表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ファッション悪役令嬢ガーベラさん

作者: 箒星 影

 

 わたくしの名前はガーベラ=ベラベラベーラ。


 由緒正しきベラベラベーラ家の一人娘ですわ。


 生まれつき、曲がったことが大嫌い。


 厳格なお父様とお母様の教育の下、眉目秀麗、清廉潔白、品行方正な人生を歩んで参りました。


 わたくしの声に誰もが振り向き、わたくしの姿に誰もが見惚れ、わたくしの立ち居振舞いに誰もが憧れているのですわ。わほほ。


 そんなわたくし。



 ただいま心臓がおバクンおバクンでございますの。



 それもそのはず。


 かねてよりお慕いしていた殿方……プリンス=プリンプリン王子への告白を、今しがた終えたところなのですわ。


 たった数秒の沈黙が永遠に感じられますわ。おエターナルですわ。


 やはり、やめておけば良かったのかもしれません。


 いくらわたくしが上流貴族の娘であるからといって、国王の御子息に一方的に想いを寄せ、近付き、このようなご無礼を。


 これには王子もさすがに動揺を隠せないご様子。


 顎に手を当てて何かを考える素振りを見せつつ、チラリチラリとこちらに視線を送ってきております。


 そして、プリンプリン王子は意を決したように顔を上げ、わたくしを真っ直ぐに見つめてきました。

 

 ああ、なんと麗しい。


 その宝石のように美しい青き瞳から、わたくしは目を離せませんでした。


 きっと、これからわたくしは振られてしまうのですわ。


 ですが、後悔はありませんわ。


 願わくばこの御方と共におランチを食べたり、おディナーを食べたり、おブレックファーストを食べたりしたかったで



「すまないガーベラさん……僕は、キミとは絶対に恋仲になれない」



「おハァ?」



 はっ、いけないいけない。


 想像していたよりも遥かに残酷な言葉が飛び出てきたものですから、ついエレガントなメンチを切ってしまいましたわ。


「しっ……失礼しました!! ですが……まさか『絶対に』などと仰るとは……それほどわたくしには魅力がありませんか……?」


「ち、違うんだ! 君は本当に可憐で美しい! その紅くつぶらな瞳も、ウェーブがかった金色の長い髪も、桃色のドレスも……本当に素敵だ! それだけは自信を持って言える!」


「わひゃんぬっ…………お、王子にそこまでお褒めいただけるなんて光栄ですわ……ですが、それならばいったい何故……」



「僕は…………悪役令嬢が好きなんだ」



 ぽかん。



 おぽかん。



 おぽかんお。



 思わず言葉を失ってしまいました。


「い、今なんと……」


「おかしなことを言っているのは分かっている。でも僕は……君のように清く正しく美しい女性よりも、むしろその逆……そういったヒロイン的存在の恋敵であり、自身の家柄や資産などをこれでもかと利用してヒロインを追い詰めていく……そんな狡猾で悪どい女性が『(へき)』で仕方ないんだ」


 ああ、なんてこと。



 全否定ですわ。



 今、わたくしの全てが否定されましたわ。


 とりあえず王子の口から『(へき)』なんて聞きたくありませんでしたわ。


 わたくしのお慕いする御方が、悪役令嬢フェチでしたわ。


 じわりと目に涙が滲みます。


 わたくしはそれを王子に見られないよう、急いで背を向けました。


「よく分かりましたわ……待っていてくださいまし、王子」


「ガーベラ、さん……?」


「失礼致します」


 わたくしは足早にその場を後にしました。


 今お話をして分かりましたわ。


 王子に性癖を変えていただくのは極めて難しいということ。


 今のわたくしのままでは、恋の成就は不可能に近いということ。



 ならば。



 それならば。



「わたくし……悪役令嬢になってみせますわ!!」





✳✳✳✳✳✳





「……というわけですの、セバスチャン」


「なるほど、そのような事が……心中お察し致します、お嬢様」


 わたくしが幼い頃からこの屋敷で執事として働いてくれているセバスチャン=チャンチャチャンが、わたくしに深々と頭を下げました。


「いいのです。王子が正直なお気持ちを伝えて下さったおかげで、わたくしも自分を変える決心がつきましたから」


「しかし、悪役令嬢になるというのは容易ではないのですじゃ。お嬢様は何を隠そう、あのベラベラベーラ家の御息女。王子の仰ったように『清く正しく美しい』立ち居振舞いが、頭から爪先までベットリと染み付いておりますゆえ」


