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訳あり元傭兵のVRMMO  作者: 大佐
14/22

第13話 森に潜む虎とPKとの死闘

 大変、お待たせしました。第13話の投稿です。

 楽しんで頂ければ幸いです。


 内容の重複があった為、修正いたしました。

 「しかし、どうやって【フレイム・ウルフ】から逃げて来た?」


 「それはなぁ、これのおかげだ」


 そう言ってバイクンが腰のポーチから小さな袋で出して、それを不思議そうに見る三人の前で、バイクンは開いて見せる。袋の中身は赤茶色の粉末だった。


 「これは・・・、何なんだ?」


 「これは爆裂草の粉だ。これをブレスを吐こうとしているフレイム・ウルフに投げつけてやったんだ。そしたら、さすがのフレイム・ウルフもあの爆発は効いたようで、キャンキャン言いながら逃げて行ったよ」


 「そんな小さな袋なのにあの爆発か・・・、そりゃぁウルフ達も逃げるわな。しかし、よく怪我もせずに生き残ったもんだなぁ」


 「いや、怪我は負ったぞ。爆発する瞬間に盾を構えたんだが、盾が爆発に耐え切れずに壊れて、そのまま上半身の装備も爆発で破壊された。おかけで初めて死にかける体験をしたよ。なんせ、体中が痛いうえに焼ける様な激痛まであったんだ。なんとか回復薬を取り出して飲もうとしたが、激痛で飲めなかったから体にかけてやったよ。そしたら、痛いのなんのって、もうトラウマものだった」


 そう言いながら笑うバイクンをテルはそっと【サーチ】してみた。


 【バイクン:Lv6】

 ・味方関係

 ・HP:40%(回復中)

 ・状態異常:火傷(軽度)、身体強打、身体能力低下(全ステータス20%減)

 ・抵抗力:50%(回復中)


 「あなた、状態異常を三つも受けているけど、回復薬は飲んだの?」


 「ああ。体にかけた後、なんとか動けるようになって二本目を飲んだよ。・・・って、そこまで俺は深刻な状態なのかっ?」


 「本当だ・・・。軽度の火傷に、身体強打、身体能力低下、全ステータスの20%減少・・・、ひどいもんだなぁ」


 「うぅ~、見ているだけで体中が鳥肌になります」


 「まぁ、回復中って出ているから大丈夫だろうっ! 安心しろっ!!」


 そう言ってマイクはバイクンの背中を叩く。


 「いってぇーっ!! マイクっ、火傷を負った体を叩くじゃねよっ!」


 叩かれた事でマイクに仕返しをしようと追いかけるバイクンだったが、能力低下で思うように走れなかった。しかし、諦めることなくマイクを追いかける。そんな二人の追いかけっこを見ていたテルとペレットは顔を見合わせてう一緒に笑う。しかし、そんな四人に声をかける影があった。


 「いやぁー、感激の再会、おめでとう」


 その影の正体は、簡素な軽鎧を身に着けた薄気味悪い笑みを浮かべる男だった。


 「――っ誰だ!! お前はっ!」


 そんな男に、テル達はバイクンを守る様に素早く男の前に出る。


 「なにぃ、別に怪しい者じゃない。ちょっと人殺しが好きなお兄さんさぁ」


 「怪しいどころかっ、完全な犯罪者じゃないかっ!」


 「そうですよ。いくら普通の事のように言っても、そんなフリにノってなんてあげませんよっ!」


 「ペレット・・・、そういう事じゃない」


 「ハハハッ、確かになぁ。でもここがそんな連中の巣窟だって事は知っているはずだよなぁ? それとも知ってて来たのなら、お前たちは自ら命を捨てに来たヤツって事になるよなぁ」


 そう言う男の後ろからもう二人の男が出てくる。そして、テル達の後方にもう三人の男が出てきて、計六人の男たちがテル達を囲む様に立つ。そいつらを見てテル達は瞬時にこいつらがこの森に巣くうPK達だと分かった。


