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実験台の女騎 ――赤い夢の復讐――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第4章 繰り返される悲劇 ――エリア:オーロラ――
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第11話 また助けられなかった

 群がる敵兵を超能力と魔法で倒し、私たちは走り続けていた。次のゲートを開け、エレベータに乗れば、ヘリポートに辿り着けるらしい。あと少しで脱出できる……!

 目の前の兵士が斬り裂かれる。赤い血を撒き散らし、その場に倒れる。だが、それと共に彼の後ろから紫色の電撃が飛んできた!


「…………!」


 私は素早く身をかがめる。電撃は後ろに迫って来ていたハンター=アルファを一撃で吹き飛ばす。なんて力……!

 それを見た私はさっと前を見る。その瞬間、何者かによって私は蹴り上げられる。体が宙に浮かぶ。その体に雷を落とされる。


「クッ……!」


 魔法シールドでも防ぎきれない! 威力が強すぎる! これほどの威力を持つ魔法を使えるのは只者じゃない……!

 私は身をよじり、下の方を見る。1人の少女がいた。黒いヘッドアーマーをし、胸に黒いレザースーツを纏った女……。


「邪魔だ!」


 私は彼女に向けて超能力を放つ。その瞬間、彼女は素早くジャンプし、私の攻撃を避けた。地面に鋭い亀裂が入る。

 避けた……!? 避ける際、ヘッドアーマーの下から赤茶色の髪の毛が見えた。だが、ジャンプして避けた彼女が再び生きて地面に立つ事はなかった。

 露出した白くてキレイな肌の腹部に銃弾が浴びせられる。そこから赤い血が飛ぶ。アリナスの銃撃だった。彼女はそのままバランスを崩し、床に落ちる。


「行こう!」

「あ、ああ……」


 私は落ちたさっきの少女をチラリと見てから、群がってくる敵兵を一気に超能力で斬り倒すと、再び駆け出す。

 さっきの少女、一体何者なんだ? 普通に魔法を使って来た。あれほどの威力を誇る魔法を使えるなんて……。それに私が手をかざしただけで、何をするのか分かったらしい。アレはどういうことだ……?


「ぐぁぁッ!」


 アリナスが悲鳴を上げ、その場に倒れる。私は背筋が凍りついた。アリナスの右腕が斬れ飛んでいた。彼女の右腕はそのすぐ側に転がる……。


「アリナスッ!」


 私は素早く彼女の前に立つ。剣士なら……。…………? 超能力で近くの敵を一掃する。でも、剣士なんてどこにもいなかった。なんで? アリナスは間違いなく斬撃を受けたハズだぞ……?

 その時、信じがたいものを私は見た。さっき、死んだハズの少女が目線の先に立っていた。ど、どうなって……!?

 彼女は私に向かって走って来る。私たちに向かって“手をかざす”。……は? 私はジャンプする。すぐ足下の地面に亀裂が入る。……私と同じ超能力だと!?


「どうなってる……!」


 私は素早く彼女に向けて冷凍弾を撃ち込む。だが、彼女は素早く避ける。私は空中に飛び出した彼女に向けて衝撃弾を撃つ。

 爆発と共に、彼女の体は地面に叩き付けられる。倒れた彼女に冷凍弾を撃ち、凍らせる。そして、破壊弾を撃った。凍り付いた彼女の体は砕け散る。これで、確実に死んだハズだ。


「アリナス!」

「うッ、ぐぅッ……!」


 私はまたやって来た敵兵に向けて巨大衝撃弾を撃つ。これでしばらく時間を稼げる。そして、おびただしい血を流す彼女の体を抱き抱える。彼女の左手にはまだアサルトライフルが握られていた。

 私はアリナスを抱きかかえ、なんとか立たせる。マズイ、このままだと……!

 その時、アリナスが私を押しのけ、アサルトライフルの銃口を空中に向けて連射した。悲鳴が上がる。何かが私の足元に落ちてきた。


「そ、そんな、バカな……!」


 落ちて来たのはさっきの少女だった。バカな、粉々になって死んだハズじゃ……! これで3人目。再生する能力を……?

 そこまで思った時、私はある事に気がついた。死んだ彼女からヘッドアーマーとサングラスを取る。……そこにあった顔。それは“自分自身”だった……。


「そういうことか……!」


 エリア:テトラルで私は自分自身のクローンに会った。No.251だ。コイツは恐らく、完成した私の戦闘用クローンなんだ……! まさか、私のクローンまで投入されているなんて……。

 私はアリナスを抱き抱え、歩き出す。だが、その目に迫りくる敵兵たちが見えた。バトル=アルファや兵士たち。後ろにも同じように敵兵。それに私のクローンが2人もいた。


「クソッ……!」


 アリナスを守りながらこのエリアを突破するのはもはや不可能……なのか? いや、私は絶対突破してみせる! もう、連中の実験台になるか!

 私は再び魔力を溜めていく。その時、アリナスが私の手を振りほどいた。


「…………!? アリナス?」

「……行って。私が後ろを何とかする」

「な、何を言ってるんだ!?」

「…………」


 私の問いに彼女は何も答えなかった。その手には兵士から奪ったと思われるハンドボムが握られていた。まさか……!


「さようなら――」


 アリナスが走り出す。私の2人のクローンが高く飛び、アリナスに迫る。手がかざされる。それと同時に彼女はハンドボムのスイッチを押した。

 爆発。私のクローンを巻き込み、後方の敵は多くが吹き飛んだ。私は下唇を噛み締め、拳を握る。“また”助けられなかった――。


「クッ……」


 私はずっと溜め続け、強大な威力を持った衝撃弾を後ろに向けて、怒りと共に撃ち放つ。今までとは比べものにならない程の衝撃弾が飛び、爆発した。

 私の体は遥か高い空中へと吹き飛ばされる。飛ぶ先はゲート。耳が痛くなるほどの轟音。地面の方を見れば床が砕けていた。度重なる衝撃に耐えきれなかったのだろう。

 私は崩れ落ちゆく瓦礫から瓦礫へと飛び移り、ゲートの前まで飛ぶ。さすがにゲート前の床は崩れてはいなかった。


「…………」


 後ろを振り返る。壁や天井さえも崩れ、多くの軍用兵器や兵士達がそれに巻き込まれていく。――アリナスを失ってしまった……。

 私はぐっと涙を堪え、ゲートを開ける。ツヴェルクやセイレーンはどうなったのだろうか? 2人も死んでしまったのだろうか……?



 私の周りではよく人が死ぬ。オリジナルのアリナスもクローンのアリナスも死んだ。自分自身のクローンであるデミ・フィルドやNo.251も死んだ。

 あの子まで、――パトラーまで失ったら私はどうなるのだろうか? それが怖い。彼女を失いたくない。死なせたくない。絶対に――……。

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