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訳あり元傭兵のVRMMO  作者: 大佐
12/22

第11話 ギルドでの再会と女王と騎士

 大変、お待たせいたしました。第11話の投稿です。

 楽しんで頂ければ幸いです。


 文章を改編しました。

 【サバイバル】での買い物を済ませて店を出た俺は、当初の予定を変更する事に決めた。変更と言っても淋しくなった懐を暖める為に、【平穏の森】に直行する前に北のギルド街に行き依頼を受けようと足を向ける。


 ギルド街に到着して俺が感じたことは〝ものすごく何も無い場所〟というものだった。いや、あるにはあるがポツンと二階建ての建物とその隣に建設途中と思われる巨大な建造物があった。とりあえずは、人が多くいる二階建ての建物の方に行く。


 近づくにつれて建物の周りにいるプレイヤー達の喧騒が徐々に大きく聞こえてくる。そして、まばらにいるプレイヤー達を避けながら建物の入口に到着し中に入る。


 入口を越えた先は、広い空間がある一階で俺から見た正面の奥に10個の受付が連なるカウンターがあり、その左側奥に二階へ行く為の階段がある。そして、入口から右側に大きく長い掲示板があり、多くの紙が張り付けてある。その向かい側には小さな売店がいくつか並んでいる。


 そんなギルドの中を見回していると声をかけられた。


 「ようこそ、ギルドへ。よろしければ、ご案内と施設の説明をしますが?」


 声の方へ向き直ると、そこにはミニスカのスーツっぽい姿に、髪をポニーテールして、眼鏡をかけた<ファレスト>がいた。


 「ファレスト! ここで会えるとは思ってもみなかった。・・・しかし、チュートリアルの時とは違った衣装だな?」


 俺はそう言いながら、手を差し出すとファレストはそれに応えて差し出した俺の手を握り返す。


 「ええ。あの時は私服でしたが、今はギルドの職員なので制服姿ですが似合いますか?」


 そう言ってファレストはポーズを決めて聞いてくる。


 「ああ、似合っている。敏腕女社長のように見えて、きれいだ」


 俺がそう言うと恥ずかしくなったのか、少し頬を赤くして下に俯き、小さな声で「ありがとうございます」と言った。


 「・・・それで、ティーゲル様。よろしければ、ご案内いたしますが?」


 そして、気を取り直した彼女はもう一度そう聞いてきたので「ああ、頼む」と俺は返した。そして、「ではついて来てください」と言う彼女の背中についていく。


 「まずはこちらの【掲示板】について説明します。掲示板はご覧の通り、ギルドが発注、もしくはプレイヤーが要請した依頼を受けることができます。依頼を受注する際は、掲示板の貼ってある紙を見れば、詳細と受注選択が表示された画面が出てくるのでそれで受注してください。また、依頼達成の報酬は依頼主によって変わるので、受注の際には注意してください。そして、受注数の制限はありませんが依頼には期限がある物もあるので、受注しすぎには気を付けてください」


 ファレストの説明を聞きながら、俺は掲示板の依頼を見る。依頼には採取もの、討伐もの、納品もの、護衛ものなどがある。ただ、その中で一番端に賞金首の手配書が貼ってある部分があった。


 「賞金首のシステムがあるのか」


 「はい。この世界はプレイヤーの皆様で社会が構築されているので、どうしてもこういった方々がいると取り締まるシステムが必要になります」


 「賞金がかけられる条件はどういうものなんだ?」


 「賞金をかける条件は、基本的に敵対していないプレイヤーを一定数以上、殺害することでシステムにより自動的に【PKプレレイヤー・キラー】の判定を受けます。このPKの判定は一定の時間が過ぎると消えますが、それまでにプレイヤーを殺害してしまうと判定消去の時間がリセットされてしまいます。また、賞金を懸けられたプレイヤーを討伐するとその時点で討伐ログが現れ、報酬が支払われます。ギルドで賞金首の討伐依頼を受注した方はログだけが流れて、ギルドで報酬が支払われます。そして、討伐されたPKは懸けられた賞金は無くなりますが、PKの判定はそのまま残ります。」