 「へへぇ、久しぶりの獲物だ。しかも、内一人は瀕死、二人は女、楽に狩れそうだぁ」


 「そうだぁ。しかし、返り討ちにするつもりで徒党を組んだのに、今日は全然現れなかったなぁ?」


 「もうその事はどうでもいい。今はここにいる獲物をどうやって楽しむかだ」


 「じゃさぁ、俺にあのおっとりした子をくれよぉ。心地いい悲鳴を上げてくれそうだぁ」


 「おめぇはどうして、そう性癖がねじ曲がっているんだ?」


 なめまわす様な目つきで見られたペレットは「ひっ!」と声を上げてテルの背中に隠れる。


 「・・・どうするの、マイク?」


 「囲まれている状況をなんと出来れば、やりようはあるんだが・・・」


 「おっとっ、コソコソ話はやめてもらう。どっちにしろこの状況で、足手まといがいたんじゃぁ助からねよぉ。・・・さて、武器とポーチのアイテムを捨ててもらうか。それと怪我をしたお兄さんは変な事するなよ」


 「そうそう、お前が【フレイム・ウルフ】を爆裂草の粉で撃退した事はわかってんだ。ここで爆発したら、お仲間も一緒に吹っ飛ぶぞ?」


 バイクンは悔しいそうな顔をしながら爆裂草の粉を捨てる。テル達もアイテムを先に出して地面に放り投げる。


 「ほれ、武器もだ。ちゃちゃっと捨てな」


 男の一人からそうせかされるが、テル達は中々捨てる事ができなかった。しかし、このまま戦って勝てる可能性は低い、意を決してテルが最初に武器を外し捨てようとする。


 「そうそう、ちっちゃな嬢ちゃんのように素直なのが一番だ」


 その何気ない男の一言にテルの〝堪忍袋の緒が切れた〟


 「誰が小っちゃいよっ!!」


 そう叫んだ瞬間、テルは捨てようしたショートソードを目の前にいる男に投げつけた。そして、あまりの出来事に反応できなかった男の心臓に運悪く突き刺さった。


 「ん? ・・・あー」


 <バタンッ!!>


 自身に突き刺さった剣を見た男は、そのまま気の抜けた声を出しながら前のめりに倒れた。


 「・・・・・・てめぇ! よくも<ザシュっ!>―ッ!? ・・・あ、あ、ああ」


 仲間が殺された事に遅れて気づいた一人がテルに切りかかろうとした瞬間、その男の胸から剣が突き出た。そして、すぐに剣は抜かれる。


 <ズシュッ!>


 剣を抜かれた事で立つ事できなくなった男は倒れる。そして、その男の後ろに高さ2メートルはありそうな茂みがあり、その茂みの隙間から血の付いた剣が出ている。


 「こ、こいつだっ!! こいつが俺たちを<ザシュッ!!>」


 茂みの化け物を見て錯乱した様に叫ぶ別の男の顔面に今度は斧が投げつけられる。


 「ちきしょっ! こんなタイミングで現れるなんてっ!?」


 「さ、先にヤツを殺せっ!! そうしないと俺たちがやれちまうっ!」


 「このーっ、化け物がーっ!!」


 そう言いながら、残るPKの男たちは眼前の乱入者を倒そうと武器を構えるが、それに横槍を入れる者がいた。


 「俺たちの事っ、忘れてもらちゃ困るよっ!!」


 そう言うのはマイクを始めとするペレットとバイクンだった。突然の出来事と乱入者に思考が一瞬追い付かなかったが、すぐに状況が好転したことに気づき、捨てようとした武器を持ち直してPK達に切りかかる。乱入者に向かおうとした三人内の一人がマイク達と対峙し、男の正面にいるマイクと剣を交える。


 「このっ、調子にのるなーっ!」


 「わ、わたしもっ! そいやっ!」


 「わっ! あぶっねぇ~。こらっ、ペレットっ!! 味方に投げつけてどうするっ!?」


 「す、すいません~」


 「隙ありっ!! 死ねやっ!」


 「しっ、しまったっ!?」


 ペレットの誤射にツッコんだマイクの隙をついて、マイクと戦闘していたPKの男が切りかかる。


 「おっとっ! そうは問屋がおろさないぜっ!!」


 マイクの危機に割って入ったのはバイクンだった。彼はハンマーで男の剣を受け止めたが、やはりステータス・ペナルティ―を受けている為か力負けしている。


 「このっ、死にぞこないがっ!!」


 「怪我人だからって甘く見るなよっ!!」


 「俺を忘れるなっと言ったっ!!」


 そう言ってマイクが<ザシュッ!>と男の背中を切りつける。


 「この野郎っ! 後ろから切りつけるなんて卑怯だろうがっ!?」


 「卑怯を体現した様なお前たちが言うなっ! それにもうお前さんしか残っていないぞ?」


 「何っ!?」と言って、男は後ろを振り向く。そこには乱入者に勢いよく切り込んだはずの仲間二人が血だまりを作って倒れていた。


 男がマイク達を相手にしていた間、二人の男は乱入者に攻撃しようしたが、乱入者は最初に剣が届きそうな馬鹿正直に突っ込んでくる男のがら空きの腹に持っている剣で突き刺した。自分の突進力で勢いがついた男はその勢いが災いして、あっけなく絶命した。そして、剣の一突きで殺された仲間を見て、後ろにいたもう一人は、勝てないと踏んで逃走を図ろうとしたが、それを見逃すまいと冷静さを取り戻したテルが「逃がさないわよっ!」と言って阻む。


