21話
タッタッタッタ……
追いつけないほどの早足。 そんなに悪くなってしまったのか……?
「……何があった……?」
聞かないと という俺の欲望に負け、言ってしまった。
秋山の足は変わらず 早足。
「君が……学園を出たあとだ」
「ねぇ!! 知ってる? あの龍雅 棗が 追い出されたんだって」
「マジかよ!!? 校長なにかんがえてんだ」
「陣内先生がいなくなっちゃったばかりなのに……」
学園中に珍しく広がった噂。
『龍雅 棗が追い出された』
「あの人は……何を考えているんだ……」
かすれた小さな声で 秋山は言う
これは絶対に裏がある。
おかしいだろ…… 陣内先生がいなくなり、まきちゃんもいなくなった後だ。
どうしたもんか……
ガサガサッ……
すぐ隣にあった草むらから大きな音がした。
「……誰かいるのかい?」
声を出したあと、いきなり草むらが動かなくなった。
だが 下の方から なんとも小さい、そして血まみれの手が出て来た。
秋山は恐る恐る草むらの上を覗いた。
そこには……
「なっ……夏香ちゃん!!?」
川村 夏香
つい先週までまきちゃん達と戦っていたあの川村兄妹。
なぜこんな草陰にいるんだ……? なぜこんなにもの傷を耐えてきたんだ……?
「あっ……秋……山」
彼女の声は 今にでも消えてしまいそうな微かな声
「なんでこんな所にいるんだ!!? そんな傷でずっとここにいたのか!!?」
わかってる。
分かってる。……が どうしても声がおさえきれなかった。
「秋山……お願い 助けて……」