 「なるほどな。しかし、結構な数の手配書があるな」


 「最初はここまで多くはなかったのですが、いつの頃からPKをする方々がパーティーを組んで組織的に活動する様になりました。おかけで護衛依頼が激増、PKパーティーとの戦闘が激化しています」


 「そうか。・・・やはりファレストはそういった人は嫌いか?」


 「そうですね。個人的には嫌いですが、結局はプレイヤーの自主的行動なので、我々運営はその行動が過激になり、他のプレイヤーに多大な迷惑が掛からないように監視する事しかできまきせん。個人的にはそんな事は早くやめて、他のプレイヤ―と仲良くしてほしいのですが・・・」


 ファレストは、憂いの表情を浮かべながらそう言う。そんな彼女に俺は「そうか」としか言えなかった。


 「それでは続いて、売店の方をご案内します」


 そして、気を持ち直した彼女は話題をギルドの案内に戻し、売店の方に歩いていく。


 「それでは【売店】について説明します。こちらは依頼の達成に役立つアイテムや道具、また携帯食料を販売しています。依頼を受注した際は、ぜひ立ち寄ってみてください」


 説明もそこそこにそう言い終わると「では、最後にカウンターの方をご案内しますね」と言ってファレストは歩き出したのでついていく。


 「この【カウンター】は依頼の達成報告や達成報酬の受け渡し、素材の買い取り、パーティーメンバーの紹介などを行っています。パーティーメンバーの紹介はギルドで名前を登録しておく事で、パーティーメンバーを必要とするプレイヤーに紹介されます。紹介されるとティーゲル様宛に通知が送られるので、通知がきた際にはギルドに来ていただければ、ティーゲル様を必要とするプレイヤーと面談ができます」


 「なるほどな。まぁ、今は必要はないか」


 「しかし、パーティーを組むことでフィールドの探索はしやすくなりますよ?」


 「なに、必要なら自分の目で探すさぁ。ゲームといえ命を預ける相手なんだからなぁ」


 そう言ってファレストの勧めをやんわりと断った。そして、俺とファレストは掲示板の方に移動して俺が掲示板の依頼を物色しながら、チュートリアル後の出来事を話していた。


 「・・・ではたった一人でラージウルフの一団と戦い、辛くも勝利したと?」


 「ああ。心臓の辺りを狙って剣を突き刺したのに、一時は暴れ続けて押しつぶされた。しばらくしてから絶命して、なんとかあの巨体の下から這い出たよ。しかし、全身がウルフの血で真っ赤になったのは初めての体験だったなぁ」


 俺はラージウルフの下敷きになり、傷口から垂れた大量の血を浴びた時の事を思い出して笑った。そんな俺の顔を見てか、ファレストは「楽しそうで何よりです」と言って微笑んでいた。


 そんな風に会話をしながら、俺は興味本位で見いた手配書の詳細に共通して【目撃地:平穏の森】と書かれていた事に気づいた。


 「PKは最近の活動地域を平穏の森にしている様だな」


 「はい。ただ、平穏の森で活動するPKはほとんどが単独で、夜に活動する様です。おかけで平穏の森はパーティーを組んで行き、活動時間は昼間に限定する事が必須になりました」


 ファレストの補足説明を聞きながら、俺は数秒だけ目を細めた。そんな俺が気になったのか、ファレストが「あの~・・・」と言って声をかけようとした。しかし・・・


 「ファレストさんではありませんか」


 ファレストの声を遮った声の方にファレストと俺は振り返る。そこにいたのは、腰近くまではある長くまばらに広がった黒い髪に、濃ゆい紫色のドレスを着た女性が立っていた。ちなみにその女性を見たファレストは明らかに嫌そうな苦笑を浮かべていた。


