事もなく、すぐにウルフは絶命した。その後は、ウルフを解体して素材を収納する。


 素材の収納を終えて立ち上がると、後ろから「ティーゲルさんーっ!」と呼ぶ声が聞こえてきたので後ろへ振り向く。そこには防具の下に着ていた服が変わっているティファナがいた。


 「着替えは済んだ様だな。・・・服は乾いたのか?」


 「はい、おかげさまで。それより、何していたんですか?」


 「なに、大した事じゃない。それよりも、これから君はどうするんだ?」


 そう聞かれたティファナは、少し顔を下げて考え込む。しかし、すぐに顔を上げた。


 「一応、目的は果たせたので街に戻ろうと思います。・・・そういえば、ティーゲルさんは何か用事があったんじゃないんですか?」


 「あ~、忘れていたなぁ、俺も街に戻る所だったんだ。なんなら、一緒に戻るか?」


 「そうですね、そうしましょうかっ♪」


 そういう事で、ティファナと一緒に【リリース】へと向かう事になった。道中は特に何も無く、十分ほどで森を抜け、道沿いに進めむとリリースが見えてきた。


 「街に入ったら、ティーゲルさんはどうするんですか?」


 「買い物と知り合いへの顔見せ、気が向いたら【ギルド】に寄って依頼の確認でもするつもりだ」


 「そうですか、私は友達に連絡を取って今後の予定を決めようと思います」


 「なら、門の所で別れるとしようか」


 「そうですね。あっ、そういえばティーゲルさんに私の【パートナーズ・カード】を渡していませんでしたよね。ちょっと持ってもらえますか」


 そう言って、ティファナは立ち止まってウィンドー画面を開いて操作している。急ぐ予定もないので、待つこと数十秒。俺の目の前に<ティファナ様より、パートナーズ・カードが届いています。受け取りますか?>と書かれた画面が出現する。慣れた手つきで受け取りを済ませ、すぐにティファナへ自分のパートナーズ・カードを送った。そして、ティファナは俺が送ったカードをすぐに受け取る。


 「これでいつでも連絡が取れますね。フフフッ、やっぱりこういうやり取りは楽しいですね♪」


 「そうか? 俺はそう感じた事はないな」


 そんな風に会話をしながら、歩みを再開する。次第に門の全体像が見えてきて、俺たちとすれ違うプレイヤーが増えてきた。しかし、なぜかすれ違う連中は俺たちを二度見して、ひそひそ話しながら離れていく。どう考えても、隣を歩くティファナが目立っている。


 「いつもこんな感じなのか?」


 「ええ、そうなんですよね。だから、もう慣れてしまいました」


 彼女は苦笑いを浮かべながらそう言うが、その表情は恥ずかさと誇らしさが混じり合った様に見えるのでまんざらでもなさそうだ。


 そして、周りの目を集めながらも門へとたどり着いたタイミングで、ティファナに通信がきた。


 「すみません、ちょっと話してきます」


 そう言って城壁の傍に小走りで行く。俺は彼女の通信が終わるまで、少し離れた場所で待つ。


 しばらくして話が終わったのか、ティファナがこちらに駆け寄ってくる。


 「お待たせしました、ティーゲルさん」


 「用事でもできたか?」


 「は、はい、確かにそうですか、なんで分かったんですかっ!?」


 「勘、としか言えないなぁ。・・それで、もうお別れでいいのかな?」


 「はい、これから友達と合流する事になりました。・・そうだ、よかったらティーゲルさんも来ませんか? お世話になったお礼と言っては何ですか、一緒にお茶でも。それに友達に紹介したいですし・・・」


 「ありがたい申し出だが、遠慮させてもらう。見知らぬ人が居たんじゃ、君の友人にいらない気苦労をさせてしまうだろう。それに今日は予定があるしな」


 「あっ、そうでしたね。・・・それじゃ、非常に残念ですがお茶はいずれまた・・・」


 「ああ。もう一度誘ってくれたら、その時はご一緒させてもらう」


 俺はそう言ってティファナと別れた。最後に「ありがとうございました」と言って人混みの中に入っていく。しかし、人混みの中に入っても彼女はその見た目から群衆の注目を集め、人の波が自然と左右に別れていく。・・・すごいな。