 テルに進路を阻まれて足を止めてしまった男は、喚きながらテルに切りかかろうとするが、後ろからの鈍い痛みと押される力で前へと倒れる。何が起きたか分からない男は後ろを確認しようと振り返る。そこには持ち直した剣の先を男に向ける茂みの化け物がいた。そして、声をあげる隙もなく剣先が男の首に突き刺さり、それが男が見た最後の光景となった。


 「ちくしょっ、こんなはずじゃっ!?」


 「バイクンっ! 合わせるぞっ!!」


 「おうっ! 任せろっ!!」


 「ごちゃごちゃ言ってじゃねーっ! とっと死んで道を空けろっ!!」


 もはや、最後の生き残りになった男は自分が生き残るには前の二人を倒すか、突破するしか道がないと覚悟してマイクとバイクンに攻撃する。しかし、マイクとバイクンはそんな男の攻撃に合わせて動く。


 「「そーのっ、そいやっ!!」」


 <バッキンっ!! ザシュっ!!>


 マイクとバイクンの息を合わせた攻撃は、バイクンのハンマーが男の剣を折り、マイクの剣が男の腹部を切り裂くという結末を生んだ。結果、男は「ち、くしょ・・・」と言って息絶えた。


 「「よっしゃーっ!!」」


 PKを討ち倒した二人はハイタッチをする。しかし、バイクンは怪我の事を忘れていた為、ハイタッチしてすぐに「いてぇーっ! 怪我してたの忘れてたぁ~」と痛がった。


 「おいおい、大丈夫かよ?」


 「大丈夫ですかぁ~?」


 痛がるバイクンを介抱しようとするマイクとペレット、そんな三人に声がかかる。


 「そっちも終わったみたいね」


 「あっ、テルっ! 無事だったかっ!!」


 「ええ。なんとかね」


 「テルちゃん、その人は誰ですかぁ?」


 声をかけながら近づいてきたテルの後ろには見知らぬ草木を体中にくっつけた背の高い男がいた。


 「俺はティーゲル。テルの知り合いだ」


 「ティーゲル・・・? あ~、掲示板で話題が上がっていた人がそんな名前だったようなぁ~」


 「ペレット、彼を知っているの?」


 「あっ、確かに! 掲示板で男に嫉妬を集めていたヤツの名前だ!」


 「おいっ、バイクン! 失礼だろう、指さしちゃ!」


 そんな感じでテルを除く三人は、ティーゲルの名前で掲示板の事を思い出した。しかし、掲示板など見てもいないティーゲルにとっては、彼が何を言っているのか分からなかった。


 「ちょっといいかな? 君たちと話したいけど、それは後にしよう。今はこの場を離れて【リリース】に帰還する事を優先したい。何より君たちは思いのほか、疲弊している」


 「そうだな。それじゃリリースに戻るとしよう!」


 マイクの言葉に他の三人もうなずいて賛成する。


 「では、さっさと倒した連中からドロップ品を回収して、この森を出よう」


 「分かった。それじゃテル、君は君が倒したヤツから回収してくれ」


 「ええ」と言ってテルは自分が倒した男の下に行く。


 ちなみに、回収とは対人戦で勝ったプレイヤーが倒したプレイヤーの所持品からランダムに三つ得る事である。


 「・・・回復薬に砥石、魔石。こんなものね」


 テルは回収した物を物色した後、仕舞い込んで皆の所に戻る。


 「いやー、PK連中の事だから良い物はないと思っていたが、意外と収穫はあったな」


 「ああ、まさか魔宝石が手に入るとは思わなかった。たぶん、他のヤツから奪い取ったんだろう」


 そう言いながら、マイクとバイクンは笑い合っていた。そこにテルが戻ってきたので、マイク達は「どうだった?」と聞く。そして、すぐにティーゲルも自ら倒した四人の回収を済ませて戻ってきた。


