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12.勇者VSオークロード

 また、人を死なせた……いや、あれほどの男ならば生き延びている可能性もあるか……どちらにせよ、今のオレは弱すぎるッ……!


 オレ──裕也は、オークロードを前にして奥歯を噛みしめた。オークロードは動かず、「いつでも殺せるぞ」とでもいいたげに下卑た笑みを浮かべている。


 だが、それがどうした? そんなことは今関係ない。このオレが歩みを止めるなどありえない! オレはオレが最高にかっこいいと誇れるように突き進むだけだ!


「神楽坂くん、尾川くん」


 魔術師たちと一緒に居た彩花が、クレーターの端に立つAランク魔術師の隣に合流する。


 今のオレではロードに勝てない。ならば──。


 俺は、「無理だ。こんな化け物……」とうわ言を漏らす隼人や、絶望に慄く冒険者たちを振り返った。


「隼人。このオレに力を貸せ」


「はぁ!? 何言ってんだよ裕也! あんなの相手におれらができることなんてなにも──」


「オレに考えがある。そのためには隼人。貴様の力が必要だ」


「無理だ! 目で追えないんだぞ! 一撃食らったら死ぬんだぞ! おれはただの高校生だったのにいきなりこんなところで戦わされて……おれは死にたくねぇんだよ……」


 力なく剣と盾をぶら下げた隼人は、下を向いて黙り込んだ。


「隼人。貴様がやらねば全員死ぬぞ?」


「……っ!」


「貴様は、天才で完璧なこのオレを信じられないのか?」


「はぁ!? おまえだってオークロードに手も足も出てない……だろ……」


 オレは隼人に背を向け、首だけで隼人を見る。槍を右手で短く持ち、背中と平行になるようにして水平に構えた。本気でオークロードに勝つために挑む。俺は隼人に、背中でそう語った。


 すると、隼人は口をつぐむ。


「安心しろ。貴様は死なん! このオレが保証してやる」


「裕也……おまえ、マジであれに勝つ気なのか……?」


 俺は何も答えず、隼人を見続ける。すると隼人は、両手で勢いよく頭を掻き毟った。


「ああくそっ! 分かったって! どうせ死ぬならヤケだ!」


 一人そう叫び、吹っ切れた隼人はオレの隣に並ぶ。


「で? おれは何をすればいいんだ? おれはバカだから、おれは裕也の指示に従うぜ」


「ふんッ……悪くない面構えだ。貴様は何も考えず、オレの手足となっていればそれでいい」


 オレは不敵さを忘れず、隼人に微笑む。それからオレは、隼人に作戦を伝えた。


「分かったぜ! 信じてるからな、裕也!」


 オレは、暑苦しく突き出してくる隼人の拳を叩き落とした。


「おいおい……こんな時くらいいいじゃねぇか」


「ふんッ……オレは誰ともじゃれ合わん」


 文句をいいながらもはにかむ隼人。彼から視線を逸らし、オレは離れた位置にいる彩花を見た。


「彩花! 貴様もオークロードの動きは見ていたな? サポートしろ」


「うん。分かってる」


 彩花が頷くのを確認し、俺は真正面からオークロードを見つめた。


「ライトニングブースト」


「ウインドブースト」


 彩花とAランクの魔術師が、オレと隼人に身体強化魔術を重ね掛けしてくれる。


 オレは腰を落とし槍を一回転。左目を押さえるようにして前髪を掻き上げ、槍を構える。そして、オークロードに向かって手招きした。


「来いブタ! このオレ直々に調理してやる」


 言葉が通じたのかは分からない。だが、先程までオレたちの恐怖を楽しむかのように静観していたロードはオレの挑発に激怒。鋭い牙を剥き出しにし、棍棒を振り回した。


「ブオオォォオオォォォオオオォォッ!」


 鼓膜を破らんばかりの雄叫びを上げたロードの姿が、消える。


「隼人! 目の前だ!」


「おうっ!」


 隼人はオレの前に立ち、盾を構える。すると次の瞬間、隼人の鼻先にオークロードが現れ、木よりも大きい棍棒を真っすぐ振り下ろした。


「ぐぅッ……!」


 ケイ(カイ)を吹き飛ばし、地面を瓦のように簡単に割り砕くオークロードの攻撃。それを隼人は、力が上手く伝わらない根本に盾を合わせることで、片手用の盾で受け止めて見せた。


 今だッ!