 そんな滅多に見られない光景を目撃した俺は、その場を後にして生産街の大通りを進みながら目当ての店を探す。


 そして、以前買い物をしに来た道具店に入った。


 「いっらしゃいッ! おっ、こないだの兄ちゃんじゃないか」


 入ってすぐに出迎えてくれたのは、以前と変わらない元気な声を出す店主だった。


 「どうも、またお世話になります」


 「おう。それで何がほしいんだい?」


 「調合用の道具がほしいのだが、あるだろうか?」


 「調合用かぁ~、すまないがそういうのは専門外でなぁ。もしどうしてもほしいのなら、生産街の奥に行って探すといい。大体そういったもんは、そっちで売っているぜ」


 「分かった、探してみよう」


 「それ以外に何かないか? そういえば、珍しい物が手に入ったんだ。よかったら見るかい?」


 「ん? ああ、見せてもらおう」


 「おう、そう言ってくれると思ったぜ。ちょっと待ってなっ」


 そう言って店主は奥へと行く。その間に俺は店の中を見回すと、俺以外の客が数名はいた事に気づいた。


 「最近、レベルの上がりが早くなったから行ける場所が増えて楽しいぜ。まぁ、おかげでこうして回復薬を頻繁に補充する羽目になっているがなぁ」


 「確かに。前はレベリングが上手くいかなかったから面倒なゲームだと飽きかけていたが、レベリング方法の書き込みがあったおかげで、上手くレベリングできる様になって探検も進むぜ」


 「まぁ、方法と言ってもモンスターを一匹も逃がさない様に対策しているだけだがな。ただ、一度でも逃がすと追いかけるのにめっちゃ疲れる」


 「それが嫌なら、【PVPピーブイピー】で手っ取り早くレベリングしろよ」


 「無茶言うなよ。自分よりレベルが上の相手を倒すのが、どんだけ大変か分かってるだろう? 他と違ってこのゲームじゃ、レベルの差はプレイスキルの差と同義なんだ。下手にPVPなんかしたら、めった打ちにされちまうよ」


 「そうだよなぁ。でもよ、あの実証動画を見ちまうと、もしかしたらって思っちまうだろう?」


 「あ~、あれか。・・・しかしなぁ、あれはあくまで実証が目的の条件付きPVPだったからな。実際は、そんな低レベルのプレイヤーにだけ都合が良いPVPを受ける上位プレイヤーはほとんどいないのが現実だ」


 「そうなんだよなぁ~。・・・どこかにPVPレベリングをしてくる高レベルプレイヤーは居ないもんかねぇ」


 「俺たちより高レベルって言ったら、第一陣の連中しか居ねじゃねぇか。いる訳ねぇよ」


 そんな会話が二人の男性プレイヤー達から聞こえてくる。どうやら、テル達が俺の言った事を情報公開したことで、第二陣たちのレベリングが進みだしている様だ。


 客の話に耳を立てていると、奥から店主が帰って来た。


 「お待たせっ。こいつが今回手に入った【契約の指輪】だ」


 そう言って店主が見せてくれたのは、特に変わった所のないが文字の様な紋様が刻まれた金色の指輪だった。


 「この指輪が珍しい物なのか?」


 「ああ、そうだ。こいつはなぁ、動物や魔物を味方にする事が出来るんだ」


 「味方に、か。・・だが、スキルの【調教】でも味方にできるじゃなかったか?」


 「確かにできるが、スキルじゃ戦闘して弱らせて服従させるという、面倒なステップを踏まなきゃならない。しかも、味方にしてすぐの頃は力ずくで従わせているからか、命令されなければ動かないっていう扱いずらい状態だ。それに比べてこの指輪を使えば、一体限りだが戦闘せずに服従させれるし、自発的に動いてここぞという場面で助けてくるという頼もしい味方になるんだ」