 「さて、回収も終わった様だし、戻るか」


 ティーゲルの言葉にテル達はそろって「「「「はいっ!」」」」と答える。そして、暗く静かさを取り戻した森を後にした。


 特に何事もなく、【リリース】の門をくぐって夜の街並みを見たテル達は、やっと安心したのか門のそばで座り込んでしまった。


 「あははは、今日はきつかった・・・」


 「ああ、本当にな・・・。まだ、数時間しか経ってないなんて信じらんねぇ・・・」


 「今日はもうお休みしたいですぅ~」


 「はぁ・・・、もう夜の森はこりごり・・・」


 そんな風に一人一人が今回の戦いについて感想を語っている。そんなテル達を見てティーゲルは、苦笑を浮かべる。


 「はははぁ、なら今日はここで別れて、休もうか」


 ティーゲルがそう労うとテル達が慌てて立ち上がる。


 「それなら、明日の昼に改めて話し合うというのはどうですか、ティーゲルさん?」


 「ん? 私は構わないが、君たちは予定があるのではないのか?」


 「えっ? あっ、明日と言っても現実ではなく、ゲーム内の時間で明日です。ですから、俺たち一旦ログアウトして休憩した後、また戻ってきます」


 「なるほどな。・・・なら、俺も一度ログアウトするとしよう。しかし、また会うとしても待ち合わせはどうする?」


 「それなら、俺たち全員と【カード】を交換しましょう」


 マイクが言うカードとは、【パートナーズ・カード】の事でこれを交換することで、交換した相手と通信ができるという物だ。


 そして、ティーゲルの前にウィンドー画面が出てくる。


 <マイク様から【パートナーズ・カード】が届きました。受け取りますか?>

 <バイクン様から【パートナーズ・カード】が届きました。受け取りますか?>

 <ペレット様から【パートナーズ・カード】が届きました。受け取りますか?>


 三連続で来た知らせに一瞬戸惑ったが、全て受け取り、俺からカードを送った。


 「それでは、ログインしたら誰でもいいですから連絡を入れてください」


 「ああ、分かった。それじゃ、また後で会おう」


 俺はそう言ってテル達と門で別れた。【鬼酒】でログアウトするため、生産街の奥へと入っていく。


 「それじゃ、俺たちもログアウトするか。明日の昼なら一時間はあるから、各自一時間の休憩の後、また会おう」


 「おうっ、またなみんな。さて昼寝だ、昼寝だぁ~」


 「はいぃ~、では皆さん、またお会いしましょう~」


 「それじゃね。遅れるんじゃないわよ? 特にバイクンっ!」


 「なんで俺だけ名指しなんだっ!?」


 「あんたが一番、怪しいからよっ! それ以外、ないでしょっ!」


 「ちくしょうぉ~、覚えてろうよぉ~。お前なんてっ、子犬だっ、子犬ーっ!」


 「誰が背が低いですってーっ!」


 「そんな事、言ってねよーっ!」


 「何やってんだ。あいつら?」


 「仲良しさんですねぇ~。微笑ましいですぅ」


 「ペレット、あれは仲がいい訳じゃないぞ」


 「ん~?」と首を傾げるペレット。テル達は最初から最後までにぎやかに、この世界を過ごしている。




 ―――【鬼酒】―――


 鬼酒に着いたティーゲルは〝三日ぶり〟に鬼酒の扉を開く。


 「あら、お帰り。結構長く留守にしていたわね?」


 「オニメか・・・。そうだな、三日も空けていれば、さすがに帰ってくるか」


 「すまないねぇ~。知人から呼び出されていたもんでねぇ~」


 「別に構わない。誰にも予定というものがある」


 「そうかい。・・・所で、まだ泊まるのかい?」


 「んっ? 引き払うと言っていないはずだが・・・」


 「そうじゃないよ。ほら、アタイが言った泊まる条件」


 「あぁ、食材か・・・。そうだな、対価は払わないとな」


 「よっしゃっ、ならすぐに調理しようかね」


 こうして、ティーゲルは現実へ戻る前にオニメとの約束を果たす為、三日ぶりにオニメの手料理を味わった。そして、やはりオニメの手料理は中々に美味かったとティーゲルは改めて実感した。


 


 


 


 



 




 


 


 


 


 第13話、いかがでしたか?


 テル達に次々と襲い掛かる脅威、テルの怒り、姿を現したティーゲル。

 中々に戦闘描写が書きにくかったです。


 誤字・脱字のご報告、ご感想はいつでもお待ちしています。

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