自己紹介および説明をしよう
以前より文章がちょいと長いです。
でも最後までお付き合いいただけるとうれしいです
ではでは、ごゆっくりとどうぞ(*´∀`*)
「ようこそ、2CFへ」
扉から光が入り込み、男たちの顔は見えないにも関わらず
真ん中の男の口元がニヤッと楽しそうに笑ってのだけはなぜかわかる。
こっちが見るからに不安にさせる笑い方だ。
「一体おれをどうするつもりなんすか」
おれはその笑いに負けじとできるだけすごんで尋ねる。
すると男たち三人はお互いに顔を見合わせたと思うといきなり大爆笑し始めた。
!!?
なんだ、なんだ? おれなんか変なこと言った!?
おれがオロオロしているとそのうちの一人がおれのそんな状態に気づいて話しかけてきた。
「あぁー、そんな気ぃはることないで?」
この大阪弁はさっきの放送でおれに「ヒント」的なものを教えてくれた人だろう。
大阪弁の人はポケットから箱(逆光だから四角い物体ってことしかわからない)を取り出してきっと何かの装置なのだろう、その箱を少しいじるとパッと部屋に明かりがついた。
おれは今まで暗い部屋にいたせいで目がちかちかする。
「いやー、しかしここまでうまくいくとわな」
真ん中の男……いや、声的に黄色いねずみだ。
おれはどんな顔をしたやつか見てやろうと目がなれたところで見てみる。
そして驚いた。
真ん中の男(黄色いねずみ)は本当に頭が黄色かった。
きれいな金髪だ。
たぶん地毛なのだろう。
そのきれいな金髪は肩ぐらいまであるんだと思うんだけど寝相がひどいのかくせ毛なのか左右きれいに外側にはねている。
けど、驚いたのはそれだけじゃない。
3人の顔だ。
こんな怪しいことしてるんだからきっと、仮面とか、マスクとかそういうのをしてるんだろうと思ってたんだけど3人とも隠してない。
ていうか3人とも超美形だ。
学校でならトップ5ぐらいに入れるぐらいのレベルで。
「意外と楽しかったな」
大阪弁が笑う。
大阪弁は茶髪でゴーグルを頭につけているからだろう。髪が逆立っててつんつんしている。
おれ的には笑ったときに見えた犬歯とその髪がすごく印象的だった。
「というか、ほぼ宏一が一人でボケてただけだったよね」
(消去法で)ナルシストが言う。
髪はきれいな黒。
長く伸ばしていて一つにまとめている。
見るからにナルシストだ。(顔はいいのにもったいない……)
「いやいや、なかなかよかったんじゃねぇの? タロウもあっさりとひっかかるし」
ん、ひっかかる?
「あ、あのぅ……それってどういうことですか?」
おれが質問すると黄色いねずみがおれに清々しく笑っていった。
「お前はまんまとオレたちの遊びに巻きこめれたってことだ」
意味はわからないけど、バカにされてるのは十分わかった。
大阪弁がおれを巻きつけていたロープをはずしながら説明してくれる。
「つまりなぁ、今までのぜーんぶっ、お芝居やったっちゅうわけや」
……。
…………はぁぁ!!?
「え、なんすかそれっ! お芝居って、えぇ!?」
おれが混乱していると黄色いねずみたちはまた笑った。
「じ、じゃあ、あの、あれは!? 殺すとか同行とか!」
「あぁ、あれウソ。」
黄色いねずみがケロッと答える。
「っていうか、まだいたいけな普通の中学生3人が証拠0の完全犯罪なんてできるわけないだろ?」
「だって、そんな方法いくらでもあるって!!」
「あるこっちゃあると思うで、けど宏一は一回も『オレたちはその方法を知っている』とは言ってないし、実際、わいたちはお前を殺す気なんてサラサラなかったからなぁ」
……はぁ。
こんなの詐欺以外のなにものでもないじゃないか。
おれはいすの上でぐったりとする。
あぁ、もうなんなんだよ、もぉぅ。
恥ずかしさやら、腹立たしさやらまぁ、いろいろおれの中で渦巻いているがもう今はそんなのどうだっていい。
もう、疲れた……。
「あの、もう遊びに巻き込まれたとかどうでもいいんで、とりあえずおれを帰してもらえませんか?」
「え、ムリだぞ?」
「は?」
黄色いねずみの言葉におれは首をかしげる。
「だってお前選んだだろ? オレたちと同行するって」
「いや、あれはお芝居だったんでしょう?」
「いや、あそこだけは本当」
……え?
