活動1日目その②
はんなりまったりしてってください(*´∀`*)
3
新ノ介先輩も家から帰ってきておれたちはリビングに置いてあるソファーに座っている。
「よし、んじゃあみんな揃ったところで今回の計画を発表するぞ」
宏一先輩の言葉におれたちはそれぞれうなづく。
「今日の活動、それはクリスマスイブを盛り上げることだ!!」
……は?
確かに今日は12月24日。クリスマスイブだけど……。
おれが首をひねっていると新ノ介先輩が納得したような顔をした。
「なるほど、やからあんなん作れって言うたんか」
「え、宏一先輩に何か頼まれてたんすか?」
「あぁ、まぁな――」
何か続きを言おうとする新ノ介先輩を宏一先輩が手で止める。
「内容全部バラしちまうんじゃ、面白くねぇだろ?」
宏一先輩がそう言うと新ノ介先輩は素直に黙る。
「菊太郎先輩は何するか知ってるんすか?」
おれが尋ねると菊太郎先輩は華麗に前髪をかきあげながら言う。
「さぁね、宏一はたいてい何も教えてくれないんだよ、こういう時は素直に諦めて言われた通りのことをしてる方が賢い選択だと言えるのさ」
つまり、今この時点で今日の活動がわかっているのはその計画をたてた宏一先輩と、その計画に必要なものを作った新ノ介先輩だけってことか。
サークルメンバーにも教えてくれないなんて一体どうやって活動するつもりなんだろう?
4
おれらは今駅前の大広場にいる。
「いいか、制限時間は午後5時。集合はここだ。じゃあ解散!」
そう言って宏一先輩が手をパンッと叩く。
おれたちはその合図で広場から小走りでバラバラに分かれた。
何故今おれたちがこんな所にいるのかと言うとそれは30分ぐらい前、アジトでの話……。
「今回まず1つ目はできるだけ多くの人、できれば子供を駅前の大広場に集めるんだ」
駅前?
確か、今駅前の大広場にはクリスマスシーズンということで大きなクリスマスツリーがかざられている。
でもそんな所に人を集めて何をするつもりなんだ?
しかも子供?
「大人はダメなのかい?」
菊太郎先輩が質問をする。
「いや、大人も大歓迎だな。けどあくまで子供優先だ」
「ノルマは何人くらいや?」
今度は新ノ介先輩が質問する。
「ノルマは200人以上だ。それぐらいの人数なら広場に入れるだろ?」
宏一先輩が菊太郎先輩の方を見る。
「全然余裕だね。あの広場は最高500人が入れるようにしているんだから」
ん? この言い方――。
「もしかして、あの広場ってまさか……」
「あれ、なんだタロウは知らなかったのか? あの広場は菊太郎の会社が作ったんだぞ?」
「……えぇ――――!!?」
さ、さすが日本1,2の大企業。
どこにひそんでいるのかわかったもんじゃない。
「で、集めんのはええけどなんて呼び集めればええんや?」
新ノ介先輩が話を戻す。
「あぁ。別にすぐ集めて欲しいんじゃないんだ。『今日の午後9時。奇跡を見たい奴は駅前の大広場に集まれ』そう言うだけでいい。その後のことはその時になったら話す」
そう言って宏一先輩がニヤリと笑う。
キセキ?
……ということで、おれたちは宣伝するためにここにいるのだ。
まったく、本当に宏一先輩は何を考えているんだろう。
奇跡なんて……。
……。
う~ん、やっぱり考えるってことはどうも苦手だなぁ。
そう思っているとおれの横を通り過ぎた高校生のカップルの会話が耳に入ってきた。
「広場のツリー、本当だったね」
「あぁ、一番上の星がなくなってたな」
え?
「この前友達と来たときはあったのになぁ。どこ行っちゃったんだろ」
「さぁな、風にでも飛ばされたんじゃねぇの?」
「あ、あの!」
おれは話が気になってカップルに話しかける。
「ほ、星がなくなったんですか?」
ただ話すだけなのに相手が高校生だからか、すごく緊張する。
カップルは少しキョトンとした顔をしてからおれの質問に答えた。
「えぇ。2,3日前ぐらいかな、大広場のクリスマスツリーの一番上の星が消えたっていううわさが流れたのよ」
「それで俺たちも確かめたら本当だったって訳、星が見つかったっていう話は聞いてないから、まだ見つかってねぇんじゃないかな」
「それがどうかしたの?」
「あ、いえ。ありがとうございました。……えーと、それじゃ!」
そう言っておれは走ってその場を逃げるように去った。
あぁー。緊張した。
人と話すのは結構得意だと思ってたんだけどなぁ。
それにしても広場の星がなくなってたなんて全然気づかなかった。
まぁツリーが大きすぎて視界に全体が入りきらないからなんだけど。
でもなんで星がなくなっちゃったんだろう。
もしかしてカラスがとっちゃったとか?
カラスって綺麗なものが好きらしいし。
あっ!
……宣伝するの、、忘れてた。
あぁ~、やっちゃったぁ~、今の絶対にチャンスだったのに……。
すっかり緊張して、思い出すなんて余裕できなかったなぁ。
はぁ……。
「あっちょっとキミ!」
「え――?」
急におれのフードを後ろから誰かが思いっきり引っ張る。
「グゥえっ!!?」
おれが後ろに下がった瞬間、おれの目の前を車が通りすぎた。
――!!
よく見るとそこは横断歩道で信号機は赤を記していた。
もしかしておれ、あのまま行ってたらヤバかった?
おれの頬に冷たい汗が流れる。
「大丈夫だった?」
後ろを振り返るとそこにはおれと身長が同じくらいいや、おれより少し小さい子がいた。
薄水色の髪で前髪を伸ばしているので目は片方こっちからでは見えない。
服装は上下青ジャージにマフラーをしている。
小柄だし、女の子に見えなくもない顔をしてるんだけど……多分男、だよな。
年齢はおれと同じか1こ下だと思う。
「あ、ありがとう」
「ううん、ただキミが車来てるのに道路に出ようとするからビックリしちゃった。結構フード力強く引っ張っちゃったんだけど、大丈夫だった?」
「あぁ、うん、全然! おれ、ちょっとボーっとしてて……」
あ、この子にならできるかな。
「あ、あのさ!!」
「え?」
「もしよかったら今日の9時に駅前の大広場に来てくれない!?」
「大広場に……?」
少年が少し驚いたような顔をする。
「うん、なんか、奇跡が見れるらしいから……」
「……」
えーと、えーと。
何か言わなきゃって思うけど何を言えばいいのか全然わからない。
「……。うん、わかった」
え?
「行くよ。なんだか面白そうだし」
「ほんと……?」
「うん、楽しみにしてる」
そう言って少年はにっこりと笑った。
「じゃあ、ボクちょっと用事あるから、行くね」
「うん、ありがとう!」
おれは少年に手を振った。
あ、そういや名前聞いてなかったな……。
まぁいいか。
それより、今おれの心にはうれしさがあふれまくっていた。
やっと1人、宣伝することができた。
……よぉーし。
この調子でどんどん宣伝していくぞぉ!!
おれは心の中で拳を振り上げた。
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