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訳あり元傭兵のVRMMO  作者: 大佐
15/22

第14話 テル達との生還祝い

 第14話の投稿です。

 楽しんでいただければ幸いです。


 脱字の修正を行いました。

 文章の改編を行いました。

 俺は【鬼酒おにざけ】で三日ぶり・・・、いや正確には三時間ぶりにオニメの手料理を食べて、部屋でログアウトをした。現実に戻ってきて体を起こし、【V・W・バワダ】ヘルメットを外して敷き布団から立ち上がろうとした時、俺は体にちょっとした気だるさを感じた。


 「・・・こまめに休憩を取ってはいたが、やはり疲れは溜まるか。・・・しかし、なぜか懐かしい感覚だ」


 俺はそう呟きながら、軽くストレッチをして体をほぐす。ほぐし終わった後、台所に行ってお茶を飲んだ。飲み終わった後はコップを水につけて、時間を確認する。


 「10時過ぎか・・・。待ち合わせまでは時間があるから、少し仮眠を取るか」


 仮眠を取ろうと敷き布団の方に戻ろうとした所で、【B・ビーディー】が着信を告げる。すぐに手に取って通信画面を開く。そして、チャーフィーの顔が映った。


 <よっ! 元気にしてたか?>


 「元気も何も、三時間前に話したばかりだろう。それで何かあったのか?」


 <ああ、昨日話した仕事のことでな。・・・実は来月入ってくる予定が、来週になりそうなんだ>


 「それは、また急な繰り上がりだな?」


 <そうだよなぁ~、だから俺も気になって調べてみた。そしたら、あの国が優先的に出国を認めてくれたらしいんだ>


 「・・・珍しいな。あの国が俺たちの商売に手を貸すなんて? 以前、商売の事で揉めたというのに」


 <そうだが、一応今の国家元首があいつだからな。前も何か困った事があったら言ってくれって言われた時、断ったがそれでも何かあれば言ってくれと執拗に言ってきてたから、それで出国検査を優先してくれたのかもなぁ>


 「そうなのか? 俺は現物の三割を収める話しか覚えてないぞ?」


 <そりゃぁ、お前が日本にいるからだろう? 俺だけであっちに行った時の話だから、お前が知らなくて当たり前だ。それにあいつはお前にもよろしくって言ってたぞ。っていうかお前も一度は一緒に来い! 毎回、あっちに行く度にお前の事を聞かれるんだぞ?>


 「そいつは・・・、済まない。・・・そうだな、もう一度あの国に行ってもいいかもな」


 <・・・ま、無理強いする気はないから、よく考えておいてくれ>


 「わかった。・・・それじゃ、仕事は来週になるんだな?」


 <ああ、だから来週は空けて置いてくれよ>


 「分かってるさ、というかお前が仕事を持ってきてくれないと俺の日々の予定は空きっぱなしなんだから、埋まる事はそうないだろう」


 <何言ってんだ? お前、【D・L・O】をやってるんだろう。なら予定が埋まりまくりだろうが、例えそうじゃなくてもせっかく手に入れた娯楽なんだ。思う存分楽しめ。そのほうがお前のためにもなるし、妹たちの粋な計らいに対する礼儀ってもんだ>


 「・・・ああ、分かってる」


 <それじゃ、三日後と来週に会おう。それまでには俺のほうも・・・<ちょっと! いつまで時間かけているのっ!>ちょっ、もう終わるから待ってくれっ。そ、それじゃまたなっ!>