「まぁまぁ宏一、いつまでも立ち話してないで戻ろうよ。この部屋はほこりっぽくって、ぼくはあまり好んでいないんだよ」
「お前の好みはどうでもいいけど、そうだな、話はあっちでするとするか」
そういって3人は扉から出て行く。
う~ん、まったくどういうことか分からないんですけど……。
とりあえずおれには3人について行くという選択肢しかないようなのでおれはしぶしぶ後をついて行った。
そしてそこは……まぁ、普通に部屋だったわけですよ、ハイ。
本当に普通の部屋だ。
下には全体的に灰色のカーペットがひかれている。
広い部屋の真ん中にはソファが二つ向かい合うように置いていて、その間にはそのソファより少し短い長さの机が置かれていた。
あとは本棚やテレビ、キッチンに冷蔵庫、おしゃれな観賞植物まである。
「そんなとこにつったってないで、こっちに座ったらどうだい?」
ナルシストが自分たちの向かい側のソファを指差した。
指示通りおれはソファに座る。
真ん中に座ってえらそうに腕を組んでいる黄色いねずみが言った。
「まずはとりあえず、オレたちの自己紹介でもしとくか。どうせタロウのことだからネーミングセンスのない名前を勝手につけてるだろうからな」
まったくもってその通りだよ、黄色いねずみ。
「じゃあ、わいからいくわ。わいは新ノ介っちゅうんや。中学2年やからタロウより一個年上やな。まぁこのサークルに入ったんはあれや、全てこいつのせい」
そういって大阪……新ノ介先輩は黄色いねずみを指差した。
新ノ介先輩は恨みのこもった目をしているが黄色いねずみは完全スルーだ。
何にも気にしちゃいない。
新ノ介先輩はそんな黄色いねずみの態度に慣れているのか、あきらめているのか大きくため息をつくとナルシストに「次、お前がいけや」と合図をした。
「ぼくは菊太郎。学年は新ノ介と同じ、中学2年さ。まぁ、見ただけでぼくのすばらしさは幾分かはわかっていると思うけど今回は特別に一から語ってあげるとしよう。まず――」
「カット。」
黄色いねずみが隣でパンッと手を叩く。
「細かい説明はあとにしろ」
黄色いねずみの言い方を聞いているとこの菊太郎という人は自分のことを話し出すと長くなるようだ。
(証拠に黄色いねずみも新ノ介先輩もどこか顔が青ざめている)
「で、この2CFのリーダーをしている宏一だ。まぁ、オレの名前は何回か会話の中に名前が出てきているんだがタロウが覚えてるかどうかわからんから一応言っておく」
あ、覚えてないっスね、すみません。
「年はこいつら二人と同じだ。ちなみに中学も同じ。さて、本当ならお前の名前も聞いておくところなんだろうけどオレたたちはもう知ってるわけだからタロウの紹介は省くぞ」
勝手にしてください。
「じゃあ、2CFの説明をするんだが、めんどくさいなー。新ノ介、パス」
「はぁ!? そこはリーダーのお前がするところやろ! めんどくさいからて、さぼるんやない!!」
「何言ってんだ。オレは基本的におもしろそうなことしかしない主義だぞ?」
「知るか!!」
新ノ介先輩が宏一先輩の頭をパシンッと叩くがもう遅い。
宏一先輩は完全にスリープモードだ。
なんて自由人なんだろう。
新ノ介先輩はまた大きなため息をつき頭をぼりぼりとかく。
「あ~、まぁ、あれやな。2CFっていうんはまとめると『遊びまくろうぜっ!!』っていうサークルなんよ」
「はぁ……?」
おれはわかったようなわからないような、あいまいな返事をした。
「ん~、なんて言えばいいんかなぁ」
新ノ介先輩が説明に困っていると菊太郎先輩が話しに混ざってきた。
「簡単にいえば宏一の思いつきにぼくたちが力を合わせて成し遂げるサークルさ」
「……?」
まったくもってわからない。
「たとえば?」
おれが尋ねると菊太郎先輩はおれを指差した。
「今日なんかだと君だね」
「は?」
そういえば宏一先輩、「オレたちの遊び」って言ってたっけ。
「今日の活動はね、『本格的に冬休みで活動するために仲間を一人増やすこと』だったんだよ。そこで何故君が選ばれたのかはわかるかい?」
おれは菊太郎先輩の質問に素直に首を振る。
そんなのわかるはずがない。
「お前、『冬休みどうしようかな~』って思っとったやろ?」
新ノ介先輩が言う。
「はい、まぁ……」
確かにおれは冬休みをどうやって過ごすか考えていた。
けど、声には出していないはずだし、どうやってこの人たちはおれが考えていたことがわかったんだろう?
