淘汰
朝起きたら、いつも利用している小説サイトから利用規約変更の通達があった。
なんでも昨今の利用者の悪質な投稿を防ぐために意味不明な投稿をした者にペナルティを科し、重度の者には強制退会をさせるというものであった。
では、その意味不明な投稿とはどんな物かというと──。
まずは誤字脱字等が許されないらしい。
まあ、投稿する前にちゃんと確認しろってことらしいけど、これはなんとも厳しい。
次に、読んでも意味が理解できないめちゃくちゃな文章。
……おい、シュルレアリスムは許容されないってことかよ? 他にも詩等の独自な表現もこれに該当しそうだ。
そしてさらに、論理の破綻した文章。意味は解るけど矛盾していたり、常識的に有り得ない物をいうようだ。
つまり、抽象的な表現や譬喩は認められないってことか……。
なんなんだよ、いったいなんでこんなことに……。
思い出してみれば、最近の作品や感想なんかにそういう酷いものがあったっけな。
特に『言葉の理解できない猿が偉そうに人間の真似をして物を書くな!』というエッセイに散々噛みつきまくった馬鹿が、見事に論理的にやり込められたやつはあまりにも酷過ぎた。むやみに感情論で喰ってかかるものだから、逆に作品に説得力を与える結果となっていたし。しかも活動報告での嘲笑うような勝利宣言。
そういえば確か、とどめとばかりに運営に通報したとか言ってたっけ。
つまり運営がそれに応えたということか。
全く馬鹿が余計な真似をするから……。
完璧で論理的な作品以外が認められななくなったその日から一年、そのサイトの作品はまるでプロの書いたかのような高レベルな文学作品ばかりとなっていた。
最早低レベルなんて罵られるようなラノベ作品はひとつたりとて残っていない。
正にあれは革新的改革であったというべきか、当時とはあまりにも様変わりしたと言ってよいだろう。
だがしかし、最早気楽に読める娯楽作品なんて物はどこにもなく……。
「つまんねえな。オレも別のサイトに引っ越すか」
その日私は退会し、友人たちの移っていったサイトに引っ越すことを決めた。