 オレはオークロードの、ケイが付けた傷を見据え、隼人の陰から飛び出した。


 確かに今のオレでは、オークロードの攻撃パターンが分かっていてもあの男のようにカウンターを狙えない。身体強化を受けてなお、オークロードの硬い皮膚は貫けないだろう。


 だが、隼人が隙を作ってくれた。無防備な貴様相手に、あの男が残した傷口から心臓を狙うくらいはできるぞ!


「ブオオォォッ!」


 オークロードはストーンウォールを発動。オレは地面から隆起する突起の隙間を潜り抜け、ロードの顔と同じ高さまで跳んだ。が──。


「なに……!?」


 瞬間、ロードの巨大な手がオレの視界を埋める。どうやらオレがストーンウォールをかわすために費やした一瞬で怯みを解除し、棍棒を捨てたらしい。


 どうする! 手立てを考えろ……このオレに不可能などあるはずがない!


 体感時間が極限まで遅くなり、思考が加速する。その刹那──。


「ロックバレット」


「アイスバインド」


 乗用車よりも大きな岩がロードの腕を弾き、氷の蔓がロードの巨体を縛り付けた。


「フッ……悪くないサポートだ」


 彩花とあの魔術師か。これで奴の心臓を狙える!


 オレは純白の槍を握る力を強め、ロードの傷口を睨みつける。


 ここを逃せばもう二度こんなチャンスは訪れない。オレがミスれば全員が死ぬ。そんな重圧が両肩にのしかかる。


 ふんッ……この程度のプレッシャー。むしろ心地いいというものだ! 人の上に立つべくして生まれたこのオレが、大舞台で失敗するなどありえない……ッ!


 オレは絶対的な殺意と自信を持って、オークロードの傷口に渾身の突きを放つ。


「くっ……」


 これでも届かないのか……!


 オレの渾身の突きは、オークロードの凝縮された胸筋に阻まれ、心臓には届かない。だがそれでも、オレは槍を握る手を緩めなかった。


 オレは、この程度で終わる男ではないッ!


「……っ! 何だ……!?」


 オレの思いに応えるように槍は突如として黄金の輝きを放ち、ロードの肉を焼き始める。


 それは、勇者に与えられる神聖武器のみが持つ魔殺しの光──セイクリッドオーラ。神聖な光を纏った槍の前では、オークロードの鋼の肉体も意味をなさない。


 今なら、いける!


「失せろ。ブタ!」


 オレは全神経を槍に集中し、オークロードの心臓を貫いた。


「ブガアァァァアアァァァ……!?」


 心臓を貫かれたオークロードは、その山のような巨躯をふらつかせ、轟音とともに地面に崩れ落ちた。


「倒した……のか?」


 誰かがそう呟いた。その直後。


「「「うおぉぉぉおおぉっ!」」」


 オーグスや冒険者たちは喉を潰す勢いで歓声を上げた。


「ふんッ……! 当然の勝利だ」


 輝きが消えた槍を下ろし、オレは皆に背を向ける。本当は汗だくで余裕なんてない。だがそれでも、完璧たるこのオレが他人に弱さを見せるなどあり得ない。


 もっと強くならねば……。


「裕也ぁああぁぁぁっ!」


 爽やかに整った顔を涙でボロボロに崩した隼人が、オレの背中に覆い被さってくる。だが今回は、それを甘んじて受け入れた。


「隼人、今回ばかりは助かった。悪くない活躍だったぞ」


「裕也がおれを褒めた!? 明日は雪でも降るんじゃねっ?」


「うざい。やはり離れろ」


「悪かったって! 冗談だろー?」


 二人でくだらないやり取りをしていると、杖を持った彩花が小走りに寄ってきた。相変わらずの無表情だ。


「神楽坂くん、尾川くん。怪我はない?」


「オレは問題ないが、こいつは腕が折れてるぞ」


「えっ……マジで? マジじゃん!?」


 隼人は本当に気付いていなかったようで、自分の左腕を見て目を丸くしていた。


 そして彩花も彩花で、隼人の怪我を治した途端、魔力切れでその場にへたり込んだ。


 やれやれ。これだからバカどもは困る。


「……だが、悪くない」


「んっ? 何か言ったか?」


「いいや、何でもない」


 オレは二人に背を向けて、表情を緩めた。


***


裕也によって倒された、不自然な模様の入った魔石を持つオークロード。その二の腕には、明らかに人為的な注射痕が発見されることとなる。

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