第二子 ヴィオレーヌ
雲ひとつない青い空に、太陽が輝いている。
「ヴィオ、何処に居るんだい?」
様々な花が並ぶ庭を、アルバートが歩く。
アルバートは、まだ幼さが残っているがリュシオンにますます似てきた。
アルバートはあたりをキョロキョロ見回し、何かを探している。
少しすると、花の向こうに何かが動いていた。
アルバートは、微笑んだ。
「ヴィオみーけっ。」
一拍置いて、花の向こうから少女が出てきた。
白金の髪に青い瞳、整った顔立ちはリシェーネにそっくりだ。
「見つかっちゃった。」
ヴィオは、可愛らしく舌を出した。
その仕草に、アルバートは笑みを深めた。
「母上が呼んでるよ。」
アルバートのその言葉に、ヴィオの顔は輝いた。
「今行く!」
「お母様ー。」
ヴィオが叫びながらリシェーネに走り寄る。
その顔には笑みが浮かんでいる。
「ふふっ。そんなに走っちゃだめよ。」
そう言いながら、ヴィオに抱きついた。
アルバートがヴィオの後ろからゆっくりと、歩いてきた。
「今日は八歳の誕生日なんだから、大人しくしていなさい。」
「はーい。」
アルバートとリシェーネは、ヴィオの元気の良い返事を聞いて微笑んだ。
「駄目だ。」
リュシオンは読んでいた書類を投げ出した。
「他は。」
「これで最後です。」
年寄りの宰相が、最後の書類を渡す。
書類を読んだリュシオンは、ニヤリと笑った。
「こいつだ。」
「ですがその方は…。」
「良い。俺が交渉しよう。用意しろ。」
「はっ」
宰相と共に、リュシオンは部屋を出た。
部屋に残ったのは、リュシオンが呼んでいた書類。
書類に書かれていたのは、アルバートの花嫁候補、アイネアス・アベカシス・ロンリ。
隣国、ロンリ国の第一王女だ。