 そう言ってチャーフィーは慌てて通信を切った。


 「・・・何やってんだ、あいつは?」


 そう呟いて俺は【B・D】を置くと、ふと気になって時間を確認する。時刻は10時半過ぎを指していた。


 「・・・30分はあるか」


 と言って仮眠を取り始める。


 それから30分手前の時間に、俺は目を覚ます。


 「時間前か・・・。それじゃ、ログインするとしようか」


 そして、横に置いてあった【V・W・D】を被り、横になる。



 ―――【リリース・中央広場】―――


 「・・・さて、テル達に連絡をするか」


 ログインを果たした俺は早速、テル達と合流するために【パートナーズ・カード】のチャット機能を使用する。手を耳に当てて、出てきた画面から相手を選択する。


 「・・・・・・あら、ティーゲル。ちょうどいいタイミングね」


 聞こえてきた声はテルのものだった。そして、その声はどことなく嬉しそうだった。


 「やぁ、テル。早速で悪いが合流場所を聞きたい」


 「ええ、分かってるわ。・・・今、中央広場にいるの?」


 「ああ。もしかして【ファミリー街】の方に行った方がいいか?」


 「いええ、私たちはパーティーであって、ファミリーではないわ。それに言ったでしょ? ちょうどいいタイミングって。今、みんなでそっち向かっているから待っていなさい」


 そう一方的に告げると通信を切られた。仕方ないので、少し広場の端に寄って待つ事にした。


 しばらくして、南の大通りから見覚えのある4人組が見えた。そして、先頭を歩く青年が手を振りながら駆け寄ってきた。それに続いて他の者も駆け寄ってくる。


 「ティーゲルさんっ! お待たせしましたっ!」


 「おっす! ティーゲルの兄貴」


 「やっぱりぃ~、大きいですねぇ~。ティーゲルさんは」


 「ペレット、ちゃんとあいさつしなさい。・・・さっきぶりね、ティーゲル」


 マイクを先頭にバイクン、ペレット、歩いてきたテルという順番で、それぞれ声をかけてくれる。


 「ああ、みんな元気そうだな」


 「そりゃもう、兄貴のためですから」


 「よく言うなぁ。一番最後にログインしたのはバイクン、お前だろう?」


 「そうね。「寝坊しそうになった。すまん、すまん」って開口一番に言い訳したのは誰だったかしら?」


 「べ、別に遅れていないからいいじゃねぇか」


 マイクとテルに横槍を入れられたバイクンは、慌てて弁明する。


 「さて、合流したのはいいとして、どこで話そうか?」


 「ならいい場所がありますよ。俺たちが外から戻ってきた時に、いつも行く所です」


 そう言ってテル達の案内で、西の大通りに面する【生産街】へ向かう。大通りに沿って歩くこと数分、テル達が止まる。


 「ここが俺たちの行きつけの店、【赤ずきん食堂】ですっ!」


 マイクの紹介を聞きながら、俺はその食堂の外見を見る。外見はそこまで変わったものでないが、掲げてある看板にはでかでかと赤ずきんと書いてある。


 「それじゃ、入りましょうか」


 そう言ってテル達は食堂に入っていくので、俺もその後についていく。そして、入ってから食堂の中も観察するが特に変わった所はなく、素朴な木造の内装だった。西部劇に出てくる酒場と言ったら、なんとなく思い浮かぶと思う。


 「いっらしゃいませー。空いてる席、テーブルへどうぞ」


 ただ、一点のみ変わった所があった。それは女性従業員が全て赤ずきんを被っている事だ。・・・とりあえず、男の従業員は被っていなかったので一安心。


 そして、テル達は迷う事無く一つのテーブルに行くので、俺も後に続きそのテーブルの椅子に座る。そして、食堂の中を見渡しながら口を開く。


 「・・・変わった格好の店だな」


 「やっぱり、ティーゲルさんもそう思いますよね。俺も最初来た時は食堂じゃなくて、コスプレ喫茶か何かと思いました。でも以外とちゃんとしたお店で、しかもあの恰好のせいか常連も多くいます」


 「なるほどな。確かに仕事の様子はちゃんとしたものだ」


 「ですよねっ! ・・・ただ、一つだけ注意する事があるんです」


 「ん? それは何んだ?」


 「それはですねぇ~・・・」と話した所で、騒ぎが起こる。


 「ちょっとっ、やめてくださいっ!」


 「いいじゃねぇか。ちょっと相手してくれるだけでいいんだよ」


 その騒ぎは女性従業員とその手を掴んで絡むガラの悪い男性客との口論だった。それを見た俺はため息を吐きながら、せっかくの食事の場を荒らされたらたまったもんじゃないと思い、騒ぎを鎮めようと立とうとするがマイクがそれを遮る。