「ぼくたちはこのサークルのメンバーを探していた。つまり冬休み、何の予定も入っていない暇そうな人間を探していたわけだよ。そんなところに君が現れ、まんまとぼくたちのターゲットにされたわけだね」
「まぁ、そういうこっちゃ」
菊太郎先輩がいうと、新ノ介先輩もうなずいた。
「とりあえず、何でおれがえっと、シーシーエフ……?」
「2CFな」
「あ、はい。その2CFに狙われたのかはわかりましたけど……でも、どうやっておれの名前や、おれが考えてたことを調べたんすか?」
先輩たちの言うことが本当なら、おれがこの「遊び」に巻き込まれたのは「ただ運が悪かったから」ってことになる。けど、それだけじゃ説明がつかない。
だって、この人たちがおれという存在を知ってそんなに時間はたっていないはずなのにある意味、個人情報よりも入手困難な情報まで知っているなんておかしいじゃないか。
すると、3人は目を丸くしまたお互いに顔を見合わせた。
そしてもうお約束といってもいいけどまた大声で笑い始めた。
もう、なんなんだよ!?
「いや、お前最っ高やわ!!」
「『当たり』だね、これは」
「タロウ、お前は正真正銘のバカだなっ!」
3人は楽しそうに言うがこっちはなにがなんだかわからない。
というか宏一先輩にサラッとバカにされたのが腹立つ!
「もうっ! 笑ってないで説明してくださいよっ! なんかはみ子にされてるみたいで嫌です!!」
おれがそう文句を言うと3人はピタリと笑うのをやめた。
「いやいやすねんなってタロウ。ちゃんと説明してやっから」
「まぁ、自分のこと説明すんのはあんま好かんねんけどな」
「そうかい? ぼくは好きだけどな」
「お前はナルシだからな」
宏一先輩が冷たい目で菊太郎先輩につっこむ。
「とりあえずまずはタロウを捕獲したときのことから話すぞ」
宏一先輩がまるでおれを動物のような扱いをする。
せめて「連れ去った」にしてほしい。
「タロウはオレらに捕まったときに何が起こったかどれぐらいわかってるんだ?」
「どれぐらいって言われても……特には何にも覚えてないっすよ。ただいきなり暗闇になってそれから眠くなっただけなんすから」
「だよな」
「へ?」
「つまりタロウはその前にオレたちの気配や足音、何をされたのかも全然わかっていない」
「まぁ、そうっすね――。アレ?」
たしかにおれはこの人たちの存在にこれっぽっちも気づかなかった。
人が多いところならまだしも、おれがこの人たちに捕まったのは人気の無い住宅路。
自分以外の人がいたなら遅かれ早かれ気が付くはずだ。
「え、じゃあどうやって?」
おれがそういうと宏一先輩はまた漫画のようにニヤリと笑う。
「つまりあそこにオレたちはいなかったんだよ」
は――?