 「・・・ローゼリアさん。今日は担当日ではありませんが?」


 「知っていますわ。今日は一プレイヤーとして来たのです。プレイヤーからの人気が高い、あなたの仕事ぶりを見学するために」


 そう言ってローゼリアと呼ばれた女性は不敵な笑みを浮かべる。


 「そうですか。でも私の勤務姿なんて面白いものじゃないですよ?」


 「そうかしら? ・・・あれをご覧なさい」


 ローゼリアがそう言って示した方向を見るとギルドの窓があり、窓の外にこちらを見ていると思われる男たちがいた。そして、男たちの目がなんとなくだが俺に対して負の念を送っているように見える。


 「なんだあれは?」


 「あれはファレストさんのファンの方々ですわ。ああやって、毎日ファレストの仕事姿を見守り、ファレストさんの美しさについて議論をするらしいわ」


 「なんだそりゃぁ? ストーカーと変わらないじゃないかぁ」


 「以前はギルドの中でああやって集まっていたので、他の人の迷惑になると注意してから外から見るようになり良くなりましたが、やはり常に見られていると落ち着かないものです」


 「あら? それにしては気にしていない様に見えたけど?」


 「気にしない様にしていますし、こうもずっと見られていると慣れますから」


 もう呆れて完全に諦めてしまった顔をするファレストに俺は「大変だなぁ」と苦笑しながら慰めた。すると「そんな気休めはいりません」とファレストが拗ねた様に言う。


 「それはそうと、あなたはどちら様?」


 拗ねたファレストを見て苦笑してしまい、それを見られたらしく腕をポカポカされているとローゼリアがずいっと顔を寄せて来た。


 「あぁ、自己紹介が遅れたな。俺はティーゲル。こっちのファレストにチュートリアルを担当してもらった者だ」


 「そうなの。それじゃ、自己紹介してもらったから私もしなくてはねっ☆ 私はローゼリア。ファレストさんと同じく運営の者で、今日はさっき言ったとおりファレストさんの仕事姿を見学しに来たのですわ」


 「そうか。まぁ、これからよろしく。たまに会うこともあるだろう」


 そう言って俺が手を差し出すとローゼリアはためらう事なく、手を出して「ええ、よろしく」と言って握り返してきた。


 そして、たぶん気のせいだと思う俺に向けられていた負の念が強まった気がした。


 握手していた時、ギルドの入口からバンッという扉を乱暴に開く様な大きな音が響いた。その音に驚きギルド内のほとんどのプレイヤーと一緒に入口の方を見ると白銀の西洋鎧に似たものを身に着けた男がいた。ちなみに、頭はなにも被っておらず、出ているは素顔は男の俺でも美形と感じるルックスの大体20代くらいの青年だった。


 その青年はギルド内を見渡してこちらに顔を向けると笑みを浮かべた。そして、もの凄い速さでこちらに駆け寄り〝ファレストの前に〟止まる。


 「ファレスト嬢っ! またお会いできて光栄ですっ!!」


 「え、ええ。お久しぶりですエリックさん。いつリリースに戻られたのですか?」


 ファレストは迫り気味のエリックという青年に若干引き気味に対応する。


 「ついさっきです。あなたにお会いするために、力の限りを尽くしって参りました。・・・こちらをどうぞ。ファレスト嬢にお似合いと感じて買ってきたドレスです」


 そう言ってエリックは何やらウィンドー画面を操作してファレストに渡したようだ。その様子を見ているとローゼリアが腕をクイクイッと引っ張ってきたので、ローゼリアを見ると俺の耳に顔を近づけて小声で話し始める。


 (エリックのセンスは抜群よ。彼は女性の好みを把握することが得意みたいで、初対面の時は何も渡さないけど次に会う時は、必ずプレゼントを渡しますわ。私も貰いましたし、ファレストさんがチュートリアルの時に着るドレスもエリックからプレゼントよ♪ でも彼がああやってプレゼントするのは、あくまで彼が女性を大切にしようとする純粋な気持ちから出た行動らしいわ)


 (そうか。・・・しかし、なぜ小声で俺に話す?)


