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プロローグ/Kitchen.土井

カランコロン。

ドアベルを鳴らしドアを開けると、「いらっしゃい」、高く幼い声色ながらも落ち着いた挨拶(あいさつ)が客を歓迎(かんげい)する。

店内はカウンター席が6つボックス席が2つ。トイレの他にもう一つドアがあるが、立ち入り禁止の張り紙が貼られている。


声の主はカウンターの中で調理中。子供のように見えるが大人であるし、少女のように見えるがれっきとした男性である。

彼が作る料理は不思議なものばかり。客はその不思議を求めやってくる。

料理は日替わり一種類のみ。飲み物は色々取り(そろ)えておりますのでお好きなものを。

飲み物とともに日替わり料理をお()しませ。




ここは王都に次ぐ(にぎ)わいを見せる、アゾオラート王国にある交易都市ウタヨイ。国内外から物資が集まる商業の中心地であり、人の出入りが激しく昼夜問わず人で(あふ)れる場所。

ウタヨイにはいくつか大通りがあるが、その一つに飲食店通りがある。

〈Kitchen.土井〉。飲食店通りから少し()れた小道、裏通りを進めば見えてくるこぢんまりとした店の名前だ。


(とも)りがついたドアの前にはスタンドボードが一つ置かれ、日替わり料理のメニュー名が記載されている。

どこにでもありそうな飲食店。しかしそこで立ち止まった者は気づくことだろう。裏面にも文字が書かれていることに。


〈あなたの愚痴(ぐち)聞きます。〉


愚痴を聞くというサービスを行う珍しいお店。愚痴聞きは一日三組限定の要予約。

予約時に教えられた通り店の裏に回れば、そこにはもう一つドアがある。


チリリン。

ドアベルを鳴らしドアを開けると、「いらっしゃいませーっ」、少し低めな声色ながら元気な挨拶が客を歓迎する。

中は靴を脱ぐ場所とトイレ、個室が一つ。トイレの他にもう一つドアがあるが、立ち入り禁止の張り紙が貼られている。


声の主は、大人のお姉さんように見えるが大人になったばかりの少女である。

扉はなく鍵もない個室へと案内され始まるのは不思議なサービス、愚痴聞き。表の彼が作った料理と飲み物もつくので、お食事しながらお話ください。

秘密厳守、話の内容はもちろん店に来たこと自体もここだけの秘密。サービス利用者様が自分で言いふらさない限り漏れる心配はございません。




表の客は不思議な料理を堪能(たんのう)しに、裏の客は他の者には話せない悩みを抱えやってくる。

ここは〈Kitchen.土井〉。(フクロウ)の獣人族フィナと蛇の獣人族ラーナの兄妹が営む飲食店。

皆様のご来店をお待ちしております。

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