神との出会い(1)
白い鱗が、月夜に当たって美しさを増す。
そこに一匹の竜が近ずく。
「グルルル、ガゥゥゥゥゥゥゥ?(ヴェルーナ、俺と交尾しないか?)」
これで、5回目だ。深い深い青い瞳で、彼を睨む。
彼は、真っ赤な鱗に黄色い瞳のモテ男だ。
「グゥゥゥゥゥゥ(しつこいわよ)」
冷たく言い放つ。これも、5回目。
「ガゥゥゥゥゥゥ、グルルルルルルル。(なぜ私が、ビルクと交尾しなきゃいけないの。)」
これまた、5回目。
「グゥゥゥ・・・」
ビルクは、肩を落としながら去って行った。
ヴェルーナは、溜息を漏らした。
何度、ビルクが言った台詞を聞いたか。
ビルク以外にも、数え切れないほどあの台詞を聞いた。
聞き飽きた程だ。
雌竜に、嫌味も言われた。
雄竜に、興味もない。
他の雌竜が、うっとりする雄竜にも興味がない。
雄竜に、告白されているとき雌竜に見られていた。
もちろん、そいつは振った。が、そのあと見ていた雌竜が、
「なんて、もったいない。」
と、皮肉を込めて言われた。
その竜は、皆に言った。毎日、冷やかしを受けた。
が、そんなこと大した事じゃない。無視すればいいだけだから。
今思い出すと、ものすごくうるさかった。
そんなことを考えていると、後ろから視線を感じた。
後ろを見ると、ビルクがいる。こちらをじっと見ている。
ビルクと、目があった。
ビルクは、モテ男だ。
他の雌竜が、告白されたらOKするだろう。
きっと雌竜が、先ほどのやり取りを聞いていたらまた、
「もったいない」
と、言うだろう。皮肉を込めて。
ヴェルーナは、考えた。
一人で、ひっそり暮らせないかと。
しばらく考えていると、いい案が浮かんだ。
(確か、しばらく行った所に森があったはず。)
思い立ったら何とやら。森を目指して空を飛ぶ。
感想いただけるとうれしいです。