 なんだか嫌な物言いですわね。人様の気品を油汚れみたいに。


「旦那様も奥様も、お嬢様には人として間違った道だけは歩んでほしくないと、常日頃から俺様にもお話しされていましたのじゃ」


 セバスチャン、これほどまでに完璧な老紳士の見た目で一人称が『俺様』なの不可解すぎますわ。いつまで経っても慣れませんわ。


「ですが……ですがわたくしは、なんとしてでも王子と結ばれたいのです。そのためなら、今までの生き方を変えることくらい……!!」


「この気合いの入りよう……お嬢様が悪役令嬢を通り越してチンピラのようになってしまわないか、俺様は不安ですじゃ」


「ちんぴら……猥語ですの?」


「猥語ではありませぬぞ。しかしながら……失礼を百も承知で申し上げますが、王子の『(へき)』とやらもなかなかに変わっておりますな」


 セバスチャンが自身の白く長いヒゲを触りながら、言いづらそうに呟きました。


「己の社会的な地位を利用し、あらゆる汚い手を使って他の女性……いわゆるヒロインの恋路を阻むも、最終的にヒロインはハッピーエンドを迎え、自身は痛い目を見て破滅の道を辿ってしまう……これが、一般的な悪役令嬢というものですじゃ」


「悪役令嬢とやら、最近になって耳にする機会が増えてきた気がしますわ。殿方の間で流行っているのかしら……ヒゲスチャンもお好きなんですの?」



「いや、俺様は大食い読書家ヴァンパイアが昔からの性癖なので」



 よくそれで王子の好みにどうこう言えましたわね。



「角煮とともに!!」


「なんですと?」


「……あっ、間違えましたわ。とにもかくにも!!」


「言い間違いが凄まじいですな。お嬢様が王子を諦め、豚と添い遂げる道を選んだのかと思って驚きましたぞ俺様は」


「とにもかくにも!! 一人前の悪役令嬢になるため、いざ特訓開始ですわ! セバスチャン、手伝いなさい!!」


「イヤですじゃ」


「……とにもかくにも!! 一人前の悪役令嬢になるために特訓開始ですわ! セバスチャン、手伝いなさい!!」


「仰せのままに、お嬢様」


「なんで一回断りましたの?」





✳✳✳✳✳✳





 こうして、セバスチャンによる地獄の特訓が始まりました。



「お……おーほっほっほ!! 貴女のような汚らわしい小娘が王子に近付かないで下さいますこと!? 王子に相応しいのは、このわたくしですわ! おーほっほッッゴハッッガハッゲホッゲホッオエッッッ!!」



「カット!! 肺が弱い!!」



「そ、そう言われましても……わたくしこのような台詞は言い慣れていなくて……」


「言い訳は無用!! そのような事では一人前の悪役令嬢にはなれませぬぞお嬢様ァッ!! さあ、今度はあの夕日に向かって悪役ダッシュですじゃ!!」


「ひ、ひええええ…………」


 熱血ですわ。熱血執事ですわ。


 わたくしはただセバスチャンに、悪役令嬢になるにはどうすれば良いのかを一緒に考えてほしかっただけですのに。


 なぜわたくしは今、こんなにもヘトヘトになっていますの? 悪役ダッシュとはいったい?


