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実験台の女騎 ――赤い夢の復讐――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第5章 壊れゆく心 ――連合軍・パスリュー本部――
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第13話 ヘル=フィルドってなんだ?

 転がっていたバトル=パラディンの首が、飛んできた火炎弾によって焼き壊される。それと同時に槍を振り回していたバトル=パラディンは機能を停止し、その場に倒れる。

 私は後ろにいるバトル=メシェディを蹴り倒し、その手を振りほどく。バトル=メシェディはその場に尻餅をついて倒れ込む。


[あ、ケイレイトしょ――]


 私は超能力でバトル=パラディンの頭部を真っ二つに斬り裂く。続けてケイレイトの首を斬ろうと、手を向ける。

 だが、それとほぼ同時に彼女は空中に飛び上がり、私との間隔を5メートル以上空けてしまう。その背中にはいつの間にかジェット機が背負われていた。


「No.1!」

「お前はセイレーンを拾ってガンシップにへ急げ! もう離陸しろ!」

「えッ!? でも――」

「私なら飛び乗れる!」


 私はツヴェルクに怒鳴りながらケイレイトに向けて5発の衝撃弾を撃つ。白い球体が飛んでいく。彼女はそれに向けてブーメランを投げる。全ての衝撃弾が爆発する。チッ……!

 手に魔力を溜め、今度は電撃を繰り出そうとした。その時、視界の隅にあるものが映った。大型の黒い飛空艇。連合軍の軍艦の艦隊だ!


「エリア3の第4緊急エアポートに軍艦を1隻回せして! このままだと逃げられるッ!」

[――で―? ―――?]

「こんなときに通信エラーなんて……!」


 空に浮かぶ無数の大型飛空艇。連合軍の軍艦。その数は10隻以上はあった。その後ろにはまだまだあるのだろう。軍艦の中には当然のことながら、小型の戦闘ヘリやガンシップが収納されている。追われながら逃げることになりそうだ……!


「パスリュー最高司令室! 軍艦を1隻をレベル3の第4緊急エアポートに回すように伝令を!」

[あ、ケイ―ト将――! 援軍――]

「えっ、何を言っているの!?」


 ケイレイトはまた通信トラブルか。さっきの私の巨大衝撃弾でエリア:オーロラをぶっ壊した際に通信システムを壊しちゃったかもな。

 私がガンシップに向かおうとした時だった。大型のエレベーターが開き、中から新手の敵が現れる。20体ほどのバトル=アルファと2人の軍人。そして、黒い円柱のボンベ。なんだアレ?


「ケイレイト将軍! ご無事ですか!?」

「…………! サーベ、ゴーギル、“それ”は……!」


 “それ”ってどれだ? ……あの円柱のボンベの事か? 私は無視して飛び立とうとするガンシップに向かう。だが、ケイレイトの言葉で私の身体は止まる。


「“ヘル=フィルド”を持ち出したのは誰の命令……?」

「…………?」

「ティワード総統のご命令です」


 金髪の蒼い瞳をしたサーベという男性が答える。服装から上級将校だろうか? マントのような白いコートにキレイなバッジが付けられていた。長髪の頭には黒い帽子。ゴーギルは黒の長髪にメガネ。瞳の色は緑。服装はサーベと同じだった。


「おい、ヘル=フィルドってなんだ?」


 私は空中を飛ぶケイレイトに向かって低い声で言った。ぎゅっと拳を握る。何か、イヤな予感がした。彼女は答えずに顔を背ける。代わりにゴーギルが口を開く。


「新しい“生物兵器”さ」

「そのボンベが生物兵器だと? どっからどう見てもただのボンベじゃないか」


 ……そう、ただのボンベだ。……なのになんでこんなにイヤな予感がする? 何が気になるんだ? 放っておいてさっさとガンシップに乗らなきゃいけないのに……。

 ボンベにはNo.321362と書かれていた。それがますますイヤな予感をさせる。私のクローンも同じようにNoで管理されている。

 …………。……気のせいだ。あんな小さいボンベに人は入れない。大きさは140センチほどしかないボンベだ。人は入れない。


「……あ? 停電? それぐらいで連絡してくるな。……は? なんて言った? よく聞こえないぞ?」


 サーベの言葉で私ははっと我に返る。そうだ、早くしないと軍艦がやって来る。もうすでにガンシップは離陸している。


「お前たちに私は捕まらない。残念だったな」


 私は彼らに背を向けようとした時だった。私の体を1本の雷が貫いた! その威力はあまりにも高く、一瞬意識が飛んだ。私はその場に倒れる。


「がッ、ハッ――」

「オイオイ、挨拶なしで行くのかよ」


 サーベの冷たい言葉が後ろから聞こえてくる。私は必死で意識を保つ。フラフラになりながらも、なんとか立つと魔法シールドを張る。


「ハ、ハハッ、そんなに挨拶が欲しいならしてやるよッ!」


 私は笑みを浮かべながら大きく床を蹴って飛ぶと、サーベとゴーギルに向けて手をかざす。だが、2人は知らないのか全く恐れる様子はなかった。消えろ――!


「――No.362、“キャンセル”しろ」


 それと同時に私の超能力は見えないシールドによって防がれる。それどころか私の身体も何かによって弾かれる。空中を舞い、地面に強く背中を打つ。痛みが走る。


「クッ……! な、なんだっ、挨拶はいらないのか!?」

「……挨拶? あぁ、そりゃぁ、“コイツ”にしろよ」


 そう言うとサーベはボンベの上に手を置く。コイツ? ボンベに?


「チッ、あの実験体なんも分かっちゃいねぇぜ」

「じゃ、“中身”を見せりゃぁいいだろ」


 中身? ウソだ、ウソだ……。あり得ないッ!


「いや、大方予測はついてんだろ? これの中身」

「何を言ってる!? あの中に人が入れると思うのか!?」


 もはや震え声だった。何が入っているのか、予測がつきそうだった。いや、何となく分かっていた。でも、それを認めたくはなかった。


「よかったなぁ、お前は。また1つ、連合軍の生物兵器に詳しくなれるぞ」


 サーベが左腕に付けた小型コンピューターを操作する。ボンベの側面がゆっくりと開いていく。そこにあったものは想像よりも酷いものだった。


「…ぁ、あぅ……、…助け、っ…。もう、殺し……て」

「…………ッ!?」


 ボンベの中に入っていたのは、手と下半身を完全に切除された私のクローンだった――。

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