 (あらっ、以外と鈍感なのね♪)


 (ん?何の話だ?)と聞いても(内緒。鈍感さん♪)と言ってローゼリアは話を一方的に終える。そんな彼女の行動に不思議がっているとエリックがローゼリアを見る。


 「そしてローゼリア嬢もご機嫌よう。あなたにもお会いできて光栄です」


 ファレストと同じように挨拶すると片膝をつき、ローゼリアの手を取って手の甲に口づけをする。ローゼリアはそれに対して特に反応を示すことは無く、笑顔で「ええ、ご機嫌よう」と言った。そして、目線がこちらに向き、俺に「ん、あなたは?」と言ってきた。二人と一緒にいたのに今頃になって気づいたのかと呆れたが気を取り直して「ティーゲルだ。よろしく」と言って手を差し出す。すると彼も「ああ、よろしく」と言って握り返してきた。


 「ああっ、忘れていた! ローゼリア嬢、こちらをどうぞ」


 そう言ってエリックはファレストと同様にプレゼントを渡す。俺はその様子を(男の敵が多そうだな)と思いながら見ていた。


 「さて、当初の目的は果たしましたが、出来る事なら両婦人と一緒にお茶でもいかがでしょうか?」


 「えーっと、私はまだ勤務中なので・・・」


 「あら、さっきまで話し込んでいたのはどちら様かしら?」


 「あ、あれはギルドの案内をしていただけで・・・」


 「・・・では、ん? ちょっとお待ちください。あっ、これはどうもお久しぶりです。えっ、今からですか? しかし、今ちょうど良い所で、・・・えっ、陛下も来られるのですか? う~ん、分かりました。すぐに急行いたします」


 なにやら急用が入ってきたようで、耳に手を当てて話し込んだ後にエリックは大きく「はぁ~っ」と溜め息を吐いた。そして、すぐに姿勢を正してこちらに向き直る。


 「申し訳ございません。ファレスト嬢、ローゼリア嬢。私の所属するファミリーが他のファミリーと合同で遠征に行くそうで、合流するように言われました。両婦人との楽しい会話でしたが、仕える主が自ら出るとあらば、騎士として馳せ参じない訳にはいきません。とても残念で、悲しいですがこれにて失礼いたします」


 きれいに、切れのあるお辞儀をすると最初の時と同じく、素早い身のこなしでギルドを出ていく。というかファレスト達には挨拶をして、俺には何も言わずに行きやがった。・・・いや、挨拶されるほど付き合いがある訳ではないから特に気にしないが。まぁ、野郎から挨拶されても嬉しくないので、いいか。


 「相変わらず、慌ただしい人ですね」


 「確かにそうですわね。しかし、従順なのは高得点だけど、やはり従順すぎるのは好みではありませんわね。なにより彼は女性に対して低姿勢すぎますもの」


 「何でそういう話になるですか!?」


 「あら、たまにはこういう話もいいでしょ? ファレストさんはただでさえ、こういった話をしないのだから」


 「だからって、なにもティーゲル様がいる傍で話し始めなくても・・・」


 「んっ、俺がどうかした?」


 「いえっ、何でもありません!? 気にしないでくださいっ! それよりも受注する依頼は決まりましたか?」


 「えっ、いや、まだだが・・・。」


 「なら早く決めてしまいましょう。依頼の中には一つしかないレアなものもありますからっ!」


 そう言ってファレストは俺の背中を押して、何かを隠すように掲示板の方に連行して行く。


 そんな俺たちの姿を見ながら、ローゼリアは微笑んで小さく呟いた。


 「・・・今まではありませんでしたが、これからはそういった話も聞けそうね♪」


 その後、とりあえずは採取と討伐の依頼で期限が無いやつを受注した。受注した後、俺は予定があるからと言い、二人の見送りを受けながらギルドを後にした。・・・ギルドを出てすぐの所でファレストと見ていた一団と目が合い、全員に睨めつけられた挙句に誤差の無い舌打ちの合唱を浴びせられた。


 俺はそんな彼らの行動に理不尽すぎると思ったが、同時に人は負の感情でシンクロできる事に呆れをとおり越して感心してしまった。



 


 







 

 


 

 第11話、いかがでしたか?

 久々のファレストさんの登場でしたが、今回は受付嬢の様な立ち位置でお届けしました。


 誤字・脱字のご報告、ご感想はいつでもお待ちしています。

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