表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様代行ー心優しき少女と傷ついた神の契約ー  作者: みい


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/28

第六章「月下、兆し ―緩和―」


チュンチュン──


雀の可愛らしい声が朝を告げる。

そっと目を覚ました青葉は、まだ夢の残り香のような空気の中で辺りを見渡した。


しかし、シンの姿はどこにもない。

胸の奥がきゅっと締めつけられ、思わず小さく息が漏れる。


「……帰って来ないんじゃ……」


ずっと抱えていた不安が、言葉になって零れ落ちた。

青葉は慌てて布団を抜け出し、シンが残したメモを探そうとしたが──

次の瞬間、あれがまるで魔法のように消えてしまったことを思い出し、そっと俯いた。


「シンも、私の前から消えてしまうのかな……」


そう呟いた途端、瞳の奥にじんわりと涙が滲む。

青葉は両手で軽く頬を叩き、沈みかけた気持ちを追い払った。


「顔、洗ってこよ……」


そう言って、ゆっくりと部屋を出た。

階段を降りる足取りは、まだ少しだけ重かった。




その頃、カルマは次の祈りの元へと向かっていた。


「シン、今日は帰ってくるかな〜」


鼻歌まじりに、上機嫌で風を切る。

柔らかな朝日が街を包み込み、空はどこまでも青々と広がっていた。




朝食を終えると、青葉はいつものように学校へ向かった。

心の奥に残る不安を隠し、作り笑顔で友人たちと話をしていた。


たまたま通りかかったカルマは、ふとその気配に気づく。


「ん?」


ほんのわずかに、青葉の魂が揺れていた。

その想いが風に乗って、カルマのもとへと届く。


「青葉ちゃんも、シンに会いたいんだね」


優しく微笑んだカルマは、そのまま祈りの元へと向かっていった。




天界では、シンが新しい衣に着替えていた。

白い衣が朝の光をはじき、長身の体を包み込む。

表面の傷はもうほとんど消えている。


「少し遅くなってしまった…」


心の奥に残る痛みを押し隠し、自ら光を灯すように立ち上がった。

そして、静かに天界を後にした。




放課後。

青葉は学校を出ると、心を急かすように家へと向かった。

不安が足を自然と速めていく。


シンは、もう青葉にとって欠かせない存在になっていた。


「ただいま!!」


勢いよく玄関を開けると、かすかに感じる気配に胸が高鳴る。


「おかえり。慌ててどうしたの?」


母の声は、もう耳に届いていなかった。


階段を駆け上がり、自室の扉を開ける。

そこには──シンが、いつものようにベッドに腰を下ろしていた。


「おかえりなさい」


安堵の笑みを浮かべる青葉を見て、シンは鼻で小さく笑った。


「用が済み次第戻ると伝えただろう。余計な心配はいらぬ」


また心を読まれてしまい、青葉は少し恥ずかしそうに頷いた。


「あ…そういえば昨日、シンの友達が来てたんだよ」


その言葉に、シンは眉間に皺を寄せる。

ほんのわずか、表情に嫌そうな色が浮かんだ。


その時だった──

ひとすじの風が部屋を抜け、黒い衣を翻しながらカルマが現れた。


「シン!」


白い歯を見せて上機嫌に現れたカルマの表情が、みるみる変わっていく。


「……え? なにそのサイズ?!」


青葉は意味が分からず、ただ目を瞬かせた。


「ここでは、この姿の方が楽なのだ」


シンが淡々と答えると、カルマはパッと顔を輝かせた。


「うんうん、むしろいいじゃん! 可愛い〜〜!」


しゃがみ込んだカルマがシンを抱き寄せ、頬を擦り寄せる。

シンはあからさまに嫌そうな顔をしたが、その光景が青葉にはどこか微笑ましかった。


「なんだか不思議な気持ち……。弟とかいたら、こんな感じなのかな」


ふとそんなことを思いながら、青葉は小さく笑った。


「それより急にどうしたのだ?」


シンが無理やり離れると、カルマの顔をまっすぐに見つめる。


「いやぁ〜久しぶりにシンに会いたくなっちゃって。まあ、こっちで任務もあったしね」


カルマの明るい笑顔に、青葉の心も自然と温まっていく。


「代行の件で急に居なくなっちゃったから、前みたいに話せなくなってさ……。寂しかったんだよ、僕」


大きな体格とは対照的なその素直な言葉に、青葉は思わず笑みをこぼした。


夕焼けに染まる空が、三人を包むように輝いていた。

何気ないひとときの中に、確かなぬくもりが宿っていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