 ですが、セバスチャンが言うには、これは悪役令嬢になるためには避けて通れない道らしいですわ。



 きっと世の悪役令嬢は、誰しもが夕日に向かって悪役ダッシュをした経験がおありなのですわね。



「ゼハー、ゼハー……あぅぅ、もう限界ですわぁ……」


「誰が座っていいと言いましたか!! さあさあ早く立ち上がりなされ! そしてまだまだ走り続けるのですじゃ!! ほらご一緒に、あっくやく!! あっくやく!! あっくやく!!」


「あっ……あっくやくぅ……あっくやくぅぅぅ……」


「声が小さァい!! 悪役令嬢になる気がないなら帰れ!! 一生清く正しく美しく振る舞っとけ!!」


「っ…………あっくやく!! あっくやく!! あっくやく!!」


「おおっ、その意気ですぞお嬢様!! さあもう一度、先程の台詞を!!」



「……おーほっほっほ!! お前のような汚らわしい老いぼれがわたくしに近付かないで下さいますこと!? お前に相応しいのは、無数の死神ですわ! おーほっほっほっほ!!」



「カット!! すごく傷付いた!!」



 こうしてセバスチャンによる地獄の特訓は次の日も、また次の日も続いていくのでした。





✳✳✳✳✳✳





 一ヶ月後。


 わたくしは自室で身支度を整えていました。



 王子に、晴れて悪役令嬢となったわたくしの想いを改めて伝えるために。



「……よくぞここまで耐え抜きましたな、お嬢様。もう俺様から教えることは何もありませぬ」


「辛い特訓の日々も、ついに終わったのですわね……これでわたくしは、一人前の悪役令嬢になれたのですわね……」


「ううっ……お嬢様が立派な悪役令嬢になられて……俺様は、俺様は嬉しゅうございます……!!」


「泣くのは告白が成功してからですわよヒゲ。さて……そうと決まれば早速、王子の元へ……」


「っ!! お待ちくだされお嬢様!!」


 緊張しながらもゆっくりと部屋を出ようとしたわたくしの後ろで、セバスチャンはいきなり大声を出しました。


 そして、危機迫った様子でわたくしの両肩をがっしりと掴んできました。


「な、何事ですの?」


「俺様は大変なことに気づいてしまいましたぞ!!」


「たたたた大変なこと?」


「以前も申し上げた通り、悪役令嬢とはヒロインの恋敵であり、ヒロインの恋路を邪魔する存在なのですじゃ」


「ええ、存じていますわ。それがどうかしましたの?」



「ではそのヒロイン役というのは……いったい誰が務めるのですか?」


 

 おほ?



「悪役令嬢というのはヒロイン役がいてこそ輝くもの。ヒロイン役のいない今のお嬢様は…………ただの『なんかよく分からんけどいきなり高飛車な態度を取ってくる嫌な女』ですじゃ」


 なんですって……?


 盲点でしたわ。お盲点でしたわ。


 わたくしは自分が悪役令嬢になることばかり考えて、肝心なことを忘れていたのですわ。


 これでは王子の好きな悪役令嬢としての条件を満たしているとは言えませんわ。


 このままでは悪役令嬢としてではなく『なんかよく分からんけどいきなり高飛車な態度を取ってくる嫌な女』として、王子に告白しなければならなくなりますわ。


「わたくしとした事が……ど、どうすれば良いんですの!? わたくしの恋敵となってくれる、清純で可憐なヒロイン役などどこにも……」



「俺様がやりましょう」



 おぞましい発言が聞こえたような気が。



「こうなったら背に腹は代えられませぬ。お嬢様に恋路を邪魔されるヒロイン役…………このセバスチャンめが務めさせていただきますじゃ」


「いやいやいや。おいやいやいやいや。それはさすがに無理がありますでしょう。享年80歳のセバスチャンがヒロイン役だなんて……」


「死んでませぬぞ。俺様は執事として、お嬢様の今までの苦労を無駄にするわけにはいきませぬ。お嬢様が王子と結ばれるためならば、俺様はヒロインだろうと踊り子だろうと、何にでもなってみせますじゃ」


