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実験台の女騎 ――赤い夢の復讐――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第1章 殺戮の嵐 ――連合軍・パスリュー本部――
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第3話 ボクは腐っている

 【パスリュー本部 エリア44 司令室】


「ひぃぃっ」

「う、うわぁッ」

「やめろ、やめろぉっ!」

「た、助けてっ!」


 血が舞い、人の体が千切れ飛ぶ。悲鳴と絶叫が広い部屋に響く。黒い服を着た幹部たちは次々とその場に倒れ、動かなくなる。

 パスリュー本部エリア44の司令室。広い部屋の周囲にはコンピューターが並び、何かが表示され、部屋の至る所に机のような立体映像投影機が並び、不気味な蒼い光を放っている。


[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]


 私は後ろからアサルトライフルを使い、射撃しながら近づいてきた人間型軍用兵器――“バトル=アルファ”を振り向きもせずに破壊する。

 私は手をかざす。逃げ惑う幹部の1人の体が腹部で横に斬れ、血が飛び、上半身が机の角にぶつかって落ちる。


「ぐぇッ!」

「あぁッ!」

[破壊セ……]


 はははッ! みんな死んでしまえ……!


「う、うわッ!」

「ひぃっ、殺せ!」

[攻撃セヨ!]


 どいつもこいつも連合軍の人間。私を実験体として扱った連中。情けなどかけてやる必要などない。殺されて当然の人間なんだ。

 部屋の角に吊り下げられていた監視カメラが濃い灰色の床に落ちる。ほぼ同時に近くにいた幹部2人の首が飛ぶ。


「ぐぁぁッ!」

「あぁッ!」


 警備兵や幹部。機械のバトル=アルファ。それらを私は次々壊していく。超能力で一瞬だ。金属であっても楽に斬れる。

 私は慌てふためく1人の女の前に飛ぶ。彼女は私の姿を見るなり腰を抜かし、その場に倒れる。涙目になりながら、私を見上げる。


「ち、ちがっ、私! 助けて! 殺さないで! 死にたく、死にたくな、ないッ!!」


 彼女は顔を激しく横に振りながら手の平を私に向ける。激しく震えていた。私は無表情で彼女に手をかざす。腕が吹き飛び、胴体が下半身と上半身で斬り裂かれる。上半身が転がる。胸ポケットからIDカードが転げ出る。

 私は血が付いたそのIDカードを取る。レイ=クライフ。25歳女性。連合軍の幹部秘書か。それだけ確認するとIDカードを捨てる。


「終わったぞ、ツヴェルク」


 私はそう言うと口の端に付いた返り血を舌で舐める。薄らと血の味がした。

 ツヴェルクは壁側にある大型コンピューターの操作パネルに、もたれ掛るようにして死んだ連合軍幹部の死体をどけると、素早くコンピューターを操作する。

 私の目的はここから脱出する事だ。ここの人間を全員殺してもいいのだが、流石にそれは不可能だ。兵士だけで何万人もいる。そこに将校と幹部やその他の人間を加えたら10万人にはなるだろう。バトル=アルファのような軍用兵器も何万体といる。

 私は将校の1人が羽織っていた黒色のコートを剥ぎ取るとそれを着る。更には腰に付けていたアサルトソードと呼ばれる剣を取り、自分の物にする。


「ふぅ……」


 私は机の側にあったイスに座り込む。ヒンヤリとした感覚が伝わる。そういえば何も履いていなかったな……。

 エリア48から44まで超能力だけで突破してきた。殺した人間の数はとっくに100人を超えているだろう。さすがに私も疲れた。何時間も戦い続けているのもあるが、超能力はけっこう体力を使う。


「…………」


 机に突っ伏す。急に眠くなってきた。ツヴェルクの方を見る。彼は一生懸命、コンピューターを操作していた。まだまだ時間がかかりそうだな。

 彼は最初、兵士と同じく私を捕えに来たのかと思った。だが、そうじゃないらしい。もし、私を捕えに来たのなら、あの時、私が手をかざした時点で逃げ出していただろう。彼は逃げなかった。逃げずに私に近づいてきた。


「もし、敵が来たら私を起こせ。みんな殺してやるから」

「はい、No.1」

「…………」


 私の名前、No.1じゃないんだがな……。そんなことを思いながら意識は深い眠りへと落ちていった。ここで寝るのは危険だが、体力回復させないと後が持たない……。



◆◇◆



 No.1は寝てしまった。ボクは黙々とコンピューターを操作し、各エリアのロックとセキュリティシステムのハッキングを試みる。

 No.1の本当の名前をボクは知らない。ボクがここに来た時からみんな彼女のことを「オリジナル」や「No.1」としか呼んでいなかったからだ。


「ごめんなさい……」


 ボクはつい呟く。彼女が起きている時だったら到底言えない。もし、ボクのしたことを言えば、彼女はボクを殺すだろう。絶対に……。怖くて言えない。

 でも、いつかは聞かれるだろう。――なぜ、私を助けた?、と。そうなった時、ボクはどうしよう。真実を打ち明ければ、絶対に殺される……。


「ごめんなさい、ごめんなさい……」


 涙に視界をぼやけさせながら、ボクは何度も言う。小さな声で。死にたくない。でも、ボクのしたことは最低だ。

 頭の中で暴れる声。悲鳴と許しを乞う女の子たちの声。このオリジナルであるNo.1の“クローン”たちの声。量産されては苛酷な運命で殺されていく女の子たちの声。



――攻撃セヨ! 破壊セヨ!


「いやぁッ、もうやめてッ! 許してぇッ!」


――グォォッ!


「苦し、いッ! 死にたく、ないッ……」


――被験体No.118死亡。


「やだよっ、やだぁっ!!」


――ミッション:テトラルを開始せよ。


「死にたくないよッ! 助けて、助けてッ!」



 ――ボクは腐っている。ごめんなさい、No.1。ボクは……。





































 生きるべきじゃありませんでした。

◆No.1(フィルド)のクローン

 ◇フィルドのDNAをベースに作り出された人工の生命体。

 ◇過酷な実験や訓練で多くが殺されている。

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