 「・・・なぜ止める?」


 「大丈夫です。ほら、来ましたよ」


 そう言ってマイクが見る方に顔を向けると、そこには奥から来る他の従業員と同じ格好の女性がいた。しかし、その佇まいは他の者と確かな違いがあると俺は直感で感じた。


 「お客様、少しよろしいでしょうか?」


 「あん? なんだねぇちゃん、今取り込んでいるから後にしてくれ。それとも何か文句があるのか?」


 そうすごむ男に、奥からやってきた女性はニコニコしている。


 「ええ、それはもう文句大有りです。その汚ったない手を放しなさい」


 女性は男に怯むことなく、そう言ってのける。そして、そう言われた男は「ああんっ、なめんてのかっ!」と言って怒鳴りながら立ち上がって女性に詰め寄る。


 「いいから放せって言ってのよっ!!」


 突然の怒鳴り声と共に、女性はどこからともなく取り出したフライパンを男の頭に叩き落とす。それにより、男は声をあげる暇もなく床に崩れた。だが、すぐに頭をさすりながら立ち、「このっ!!」と言って女性に殴りかかる。しかし、その拳は女性に避けられてしまった。


 「女をなめんじゃないわよっ!」


 そして、女性はその一言と共に下からフルスイングしたフライパンで男の顎を打ち据える。さすがの男もその攻撃で数歩下がった後、仰向けで倒れた。そして、倒れた男に近づいた女性は蔑んだ目で見ながら、なんと男の股間をヒールの様な履物の尖った部分で踏みつけグリグリとねじる。男は気を失っていたが、その踏みつけで「ギャアアァーッ!?」と叫んで、また気を失った。今度は泡を吹きながら。


 「このクズを捨てて来て」


 男への制裁を終えた女性は、テキパキと指示して後始末をする。そして、とっびきりの笑顔を周りにふりまく。


 「お騒がせして、申し訳ありません。ですが、もうゴミの掃除は済んだので皆様、心おきなく過ごしてください。それでは、これにて失礼します」


 そう言って奥へと下がっていった。


 「・・・ご覧の通り、この店でああいった事をすると鉄拳制裁が来るんですよ。ですから、ティーゲルさんも気を付けてください」


 「マイク・・・、お前は俺をそんな人間だと思っていたのか?」


 「いえ、いえ。そうではなくて、巻き込まれない様に気を付けてくださいって事です。俺とバイクンは一度、巻き込まれて酷い目に遭いましたから」


 「ああ、あの時は酷かったなぁ。事もあろうにあの人にちょっかいを出して、俺たちの方に逃げてくるんだからよぉ」


 そう言い合いながら二人はため息を吐いて苦笑する。そこにテルが割って入ってくる。


 「・・・その話はもうお終い。本題に入りましょう?」


 「そうだな。それじゃ、適当に食い物と飲み物を頼んでから始めるか」


 そうバイクンが切り出した所で、俺たちは注文を済ませることにした。テル達はいつも頼んでいる果物ジュースといくつかの料理を注文、俺は【エバ茶】と【ウルフのステーキ】を注文した。


 「さて、注文が来るまで話をしようと思いますが、その前に改めて自己紹介しましょうか。・・・では最初に俺から、名前はマイク、パーティーポジションはヒット&アウェイのアタッカー、習得魔術は【火魔術】です。今回は助けて頂いてありがとうございます」


 マイクは自己紹介と共に、俺に対して礼を述べる。マイクの外見は短い黒髪に、中肉中背の体格で元気な年相応の青年といった感じた。装備は金属の胸当てに、腕にガントレット、腰や足には特に金属装備はなかった。森での戦闘では、剣を使用していた。


 「次は俺だ。名前はバイクン、パーティーポジションは前線を守る盾役だ。習得魔術は【土魔術】だな。そして、兄貴の戦いっぷりに惚れたぜっ!」


 マイクの後に続いてバイクンは元気よく自己紹介を終えると、俺に対して尊敬っぽい眼差しを向けてくる。そんなバイクンは赤茶色の髪をオールバックにして、マイクよりも頑丈そうな金属鎧を身に着けている。しかし、なぜか兜は無し。おかけで、顔は見えるが体格は判別できない。まぁ、マイクと大差ないと思う。森ではハンマーで戦っていたな。


 「え~っと、私はペレット、パーティーポジションは杖を使った回復と牽制かな。魔術は【光魔術こうまじゅつ】だよ。よろしくねぇ~、ティーゲルさん」


 バイクンの次は、ペレットが自己紹介をする。ペレットの外見は、肩を過ぎた所まで伸びたピンクの長い髪に、魔法使いが着ていそうなローブを着ている。そして、そのローブからでも分かる大きさの胸部が特徴だ。だが、俺はそれよりも気になったものがペレットの頭の上にあった。それは片方は折れて垂れている長い〝兎の様な耳〟だった。ちなみに、ちゃんと時おり動いていた。