「新ノ介、説明頼む」
「また、わいかいな」
宏一先輩が新ノ介先輩にバトンタッチをする。
「つまりやなぁ、タロウは超音波っていうん知っとるか?」
「えーと、ポケ●ンの技ですか?」
おれが言うと菊太郎先輩が噴出す。
「……あっとるちゃああっとるけど……。テレビとかでないか? むちゃくちゃ高い音を機械で出してワイングラス割るっていう実験」
「あぁ、ありますよ。あれって超音波なんすか?」
「そうだよ、まぁワイングラスの場合は機械なんか使わなくてもがんばれば人の声でもいけるけどね」
菊太郎先輩がつけたしをしてくれた。
「へぇー、そうなんすか」
「別にワイングラスが重要なわけちゃうねんけど……。とりあえずわいらがお前を捕まえるのにつかったんはその超音波や」
「え? でもおれ、音は聞いてませんよ?」
「当たり前や、今回使った音は人間が聞くことができる音の高さを余裕でオーバーしとる。逆に聞こえたほうが問題や」
「でも、何にも破壊されてないし……」
「音は高さによっていろんな効果を出すからね」
新ノ介先輩と菊太郎先輩の話に早くもついていけなくなっている。
「あの、よければもっとこう、わかりやすく教えてもらいたいんすけど……」
「つまり、お前はオレたちに人があっさりと気絶するような高さの音を聞かされてあの部屋に連れて行かれたわけだ」
宏一先輩がまとめてくれた。
ん?
「でもそれおかしくないですか? もし、おれが音で気絶させられたとしてもそんな音を出す機械なんて簡単に手に入らないっすよね?」
「まぁ、それなりに値ははるわな」
新ノ介先輩が言う。
「じゃあそんな物どうやって手に入れたんすか」
「誰も買ったなんて言ってねぇだろ?」
宏一先輩がわけのわからないことを言う。
「買うなんてそんなバカなことはしねぇよ」
「は?」
「オレらには『何でも作ることのできる天才』がいるからな」
そういって宏一先輩は新ノ介先輩の方を見る。
え――?
「お前が初めてやで? わいの顔見ても何も気づかへんかったの」
「へ?」
「ほら、これを見てごらん」
そう言って菊太郎先輩はスマートフォンの画面をおれに見せてきた。
画面にはインターネットの何かのサイトが写っていて、その中にでかでかと新ノ介先輩の写真が載っている。
おれは菊太郎先輩からスマートフォンを奪う。
えっと何々――。
『日本から天才現る!!
○月○日、日本の中学生、新ノ介さんがアメリカで発明賞を受賞した。
新ノ介さんは大阪出身でその誰にも発明できないものを発明してしまうことから『未来のエジソン』という異名を持ち、いまや世界が大注目している人物である。
新ノ介さんは現在中学生だがすでに世界中のからオファーが来ている。
新ノ介さんは――』
ここまで読んでおれは顔を上げた。
「新ノ介先輩ってもしかして……超すごい人?」
おれがおそるおそる尋ねると新ノ介先輩以外の二人がうなずいた。
「ゆっとくけどなぁ、わいはそこに書いてるほどすごないで? ただ普通に物つくっとったらいつの間にかそんな大事になっとっただけや」
新ノ介先輩がうんざりしたような顔で言う。
「他のやつがただ普通に作っても作れないからお前がこうして取材されてるんだろ?」
宏一先輩が新ノ介先輩に言う。
「あ、あのどんなもの作ったんすか?」
おれが聞くと菊太郎先輩が答えてくれた。
「新ノ介は材料さえあればたいてい物は作れるよ」
「たとえば?」
「うーん、そうだねぇ。ドラ●もんの道具はオールOKだったんじゃないかな? ね?」
菊太郎先輩が言うと新ノ介先輩はうなずいて言った。
「ドラ●もんに出てくる道具やったら8歳ぐらいんときには作れとったはずやで」
「え、ていうことは『どこでもドア』とか、『タイムマシン』とかも作れるんすか!?」
「新ノ介なら余裕だ」
宏一先輩が言う。
