ヴェルーナの過去(1)
ゾーエ・セオス。
ヴェルーナは、どこかで聞いたことがあるような気がした。
しかし、思い出そうとすると頭痛するのだ。
頭痛は酷くなっている。
ヴェルーナは、痛さのあまり頭を抑えた。
「ヴェルーナ?どうした?頭が痛いのか?」
と、異変に気がついたリュシオンが言った。
しかし、ヴェルーナに答えられる程の余裕は無い。
ヴェルーナは、気を失った。
「あなた誰?」
(誰の声?)
鈴のような声が聞こえた。
ヴェルーナは、木や花が埋められている美しい庭を声の主を探すためにさまよう。
声の主は、腰ぐらいまである白金の髪にくりくりの睫毛に縁取られた海と同じぐらい深い青い瞳の美少女だ。
少女に問われたのは、青年だ。
少女よりも深い青い瞳に、銀色の髪のイケメンだ。
ヴェルーナは、青年をどこかで見たような気がした。
二人は、横にいるヴェルーナに気付いていない。
青年は、少女を無視して目を閉じた。
「ねぇ、あなた誰?」
少女は、聞こえなかったのかな?と思いながら聞いた。
だが、青年は聞こえなかった振りをする。
少女は、頬を膨らました。
少女は怒っているが、他の人からしてみれば、可愛らしい仕草だ。
「ねぇ、答えてよ。」
少女は懲りずに問い続ける。
青年は、閉じた目を開いた。
そして、腰を掛けていた木から立ち上がる。
青年は、少女を見下ろした。
少女は自然と、見上げる形になった。
「人に名を聞くときは、自分の名前を言うのが先だ。」
「ごめんなさい。私は、リシェーネ・ベル・バルミ・アブ・ジロンよ」
「俺は、ゾーエ・セオスだ。」
ヴェルーナは目を見開いた。
神話に出てきた神の名前と同じで、これは自分の記憶だと気付いたからだ。