リシェーネの正体
「貧血でしょうね。」
リシェーネを診た医師が、そう言った。
「そうか。」
リュシオンは、本日二度目の安堵の息を吐いた。
「ですが、」
「何だ。」
「髪の色が…。」
「髪?」
リュシオンは首を傾げた。
「あら、リュシオン殿下。」
リュシオンが首を傾げたのと同時に、声が聞えてきた。
リュシオンが声のする方を見ると、そこには、ジロン国王妃ウィリア・ベル・バルミ・アブ・ジロンが、居た。
その姿を見て、医師は頭を深々と下げた。
「ウィリア妃、何故ここに?」
リュシオンが問うと、ウィリアはくすりと笑った。
「あんなに大声を出していたのに気ずかないとでも?」
「申し訳ございません。」
「今日はね、シュベルツに会いに来たの。」
ウィリアとシュベルツ、アルフォンとリュシオンの母でありダントン国王妃のメアリアは、幼馴染だ。
「父上に?」
「結婚の話をしにね。それより殿下はどうなさったの?」
「それは、」
リュシオンが説明しようとした時、医務室の中からカインが勢いよく出てきた。
「殿下、目が覚めました。」
カインはそう言って、リュシオンを見た後その前に居るウィリアを見て礼をした。
「し、失礼しました。」
「いいのよ。それより誰が寝ているの?」
「どうぞ入ってみてください。」
と、ウィリアの問いに医師が答えた。
「お言葉に甘えて。」
ウィリアが医務室に入ると、叫んだ。
「リシェーネ!!」
そして、リシェーネも叫んだ。
「母上!!」
そして、周りに居るものは目を見開いた。