 「・・・あ、これ気になりますぅ? 可愛いと思って付けたんですが、どうですかぁ~?」


 俺の視線に気づき、ペレットは相変わらずの呑気な口調で俺に聞いて来る。


 「ああ、似合っているぞ。テルとお揃いだな?」


 とりあえず、感想を言って話の矛先をテルに移す。


 「ええ、そうね」とテルは特に気にする事も無く言った。そんなテルに対してペレットは嬉しかったのか、「そうですよねぇ~。お揃いですよねぇ~」と言ってテルにハグをする。


 ペレットの行動にテルは「ちょっと、何で抱きつくの?」と抗議するが、彼女の犬耳はピコピコ動き、尻尾はフリフリしている。・・・嬉しかった様だ。


 そんな微笑ましい光景は、テルがなんとかペレットを引き剝がした事で終わり、乱れた服を直して俺に顔を向ける。


 「それじゃ、もう名前は知っていると思うけど一応ね。・・・名前はテル、パーティーポジションはアタッカー兼スカウト役をしているわ。魔術は【毒魔術】よ。」


 最後の紹介は、以前知り合ったテル。その姿は相変わらずのクリーム色の髪が肩まであり、ペレットに比べて見劣りする小ぶりな胸部だが、装備の皮鎧が金属鎧にグレートアップしていた。大体はマイクとそこまで変わらない装備だが、森での戦いでシュートソードらしき剣を扱っていたが、テルの姿からはあまり思い浮かばない戦い方だと俺は思った。そんな俺の気持ちが顔に出ていたのか、テルが「何よ?」と言ってきた。


 「いや、相変わらずテルの耳は良く気持ちが出るなと思っただけだ」


 そう言われたテルは顔を真っ赤にして「なっ、何言ってのよっ!?」と慌てる。


 「はははっ、そう怒るな。さて、俺以外の紹介が終わった所で俺の自己紹介をしようか。名前はティーゲルだ。パーティーは組んでいない。習得魔術は【風魔術ふうまじゅつ】だ。・・・俺の紹介はこんなもんかな。何か質問があれば聞いてくれ」


 「それじゃ俺から、ティーゲルさんは第一陣のプレイヤーなんですか?」


 「いや、俺は第二陣だ。始めたのも現実で昨日からの駆け出しだ」


 「マジかっ!? 兄貴が俺たちと同期なんて、なんという奇跡っ!」


 「確かにな。・・・では次の質問ですが、ティーゲルさんが森で身にまとっていた緑の物は何なですか?あっ、もちろん教えられない重要な物なら言わなくて結構です。こういったゲームでは相手が持つ情報はなるべく、詮索してはいけない暗黙の了解がありますから」


 「別にそんな大層な物じゃない。あれは漁業用の網をツタや葉のついた枝を絡ませた即席のギリースーツだ。網が大き過ぎて、着たまま移動すると高確率で茂みや枝に引っかかるのが難点だがな」


 「すごいじゃないですかっ! そんな物を独自に作ったんですから。ちなみに、どれぐらい効果があるんですか?」


 「ん? あぁ~、現実のギリースーツと変わらないと思うぞ。あの森で四日間に渡って滞在していたが、視界で状況判断する人間は、ギリースーツを着て茂みに隠れた俺を見つけられなかった。まぁ、おかげで連中の背後を容易に取れたからな。ただ、やはり動物は匂いがあるから怪しんで俺のいるあたりを警戒していたから、必ずしも通用するとは限らないけどな」


 「という事は、ティーゲルさんは四日間も森に滞在していて、ギリースーツで姿を隠しながらPKの連中や動物を狩りまくっていたと?」


 「ああ、森の探検がてら依頼をこなしつつ、キャンプしていた。そこに夜の森をコソコソ動く連中が現れたから正体を確認したら案の定だった訳だ。このままじゃ、いつ邪魔が入るか分かったもんじゃないから、一人一人後ろから首をかき切ってやった。まぁ、そのせいか徒党を組んでくるようになって、なんとか対処していたが、三日間も戦っていたら限界がくるのも早い。そろそろ街に戻ろうと考えていた四日目にお前たちが来た。そして、様子を窺いながら期を見計らっていたら、テルが先に戦端を開いて俺が参戦したってのが先の戦闘の経緯だ。結果的に助けた形になったかもしれんが、元を辿れば俺のせいであるのは明白だ。・・・すまなかった」


