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実験台の女騎 ――赤い夢の復讐――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第6章 命の価値 ――連合軍・パスリュー本部――
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第17話 残念だ

 【パスリュー本部 エリア3 廊下】


 俺は走りながら裸の女クローン共を斬り殺していく。6本の腕と剣。それがあれば、走りながら廊下の敵を殲滅する事が出来た。


[レベル3のメイン・プラットホームに軍艦3隻を着艦させました。全バトル=アルファ起動! 反乱クローンを掃討開始します!]


 通信が入る。ヘリポート及び格納庫があるのはエリア1~エリア10。それ以下は地下となる為、格納庫はない。

 今、ティワード総統の軍と俺の軍、メタルメカ将軍の軍で反乱クローン共の制圧に当たっていた。軍艦30隻。兵力は60万。


[エリア1とエリア2の反乱を鎮圧しました。また、電力の回復したエリア31~エリア50までの反乱も鎮圧完了しました]


 クローンの反乱から5時間。主力軍の増援でクローン共の反乱は沈静化されつつあった。

 メイン発電エリアが破壊され、全エリアの電力は停止。今は予備電力とサブ発電エリアの電力で比較的被害の少ないかつ重要エリアのエリア31~50の防御システムと稼働させ、隔壁を作動させた。このシステムとケイレイトの部隊、パスリュー本部警備軍により、反乱は鎮圧された。


[バトル=オーディン将軍! エリア6~21の反乱も鎮圧されました!]

[ご苦労。残りの反乱もすぐに鎮圧せよ。抵抗するクローンは皆殺しにしろ]

[イエッサー!]


 俺はバトル=コマンダーに命令すると、6本の剣に付いた血を振り払って歩き出す。俺の鋼の身体にも無数の血が付いていた。クローン共の血だ。

 チラリと廊下の端の方を見る。身体能力を下げられる特殊な手錠をハメられたクローンが3体いた。さっきまでの威勢は消え、お互い抱き合いながら震えていた。


[お前たちの反乱もこれまでだ。エリア25に集結している仲間も、降伏か処刑かだろう]


 エリア25にはパスリュー本部の最高司令室がある。すでに最高司令室との連絡は途絶えている。恐らく全員が殺されたのだろう。


[エリア27~30の反乱を鎮圧しました]

[エリア22~23の反乱を鎮圧しました]


 蒼い立体ホログラムに投影されるバトル=コマンダーやバトル=アレスの姿。所詮クローンも生き物。その力は無限ではない。体力切れで勢いを失いだしているのであろう。残りも少ない。この反乱を鎮圧すればティワード総統もお喜びになるだろう。


[メタルメカ将軍の部隊をエリア3~4に、ケイレイト将軍の部隊と生き残っているパスリュー警備部隊はエリア27に、ティワード総統の部隊はエリア26投入せよ。俺はエリア25へと向かう]

[イエッサー!]


 剣についた血を振り払うと、それを鞘に収める。俺は自分の軍にエリア25へと進軍するように伝え、エレベーターへと向かう。反乱は終わりつつあった。



◆◇◆



 【パスリュー本部上空 総督艦 最高司令室】


 わたしは最高司令室の椅子に座り、バトル=コマンダーたちからの報告を聞いていた。反乱はほぼ鎮圧されてきたらしい。

 だが、被験体No.1は軍艦5隻を墜落させ、逃走した。それはわたしの予測を遥かに超える事態だった。あの女の能力は加速度的に成長している。5メートルしか攻撃範囲のなかった超能力は何百メートルにも伸びている。


「…………」


 もしかしたら、あの女にはもう、どんな兵器も、どんな大軍も通用しないんじゃないのだろうか……? このまま成長すれば、あの女は……。


[ティワード総統、パトフォー閣下からの連絡が入っております]

「繋げろ」

[イエッサー]


 わたしの目の前に蒼い立体映像が表示される。ローブを纏い、サングラスをした男。パトフォー=ラグナロク。連合軍のリーダーだ。わたしはいつものように彼の立体映像の前にひざまずく。


[ティワード総督、報告はまだか? 少し遅いようだが?]

「申し訳ありません、パトフォー閣下。まだ、反乱を鎮圧出来ず――」

[反乱など俺にはどうでもいいことだ。それよりも、フィルド=ネストの確保はどうなった?]

「そ、それが……」


 わたしは震える体で言葉を絞り出す。


「パスリュー本部より逃げ失せました……」

[ほぅ……。俺がお前に失望するのはこれが初めてではないが、それを勘案しても残念だ。あの女の価値は連合政府兵の何百倍もある。お前のクズみたいな命よりも、な]

「申し訳ありません、閣下……! 彼女が死ぬ前に、必ずやもう一度、捕まえてご覧に入れます」

[……あまり期待は出来そうにないが、そういうことにしておいてやる。無能なティワードよ]


 そうおっしゃると、パトフォー閣下の姿は消える。わたしは額の汗をぬぐい、呼吸を落ち着かせながら、椅子に座り込む。

 命の価値……。パトフォー閣下にとってフィルドの命はパスリュー本部の何倍もあるのだろう。バトル=オーディンやわたしなど彼女の命と比較すれば、ゴミクズ同然なのだ。


[ティワード総統]

「オーディン将軍、反乱を鎮圧したのか?」

[はい。クローンの反乱は制圧されました]


 血まみれの体で報告するバトル=オーディン。パトフォー閣下にとってなんの価値もない勝利。死んだクローンや連合政府兵の命などゴミクズ同然……。

 急速に成長したあの女を捕まえるのはもはや不可能であろう。だが、不可能でもやらねばならぬ。パトフォー閣下の命令は絶対だった。

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