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泉の贖罪  作者: 玄遥斗
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第一話 呼び声

町はいつもより静かだった。夏の終わりの夕暮れ。

昼間は残暑でひどく暑さを感じたが夕暮れ時の今はだんだんと暑さが収まり少し涼しい風が吹いていた。


俺、佐藤雄真(さとうゆうま)は、幼馴染の高橋彩花(たかはしあやか)田中健太(たなかけんた)と一緒にいつもの喫茶店でアイスコーヒーを飲んでいた。

その喫茶店は前に健太が見つけてくれて行ってみたが外の喧騒とは正反対で落ち着いた雰囲気で居心地がよく店長も物腰柔らかでいつの間にか三人でそこに集まって週末の予定を話すのが習慣になっていた。週末の予定をぼんやり話す中、胸には奇妙なざわめきがあった。朝から続くこのざわめきはまるで、何かに呼ばれているような感覚だった。


健太は雄真の飲むアイスコーヒーを見ながら言う

「雄真はアイスコーヒーか、よくブラックで飲めるよな。俺はカフェオレしか飲めないってのに。」

「逆にコーヒーはブラックしか飲めないんだよ、変に甘かったりすると気持ち悪いんだ。」

健太は疑うような目でこちらを見ていた

「まあいいじゃん!好みは人それぞれ!」

彩花がパフェをほおばりながら言った

「彩花は激甘のパフェうまそうに食べるもんな~」

健太が彩花がパフェをほおばる姿を見ながら言った

口の周りについたクリームを布巾で拭いた後に口を開く。

「今度の週末さ!スターランドいってみない?」

彼女の茶色の髪が揺れ、窓から差し込む夕日でキラキラ輝く。

「スターランドってテーマパーク?」

懐疑的な俺に彩花はスマホの画面を見せる。画面には様々なアトラクションとスターランドの文字。だが、マスコットの笑顔がそこか不自然で目が俺をじっと見つめているような気がした。


「あーなんか最近話題だよな。新しくできたテーマパークだけど超繁盛してて大盛り上がりらしい。」

健太は続けて彩花を悲哀な目で見つめながら言う

「でも、彩花、スターランドは大丈夫なの?スターランドはあの事故が起こってから経営難で閉園したテーマパークの跡地にできたんだろ…」


健太のいう“あの事故”。俺たち三人はそれを思い出していた。

スターランドの前身、泉楽園、そこで一つのアトラクション「ナイアガラフォール」で悲劇は起こった。

ナイアガラフォールはゴンドラが滝の上から滝つぼを模したプールに落下するというアトラクションで通常、ゴンドラは滝の頂上から制御された速度で落下しプールに着水するのだが、その時は落下中に異常加速し水面に衝突、衝撃でゴンドラが一部破損し乗客4人が死亡二人が重軽傷を負った。


泉楽園側は原因はゴンドラのブレーキが夏の猛暑で高温になり制御不能になったこと、そしてライドを制御していた新人スタッフが異常を示すランプを誤作動と判断しシステムをリセットし運行を続行したことにあると会見で説明していたが世間はそれを許すことはなかった。

というのも、繁忙期のスケジュールを優先しメンテナンス不足や過重労働により安全管理がおろそかになっていることを経営陣は利益を優先し隠ぺいしようとしていることが内部から告発され、事故のイメージを加速させ一気に客足が遠のくようになったのだ。

そのあと経営陣は一新されたもののそのマイナスイメージは払しょくされることなく閉園する運びとなった。


俺はその事故のニュースを夕方のテレビで見て愕然とした。

死亡した4人の中に彩花の父の名前があったのだ。彩花と父の二人でそのアトラクションに乗っていたようだった。

彩花は異常に気付いた父に庇われ軽傷だったがあの時の衝撃でパニック発作を起こすようになり俺たちは彩花のそばについていてやることしかできなかった。


俺らとしてはせっかくここまで回復した彩花に過去のつらい記憶をフラッシュバックしてほしくなかった。姿かたちを変えたとはいえ彩花にとっては泉楽園と同じ場所にあるスターランドはつらい場所ではないのか。


重くなった空気を切り裂くように彩花は明るい声で発する

「私は大丈夫!実は夢でスターランドのことをみてさ!なんとなくいきたくなったんだ~。」

「夢…おれも昨晩おんなじような夢をみた…スターランドに導かれるような夢…」

「俺も!」

俺に続いて健太も食い入るように言った。

「三人がスターランドに行きたくなるような夢をみる…やっぱ私たち繋がってるんだね!」

「集団催眠か…?いや、でもどうやって…」

のんきな声で言う彩花とは対照的にぶつぶつと健太は考え込んでしまっていた。

「確かに不思議だけどいろんなところで広告を目にするからそれのせいじゃね?」


そんなことをいいながらテーブルに目をやると見慣れぬ一つの封筒があった。

「なにこれ、健太の?」

「いや、知らねえけど。彩花のじゃねえの?」

「私知らないよ!とりあえず店長にきいてみよ!」

誰のものかわからない封筒を手に取りながら店長を呼ぶ。

「はて、元からそこに置いてありましたよ」

店長がそういうとおもむろに封を開ける。

「これ、スターランドの招待状ですよ。ほらあなたたちの名前も書いてある。」

店長が中にある三枚のチケットを俺たちに見せる。

金色の縁取りに紫の光が揺らめくデザイン。「特別ご招待券」と書かれたそのチケットには確かに佐藤雄真、高橋彩花、田中健太の名があった。

「ほんとだ…」

「誰が置いたんだよ…」

背筋がぞくりとする。


彩花は一枚のチケットを手に取りながら言う。

「行ってみよっか、スターランド」

「ああ、行こう」

健太も真似するように手に取る。

「雄真はどうすんだ?」


なにか踏み込んではいけない領域。それが何なのかわからない。ただ、その違和感は無視してしまえるほどにちいさかった。


「ああ、行ってみようか。せっかくチケットももらえたしな」


普通なら取りえない判断だが、そこにいる者でその判断を止めるものは一人もいなかった。


ここまで読んでくださりありがとうございます。玄遥斗です。

書きたいことが多すぎていっぱい書いてたらまさかの喫茶店だけで一話が終わってしまいました。展開がなさ過ぎて面白くないって言われないか心配です。

一週間に3、4話投稿したいです。投稿は17時に行いますので帰宅中のお供になれたらうれしいです。

なろうで投稿はこれが初めてなので勝手がよくわかりませんが変なことになってたらぜひお教えください。よろしくお願いします!

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