「とまぁ、こいつは頼みさえすれば大体1週間ぐらいで何でも作ってくれるからな。超音波を出す機械を作るなんてお茶の子さいさいってなわけだ」
ふえー……。
たぶん、普通ならとても信じられない話だ。
でもちゃんとした証拠もあるし、何よりおれはある意味新ノ介先輩が作った道具で気を失った。
これはもう信じるしかないんじゃないだろうか。
「それともうついでに言っておくが、お前の名前を調べたのは菊太郎だ」
宏一先輩が菊太郎先輩の方に親指をクイッ向ける。
「え、そうなんすか?」
おれはてっきり新ノ介先輩が個人情報を調べる機械を作ったのかと思っていた。
「というか、菊太郎の部下に調べてもらったんだけどな」
「部下? え、菊太郎先輩ってもしかしてどこかの国の王子様なんすか!?」
「いや、菊太郎はれっきとした日本人やで」
「タロウも聞いたことぐらいあるだろ? 『きーくきくきく菊花会社、あなたに幸せ届けます♪』ってやつ」
宏一先輩が少々間抜けな歌を歌う。
「あるっすよ。超有名な会社っすよね?」
菊花会社とはあの間抜けな歌がフレーズなのとは裏腹にITから生活良品まで幅広く活動していて、世界にも進出している日本の1,2位レベルの大きな会社だ。
ハッ。
まさかとは思うけど……。
「もしかして、菊太郎先輩がその会社の社長! とか言うんじゃないっすよね?」
「う~ん、おしいね」
菊太郎先輩がうなる。
「ぼくはまだ会社には勤めていないよ。まぁ、そのうち勤めることになるだろうけど」
「菊太郎はその会社の社長の一人息子だ。つまりは『超』が100ぐらい付いてもおかしくない超坊ちゃまってことだな」
「ちなみにタロウの名前はわいらがお前の写真を菊太郎の部下さんたちに送って1、53秒で答えが返ってきたな」
「しかも『遅くなって申し訳ありませんでした』って謝られたしな」
「菊花会社は1秒以内に答えるのを目標といているからね」
「ひぇ~」
おれはたまらず声を出した。
おれが1秒以内に答えれる質問なんてあるだろうか。
「ちなみに菊太郎もできるぞ」
宏一先輩が言う。
「菊太郎」
「ん、なんだい?」
「1+67+132+48+178+905+37+567+43=?」
「1978だね」
菊太郎先輩が瞬時に答える。
「合ってるか? 新ノ介」
「んなもんわかるかアホ」
「ぼくが言ってるんだから間違いないよ」
「じゃあリンカーン大統領の誕生日はいつかわかるか?」
「簡単だね。1809年の2月12日。ちなみに暗殺されたのは1865年4月15日で56歳のときだよ」
「先輩、そういうの全部暗記してるんすか?」
「もちろんだよ。ぼくとしては何故みんなが勉強で苦労してるのか理解できないね」
グハァ!!
菊太郎先輩の一言によりおれに500のダメージが……。
「タロウ、気にすること無いぞ」
宏一先輩が妙に優しい声をかける。
「確かに菊太郎は金持ちだし、頭もいい。だが、性格が残念だからプラマイゼロだっ!!」
「はっ!!」
宏一先輩の言葉がおれの脳に響く。
そうさ、確かに財力や顔や頭は負けているが性格ならまだ勝つ自信があるっ!
なんてったって菊太郎先輩はナルシストなんだから!!
それにしても天才発明家に超坊ちゃま。すごい組み合わせだ。
「じゃあ、宏一先輩は?」
おれは少し目を輝かせて尋ねる。
「は?」
「え?」
「ん?」
「あ?」
「か?」
「さ?」
「た?」
「な?」
「は?」
「ま? っていつまで続けるつもりやねんコレ!?」
「なんだよ、止めんなよな~、せっかく最後まで行こうと思ってたんだから」
宏一先輩が新ノ介先輩に文句を言う。
「あほか! そんなん菊太郎ならともかく、タロウが付き合うはずないやろ!!」
「え? おれ最後までやると思ってたんですけど」
「「「……」」」
3人の空気が固まる。
あ、あれ?