 俺に対して徒党を組んで復讐しようと企んでいたPK達が、予定外のテル達へ目標を替えたのは俺がPK達に手を出した事で生じた出来事だと思っていた俺は責任を感じていた為、テル達に頭を下げて謝った。


 「そんなティーゲルさんが謝る必要なんてありません。PKがいると分かってながら、夜の森に入った俺たちの自己責任ですよっ!」


 「そうだぜ、兄貴っ! 俺たちにも責任の一端はある。それにPKの奴らをテル達の元に来させたのは、俺が【フレイム・ウルフ】を撃退した時に使った【爆裂草の粉】のせいなんだから、テル達に謝るべきなのはこの俺だ」


 謝る俺にマイクとバイクンはフォローをしてくれた上で、自分たちに責任があると言い張った。そんな俺たちのやり取りを見ながらペレットが口を開く。


 「ん~、別にどっちが悪いとかこの際、関係ないように思うですがテルちゃんはどう思いますかぁ~?」


 「そうね、ティーゲルの言った事も一理あるし、マイクやバイクンが言う事も正しいわ。でも、こうやってみんなで食事ができているのだから、ペレットの言う通り水に流して済ませるのが妥当だと私も思うわ。なにより今回の出来事の原因なんて考えてたらキリが無いわ」


 そう答えるテルにペレットが「やったぁ~、テルちゃんと一心同体になれたぁ~」とまた抱きつく。そして、そんなペレットをまた引き剥がそうとテルが奮闘する。


 二人の意見を聞いた俺たちは、顔を見合わせて一時固まると三人一緒に「はははっ」と笑いあった。この時の俺は、俺の真剣に悩んで謝罪した事が、マイク達のフォローが、テルとペレットの二人によってあっけなく水に流された事に心から安心を得た気がした。俺たちの笑いが終わった所で注文の品が来た。


 「・・・さて、料理と飲み物が来たところで、難しい話は終わりにして乾杯をしよう」


 俺がそう言うと、テル達は木製のコップを持つ。俺もコップを持つとマイクが音頭を取る。


 「・・・【フレイム・ウルフ】に襲われたり、PKとの遭遇戦になったり、色々と危ない目に遭ったが無事に生還できた事、ティーゲルさんと出会った事に・・・」


 「「「「「かんぱいーっ!」」」」」


 一斉にコップをぶつけ合い、一口飲んでから料理にそれぞれ手を出していく。


 「それでティーゲルさん。結局の所、PKは何人討伐したんですか?」


 「ん? ・・・確かぁ~、15人じゃなかったかな? 正確には覚えていないけど、10人は討伐した事は覚えている」


 「おぉ~、さすがですねっ! ちなみにPKとまた戦いですか? 俺は今回の件で、しばらくは戦いたく無いし、連中を見たくもないですね」


 「そうだな、最後の戦い以外は後ろからの首切りだったから、できれば勘を取り戻すのにもう一度は戦ってみたいな」


 「ほえ~、すごいですねぇ~。やっぱりティーゲルさんはお強いうえに恐怖が無いんですねぇ。私なんて、いまだにあの薄気味悪い顔がトラウマになっていますぅ」


 「兄貴の戦いぶり、この目で見た時からすごいと思っていたが、その上をいく男の中の男だっ!! 俺も頑張って兄貴の様になりてぇーっ!」


 「あんた、最初に会った時と何一つ、変わっていないわね。ていうか、悪化してない?」


 前触れのないマイクの質問に答えた俺は、テル達から思い思いの感想を聞くことができた。・・・テルだけは、呆れた様などうしようもないといった顔で毒舌は吐いてきたので、抗議の意味を込めて俺は無言で犬耳をくすぐった。その結果、俺たちのテーブルには一時、テルの悶え笑う声が響いた。


 


 


 




 

 第14話、いかがでしたか?

 詳しく語られていなかったテルの仲間の姿、ティーゲルの森での生活について書いてみました。実を言うとこの後に続く話も加える予定でしたが、長くなりそうでしたので分割させていただきました。


 誤字・脱字、文章の歪み、ご感想はいつでもお待ちしています。

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