 「なるほどな、それなら指輪を手に入れる価値は高いか」


 「そういう事だ。それに今の所、この指輪はダンジョンの宝箱からしか手に入らない。おかげで高値で取引されているよ」


 「じゃぁ、値は張るって事か」


 「そりゃ、それなりになぁ。だが、普通に高値をつけてちゃ買い手がつかないからなぁ。ある程度は抑えた価格にはするぞ」


 「で、いくらだ?」


 「3万ってとこかなぁ」


 「今の俺じゃ、半分も払えないな。他の客を当たってくれ」


 「そうか、そいつは残念だなぁ。他にほしい物はあるか?」


 「じゃぁ、HP回復用の【丸薬】はあるか?」


 「あるが、【回復薬】じゃないのか? そっちの方が効果は高いぞ」


 「そうのか。じゃぁ、それも一緒に買わせてもらう」


 「分かった。いくつ必要なんだ?」


 「丸薬を6つ、回復薬を4つで頼む」


 「あいよ。ほら、清算してくれ」


 そう言って店主は、丸薬と回復薬をカウンターの上に置いた。俺は、以前の様に商品をタッチして【700G】を支払った。すると店主がとびっきりの笑顔と共に「まいどっ!」と言った。


 「それじゃ、用も済んだので失礼する」


 「ああ、気を付けてな。また買いに来てくれっ!」


 店主の見送りを受けながら、俺は店を後にする。入口から出て、すぐに振り返って店の看板を見上げる。看板には【ダグ・ショップ】という文字が書かれていた。店の名前を見ずに利用していたので確認したが、特に変わった名前でもなかった。・・・そういえば、また店主の名前を聞かなかったなぁ。


 俺は今、【ダグ・ショップ】の店主から言われた通りに街の奥を歩いている。それらしい店を探して、歩く事数分、それらしいものが見つかった。


 その店は、レンガ造りの洋館の様な姿で両脇にくねくねに曲がった葉っぱのない木があり、レンガの煙突から紫色の煙が出ている。凄まじいほどのドロドロしたオーラを放っていた。・・・来る所を間違えただろうか?


 思わず、そう考えてしまう程の存在感を放つ建物には、【魔女の鍋】という看板が掲げてあった。・・・道具屋を探していたが、飲食店を連想させる名前だったので、どうしたものかと悩んでいると・・。


 「・・・・・・」


 少し開いた出入口から半分だけ顔を出して、こちらを凝視している魔法使いっぽいのが居る。・・・建物と相まって、すごく不気味だ。


 ・・・・・クルッ、ガッ!


 気になったが前へと進む勇気が出なかったので、引き返そうと建物に背を向けたが捕まった。


 「・・・・・何かな?」


 「・・・・・」


 「黙っていられると困るのだが・・・」


 「・・・何か用があったんじゃないの?」


 声からして女性、女の子の様だな。・・さて、彼女の質問に答えるとしよう。


 「確かに用があって来たが、ここは飲食店なのでは?」


 「違う、魔術や調合専門の店」


 「そうか。なら、ここで間違いなそうだな。・・俺は調合用の道具一式を探しているんだが、売っているかな?」


 「ある。見せるから入って」


 そう言うと彼女は俺を解放した。俺は振り返って建物の方を見ると、ちょうど出入口のドアを開けている先ほどの魔法使いっぽい子がいた。その魔法使いっぽい女の子はドアを開けて入る前に、俺の方に振り向く。どうやら、俺が来るのを待っているようだ。待たせるのも申し訳ないので、すぐに向かう。すると彼女は前へと向き直り、入口をくぐる。その後に俺も続く。


 店内は、建物の外見とは違って清潔感あふれる空間だった。棚に並んだ商品は整理整頓されていて、ほこり一つ溜まっていない。そんな店内の様子を見回していると、視界の端に店主である女の子がキラキラした目でこちらを見ている。


