リュシオンは女嫌い
「他のメイドは付けないんですか?」
「他のメイド?」
リシェーネが聞くと、リュシオンは書類に判子を押していた手を止めた。
カインが慌てて言った。
「リシェーネ、こっち来て。」
カインについて廊下に出ると、カインが言った。
「あのね、リュシオンは女嫌いなんだ。」
「女嫌い?」
「そう。」
「じゃあ、私は?」
「さあ。リュシオンに聞いてみれば?」
カインがニヤニヤしながら言った。
それにしても、リュシオンが女嫌いだとは初耳だ。
(じゃあ、何で私を?)
リュシオンの書斎に入って、リュシオンを問いただす。
「ねえ、何で女嫌いなのに私をリュシオンのメイドにしたの?」
リュシオンが敬語はいいと言ったので、砕けて話す。
「それは……」
「それは何?まさか私を竜だと思ってるの?」
リシェーネは、微笑みながら聞く。だが、その目は決して笑っていない。
「うっ。」
「酷い。私を人間だと思っていないだなんて。」
「怒れないでくれ。ただ、ヴェルーナと似ているから…。」
「だから何!?」
「だからその……。」
リュシオンの隣に居るカインが、クツクツと笑っている
リシェーネは、リュシオンの机を叩いた。
「ハッキリしてよ!」
「リシェーネ、その胸をどうにかしてくれないか?」
リュシオンの目の前では、リシェーネの大きな胸が揺れていた。
「もういい。」
リシェーネは、書斎を飛びだした。
リュシオンは、横で腹を抱えて笑っているカインを睨んだ。
「リシェーネに何を言ったんだ。」
「何も。ただ、女嫌いだと言っただけだ。後は殿下が悪い。」
カインは、必死に笑いを堪えている。
リュシオンは大きくため息を吐いた。