するといきなり新ノ介先輩がガックリと肩を落とし、宏一先輩と菊太郎先輩はにこやかに「グッ」と親指をおれに向けて立てた。
新ノ介先輩が暗い顔をしておれに尋ねてきた。
「……で、タロウは何を言おうとしてたんや……?」
「いや、天才発明家の新ノ介先輩と超金持ちの菊太郎先輩、なら、宏一先輩もきっとすごい人なのかな~って思ったんすけど」
「ん~、オレのことをあえて言うならたまたま金持ちの菊太郎とは家が隣の幼馴染で、天才発明家の新ノ介が転校してきた学校にたまたまいた、一般市民だな」
「え、つまり宏一先輩は普通の人なんですか?」
おれが尋ねると新ノ介先輩が首を振った。
「正しくは一般市民の中に平然と紛れ込んでる悪魔や」
「タチの悪い自然災害ともいえるね」
菊太郎先輩が続けて言う。
その言葉に不服そうに宏一先輩が言った。
「しっつれいだなー、いいか、オレは自分がやりたいと思ったことを成し遂げなきゃ気がすまない人間なだけだ」
「ワカッタヨ」
何を言っても無駄だということがわかっていたんだろう、新ノ介先輩は不満気な顔でうなずいた。
「で、一通りの説明は終了した訳だけど何か質問はあるかい?」
菊太郎先輩がおれに尋ねてくる。
何かって……。
「もっかいはじめから説明してもらうってありっすか?」
「「「却下」」」
3人が即答する。
あ、じゃあもう諦めます。
でもまぁ、闇の組織とか、自分が死ぬ危険性はなさそうなので安心した。
しかもけっこうすごい人たちだし(1名を除く)……。
ん?
「そうだ、なんで2CFっていうサークル名なんすか?」
そういえばこのサークルの名前を聞いていなかったことをおれは思い出す。
「はぁ? そんなこともわかんねぇのかよ」
宏一先輩がめんどくさそうに言う。
「てかそもそも意味とかあんのか? わいは某動画サイトの名前をてきとうにパクったと思っとったんやけど」
新ノ介先輩が言う。
あぁ、ありますよね。
2CFと似た名前の動画サイト。
「2CFは元素記号のカリホルニウム、Cfから来てるんだよ」
菊太郎先輩が言う。
かりほるにうむ?
なんじゃそりゃ。
「なんでそのカルホルニア?」
「カルホルニウムだよ」
「そう、それなんですか?」
おれが尋ねると菊太郎先輩はいつの間に入れたのか優雅に紅茶を飲みながら教えてくれた。
「カルホルニウムは物理的、化学的性質も不明な部分が多いんだよ。だからぼくが思うに宏一は、ぼくらがこれからやる未知の部分とカルホルニウムの謎とをかけてるんじゃないかと思ってるんだけどね」
おおー!
深いか浅いかよくわからないけどそんな意味があったのか!!
「すごいっすね!」
おれが素直に感心してると宏一先輩も感心したように言った。
「へぇー、そんな元素あるのか」
ん?
「もしかして宏一先輩はカルホニウムのこと知っててつけたわけじゃないんすか!?」
「フン、バカ言うなよ、タロウ。元素記号なんて『スイヘイリーベボクノフネ」まで覚えれればいいんだよ」
宏一先輩がドヤ顔で言う。
おれはまだ化学を習ってないからよくわかんないけど……。
「宏一先輩はそこまで覚えれてるんすか?」
「水素以外覚えてない」
宏一先輩がきっぱりと言った。
とりあえず先輩の理科の成績はなんとなくわかった気がした。
「で、本当の意味はなんなんすか?」
おれは改めて宏一先輩に尋ねる。
「2CFって言うのは単語の頭文字だ。
challenge 挑戦
circle サークル
fantastic 奇想天外
で、それを合わせて2CF」
ふぁああ……。
なんか、どういっていいのかよくわからない。
なんかちょっと無理やり感がある名前だ。
あんまり文的にも綺麗じゃないし……。
でも、このメンバーならきっちりした名前よりもこんな風な感じの名前のほうがあっている気がしなくもない。
「じゃあ、今度こそ本当に全ての説明が終了したということで今日は解散するか」
宏一先輩背伸びをする。
「今度はいつ集まるんや?」
新ノ介先輩が宏一先輩に尋ねる。
「今度の集まりは終業式の日、つまり12月24日だ。全員彼女なんていない悲しいやつらだから用事があるとか言う奴もいねぇだろ?」
宏一先輩の言葉にみんなうなずきはしないものの否定もしない。
「よし、じゃそゆことで解散!!」
宏一先輩の愉快そうな顔がその時、すごく印象的だった。
ここまで読んでくださってありがとうございました(_ _)
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