 「・・それで、道具を見せてもらっていいか?」


 俺がそう言うと、彼女は椅子から降りてカウンターの下に潜って、ゴソゴソと物音を立てている。そして、顔を上げて両手に物を抱えて椅子に座り直した。


 「これが調合の道具一式」


 そう言って出された道具は、小さな鍋と小さな包み紙だった。それを手に取り、見ていると彼女が興味深そうにこちらを見ている。・・・何かを期待する目だな。


 「・・・・道具の説明をお願いしてもいいだろうか?」


 そう言われた瞬間、彼女は一見では分かりにくいが、よく見れば分かる笑顔で「んっ! 分かった」と言って了承してくれた。・・・どうやら表情の変化は小さく、口数が少ない様だが、感情が声に出やすい性格らしい。何故か和む。


 「この鍋に素材と霊水を入れてコトコト煮込む。煮込み終わったら、この薬を入れる。そうすれば、完成だけど液体状の物は容器が無いといけないから、注意してね」


 説明を聞きながら、道具をスキルの【鑑定】で詳細を見る。


 【魔鍋まなべ】:調合の際に使う専用道具。これ自体に魔力がある為、必要な素材を入れて煮込む事で薬品や丸薬が完成する。ただし、手順の最後に専用の薬品を入れなければ完成しない。


 【固形薬こけいやく】:丸薬を作る際に必要不可欠の調合専用アイテム。これとは別に【停止薬ていしやく】というポーション製作用の薬品がある。


 「・・・何か、変?」


 俺が道具の詳細を見ながら考え込んでいたら、説明を終えていた彼女は落ち込んだ様子で聞いて来る。どうやら、説明に対して何も言わずに仏頂面になっていた俺を見て、不安に感じたようだ。


 ちなみに、彼女の表情は普通に見たら落ち込んでいる様には見えない。注意深く見て、ようやく分かる表情の変化だった。


 「そんな事はないぞ。説明してくれて、助かったよ。ありがとう」


 そう言いながら、彼女の頭を撫でると一瞬の変化だったが、びっくりした様な表情になり、薄っすらと赤くなってうつむく。


 「ど、どういたしまして・・・」


 そして、一言だけ返してくれた。しかし、俺は初対面の相手を馴れ馴れしく撫でてしまった。・・・・どうしよう。


 「あ、ああ。・・それで、聞きたい事があるんだが、いいかな?」


 「ん、なに?」


 「この固形薬の事なんだが、これ以外にも停止薬っていうのがあると鑑定の説明文に書いてあったんだが、今この店にあるかな?」


 「ある。けど、初心者なら丸薬作りからやった方が失敗が無くていい」


 「なに、買えるなら今の内買っておきたいだけさ」


 「分かった。持ってくる」


 そう言って彼女は、またカウンターの下に潜る。そして、すぐに出てくる。


 「はい、これが【停止薬】」


 【停止薬】:通常は低下する薬の効能を保存する為に使用する必要不可欠な調合専用アイテム。


 「ありがとう。それじゃ、支払いをしようか」


 俺はそう言って、カウンターに置かれた商品をタッチする。


 <買い取り>

 ・【魔鍋】:1200G

 ・【固形薬】×10:400G

 ・【停止薬】×5:750G

 ・【ガラス瓶】×5:500G

 ・【混合棒】:300G

 ・【専用お玉】:200G

 

 合計:3350G


 他にも必要そうな物を揃えたら結構な値段になったが、必要経費なのでためらわずに<はい>を押して払うとした時、腕をちょいちょいと引っ張られた。支払い画面から視線を移すと、すぐ隣に彼女が居た。


 「画面を閉じて」


 そう一言だけ言われたが、訳が分からずにいるとまた腕を引っ張られたので、彼女の方を見るとものすごく不安そうで泣きそうなと思える表情の顔をしている。さすがにこんな顔をされては、従わざる負えない。・・・はっきり言って、この顔は反則だと思う。いや、ぱっと見はそんな顔には見えないが・・・。


