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2姫様の護衛侍女と女近衛騎士様

「ねぇ、侍女殿。こんな物騒なものを隠して、悪い子ね……」


清楚な顔で妖艶に笑う女近衛騎士。人気のない給湯室で壁に押し付けられています。お仕着せに忍ばせた暗器にどうして気付かれたのか?


特に対立しているわけでもない、他国の王宮に暗器を忍ばせて入城したのは失敗した……でも、暗器をいままでどんな優秀な騎士にも見抜かれたことはなかったのに。自国の騎士が節穴なのか、この女近衛騎士が凄いのか


「何かわが国を探っていらっしゃるの?……そんな事していないわよね、ただの姫様の隠密……と言うより、秘密の護衛さんというところかしら。毒もぬっていないですし」

「!!」


いつの間にか暗器を手にする女近衛騎士。駄目だ、実力が段違いだ……諦めたわたしは護衛侍女だと告げる。特に何かを探っている訳ではなく、何かあった時わが身を投げ出し主を守る、ただの捨て駒だと


「素直な子はお姉さん、大好きよ。……こういう物は申請してくれれば、携帯を許可されるわ?私が申請しておいてあげるから、私のお願いを聞いて下さる?」

「お願い、ですか……」


何をお願いされるのかと思ったら、第2席上級女官殿の国での評価を聞かれた……って、あの『お嫁さんにしたい令嬢ナンバーワン』に輝いた事?でも、あれって若い従者や騎士たちが投票していたものではなかったっけ?


わが国は《3の国》で1番上下関係を気にするという、高位貴族は下位貴族・騎士・魔法使い・神官・庶民を人間とは思わない傲慢の国……と言うのは一昔前の話。近年、そういう気質は薄れていっているのだが、順番をつけるのが好きなのは変わっていない。美味しい菓子は、かっこいい騎士様は……等々、軽い話題のものだけどね


でも、そんなこと聞いてどうするの……?


余程情けない顔をしていたのだと思う、女近衛騎士は柔らかな微笑みで


「大丈夫、悪いようにはしないから。そちらの第1席上級女官殿と第2席上級女官殿は素晴らしい女官だわ、それを姫様がご理解出来ているのかとても興味があるの」

「お二方とも優秀な上司です。それ以上はご容赦を……」

「優秀な上司でもあれなのね。……ふふ、ありがとう。参考になったわ」


手を緩めて下さり、暗器を手渡される。ペコペコと頭を下げまくり逃げたその後はなるべく女近衛騎士に出会わないようにこそこそとしていたのだが


とうとう姫様が、お茶会で言ってはいけないことを言ってしまう事件が発生、やんわりと強制退出させられて客間へ戻ってきたときから、嫌な予感はしていた。先導していたのが、あの女近衛騎士だったのだ……にっこりと黒い笑みを私に投げかけながら戻って行った。怖ッ!!


苛立つ姫様を見て、第2席様が第1席様にお茶の支度をしてくると小声でいい外へ出ていく。第2席の淹れるお茶はとても美味しいので、少しでもお怒りを鎮めようとしたのだろうけど、完全に逆効果だった


「仕事を忘れて男漁りでもしていたのかしら?男にうつつを抜かして、媚を売って、とんだ阿婆擦れね!!」


姫様はイライラを、戻ってきた第2席様へとぶつける、どうしてそこで男漁りなんてでてくるのだろうか?


そう思っていると、姫様は近くにあったクッションを投げつけ更に言う


「お前など、遊ぶのに丁度良い下級貴族の娘なのだ。持ち上げられていい気になって、捨てられるのが関の山だ。妻になど望まれる訳がないのに愚かな女!!」


持ち上げられてって、もしかして『お嫁さんにしたい令嬢ナンバーワン』に輝いた事を知っているのか?


誰がそんな事吹き込んだんだ。それにそんな事、高貴な姫様が気にしてどうするの?そもそも第2席様は伯爵家令嬢だから、下級貴族ではないのだけど……あぁ、もう意味わかんない!!


無表情な第2席様を見て、確実に彼女の心は姫様から離れていったのを感じた。だってわたしもそうだからね……




結局、姫様のお茶会で言ってはいけないことの賠償として、第2席様の身柄をかの国に引き渡されたのだ。そのまま国王の養女となり公爵家へと降嫁されるというトンデモ結果に


姫様一行が北上して次の国に入った頃、女近衛騎士から手紙が届いた。どういう伝手で届けられたのか、気が付いたらポケットの中に入っていたのだ、怖ッ



『ご協力ありがとう、何か困ったことがあれば可能な限りお手伝いいたします』



そして文末には公爵家令嬢の署名が入っていて、読み終わるとキラキラと輝きながら溶けていった


あぁ、あの女近衛騎士は公爵家令嬢だったのか……。早い話が第2席様を嫁に欲しくて、周りの評価と姫様の評価が知りたかったと。姫様のあの罵声の後、意外にもすっきりとしていた第2席様は、女官を辞めるつもりだったのだろう。そこを上手く捕獲した


怖ッ、高位貴族って!!わたしも身の振り方を考え直したいけど……なんて考えていたら



「ねぇ、お嬢さん。こんな物騒なもの持って、なになに?暗殺者?」



次の国でも似た様な感じで、男性騎士に壁に押し付けられていました……。

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