第一子 アルバート
バタバタと騒がしく足音が聞える。
「もう少しです、リシェーネ様。」
メイドの一人がリシェーネに呼びかける。
「ん、は、はぁ、はぁ」
リシェーネは、息が上がりお腹の痛みに耐えている。
「オギャーーーー」
大きな泣き声が部屋に響いた。
足音は更に騒がしくなり、同時にため息も聞こえた。
メイドが、寝てしまった赤ん坊をリシェーネに渡した。
「元気な男の子です。」
赤ん坊は、リュシオンと同じ金の髪だ。
「おめでとうございます。」
メイドたちが微笑みながら言った。
それを待っていたかのように、部屋の中にリュシオンが入ってきた。
リュシオンは、リシェーネが抱いている赤ん坊を見て安心し、微笑んだ。
「良く頑張ったな。」
リュシオンにそう言われ、リシェーネも微笑んだ。
その二人を見てメイドたちは、更に笑みを深めた。
リシェーネはリュシオンに赤ん坊を渡した。
「この子の名前は、アルバートだ。」
リュシオンがそう言うと、リシェーネは言った。
「アルバート…いい名前ですね。」
赤ん坊、アルバートは大きな欠伸をした。
「アルバート、アギーをいじめるのはやめなさい。」
リシェーネはアルバートに言った。
アギーとは、リシェーネ付きのメイドだ。
「リシェーネ様、助けてください!」
アギーは、赤い髪を揺らしながらアルバートから逃げている。
アルバートはリュシオン譲りの緑色の瞳を輝かせながら、アギーを追いかけている。
「母上に助けを求めるとは、お前もまだまだだな。」
アルバートはアギーを追いかけるのをやめ、そう言った。
「アルバート。」
リシェーネがきつく言うと、
アルバートは素直に謝った。
「申し訳ございません。」
だがそれはリシェーネに謝っただけで、アギーには謝ってはいない。
アギーは大きなため息をついた。
「アルバート様、もう七歳なのですからいい加減やめて下さいませんか?」
「ヤダ」
アルバートは再びアギーを追いかけた。
その手には、鼠がいる。
「きゃーーーー」