 俺が画面を閉じると、今度は彼女が何かの画面を出す。色々といじっていたので待っていると、画面を閉じて俺に向き直る。


 「終わった、支払いしていいよ」


 許可が出たので、再度タッチして画面を出す。


 <買い取り>

 ・【魔鍋】:600G

 ・【固形薬】×10:200G

 ・【停止薬】×5:375G

 ・【ガラス瓶】×5:250G

 ・【混合棒】:150G

 ・【専用お玉】:100G


 合計:1675G


 ・・・全ての値段が半額になっている。その答えを得る為に、俺は隣にいる彼女を見る。


 「初めての・・お客さんだったから・・・。サ、サービスの・・つもりで・・・」


 と彼女は赤面しながら言っている。ありがたい事だが、これまで誰も客が来ていないという事実に、この子の明日が心配で仕方ない。


 明日の心配は、とりあえず横に置いて支払いを済ませる。そして、率直な質問をする。


 「しかし。今までどうやって、この店を維持していたんだ?」


 「お店に必要なお金や物は自分で調達してた・・・」


 「以外とたくましいな、君は・・」


 「それほどでもないっ!」

 

 「いや、褒めてないから。しかし、今までに人が通り掛からなかったのかい?」


 「通り掛かったけど、みんな下を向きながら早歩きで通り過ぎてしまう・・・」


 ・・・それは店の外見が原因だと思う。


 「あっ! ちなみにだけど、さっき俺にしたみたいに顔を覗かせて待ってたりしなかったか?」


 「ん? したけど、ダメだった?」


 ・・・・・そりゃ、客が来ない訳だ。不気味な外見の店から顔を覗かせる女の子、そんな所に行くやつは余程の物好きか、怖いもの知らずだろうからな。現に俺も引き返そうしたが、彼女に捕まったおかげで入れたんだからな。


 「まぁ、これからはそういう事はしない方がいいだろうなぁ」


 「・・・・分かった、そうする」


 「・・そういえば、自己紹介してなかったな。俺はティーゲルだ、よろしくな」


 「マヤ、よろしくねティーゲル」


 「ああ、よろしくなマヤ」


 そう言いながら俺は、またマヤの頭を撫でた。それに対してマヤは、軽い赤面になったものの嬉しいそうな笑顔を俺に向けてくれた。


 ・・・また撫でてしまった。このゲームを始めてから、最近の俺はどこかその場の空気に流されぱっなしな気がする。どうしたものかぁ・・・。


 そんな事を考えながらも、マヤの頭を撫で続けるのをやめないティーゲル。しかし、そのおかげかマヤはとても幸せそうにしている。特に気にする必要はない様に見える。


 「・・・それじゃ、用は済んだからこれで失礼するよ」


 そう言って撫でるのをやめると、マヤは少し名残惜しそうにしている。そして、俺は入口へ向かい取っ手を握った所で、思いついた事があったので振り返る。


 「そうだ。マヤ、この店の事なんだけどな」


 「ん、何?」


 「俺の知り合いに調合や魔術で困った事があったら、ここに来るように話しておくよ」


 「分かった、期待してる」


 何に対して期待するのだろうか・・? よく分からないが、とりあえずは知り合いにここの事を宣伝しておこう。上手くいけば、それでいろんな人が来てくれるだろう。そんな感じで、【魔女の鍋】の今後を思いながらドアを開けて出ようとすると、後ろから引っ張られた。振り向くとマヤが服をつまんでいた。


 「どうした、マヤ?」


 「・・・・ティーゲルも、また来てくれる?」


 「ああ、もちろんだ。毎日とはいかないが、用事だけでなくできる限り顔を見せにこよう」


 そう言うとマヤは、今までの無表情から読み取るの笑顔ではなく、誰が見ても分かる穏やかな笑顔を浮かべて「うん、分かったっ!」と言った。


 


 


 


 


 



 


 


 


 


 


 


 



 


 


 


 

 第18話、いかがでしたか?


 前回に続いて二人目の新キャラの登場ですが、そろそろ数的にキャラの管理が難しくなってきました。おかげで、再登場の場面が中々思いつきません。できれば、読者の皆様からアドバイスが欲しい所です。もし頂けるなら、これまでの物語で、読者の皆様から足りない、欲しいと感じる話の要素があれば、ぜひ教えてください。


 それでは、誤字・脱字・内容の間違いがあれば、気兼ねなくご報告して頂いて構いません。これからもよろしくお願いします。では、次回にまたお会いしましょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