 確かに踊り子になられるよりかは遥かにマシですが……。


「そうと決まれば善は急げですぞ!! お嬢様、しばし外でお待ちを!!」


「わわっ、ちょっとセバスチャン、何を…………!!」


 セバスチャンはわたくしの背中を押し、部屋の外へ追い出したかと思うと、バタンと勢いよく扉を閉めてしまいました。


「ヒロイン役になるって……いったいどうするつもりですの……?」


 嫌な予感を拭いきれないまま、待つこと一時間ほど。


 焦るわたくしの思いとは対照的に、部屋の扉がゆっくりと開かれました。



「お待たせ致しましたぞわ、お嬢様」



 それは、地獄のような光景でした。



 先ほどまで黒い執事服に身を包んでいた後期高齢者は、鮮やかな水色のドレスを纏い、しゃなりしゃなりと姿を現しました。


 顔中に紫やピンクのチークがくっきりと散りばめられており、少し口にしただけで三日三晩苦しんだ後に血反吐を吐いて死亡確定の毒キノコの如し。


 白い口ヒゲはそのままに、唇には真っ赤な紅が差してあり、何か言葉を紡ぐ度に(うごめ)くその姿は、さながら新種のキモ毛虫。


 白髪まみれの頭の頂上にチョコンと乗せられた黄色の花飾りが『助けてくれ』と悲鳴をあげ続けています。


 見る者全てを終わることのない絶望と吐き気へと誘う、災厄にも似た存在。


 それを間近で直視してしまったわたくしの三半規管は、瞬く間に限界を迎えました。


 目の前の老紳士(女装)のあまりの気持ち悪さに平衡感覚が狂い、立っていられなくなったわたくしはたまらず床に倒れ込み……



「うっ……おええええ…………」



 わたくし、これから王子に告白するところだったのですが。


 どうしてドレスアップした老人の前で嘔吐してますの?


「おっ、お嬢様!! どうされたのですぞわ!? 気分でも悪いのですぞわ!?」


 まずその執事と令嬢が混ざったような語尾をやめなさい。ぞわぞわしますから。文字通り。


「まあとりあえず、出すもの出してスッキリしたところで、俺様……もとい、セバリーナと共に王子の所へ参りましょうぞわ、お嬢様!!」


「セバリーナってなんですの腹が立つ。参れるわけないでしょうが……こんな汚い姿の令嬢とこんな汚い姿の執事で。というか……」


「むむむ?」



「なにわたくしの衣装やら化粧道具やら勝手に使ってますのこの老いぼれ変態クソ執事がぁっ!!」



「痛リーナッッッッ!!!」



 わたくしはセバリーナの醜い顔面に渾身の飛び膝蹴りを放ち、着替えとお化粧直しのために自室に戻りました。


 まったく、ここのところ良いことが一つもありませんわ。


 ですが、だからこそ……。



 王子への告白だけは、なんとしてでも成功させなければ。



 汚れを全て洗い流し、化粧を始めからやり直し、新しく黄色のドレスに着替えたわたくしは、今度こそ屋敷を後にします。


「ヒゲ破廉恥のせいで余計な時間を使ってしまいましたわ……早く王子の元へ向かわないと!」


「いやはや……お日柄も良く、絶好の告白日和ですぞわな」


「どうして壁にめり込むほど豪快に蹴り飛ばしましたのに当たり前のように復活してますの?」


「言ったはずですぞわ……悪役令嬢にはヒロイン役が不可欠。他に手がない以上、お嬢様は俺様を頼る他ないのですぞわ」


 この期に及んでまだ自分がヒロイン役を担えると思ってるの狂気でしかありませんわ。お顔もボコボコになってしまってまあ。


「とはいえ、貴方のような革命的変質者を王子の元へ連れていくわけには……」



「僕がどうかしたのかい……?」



 背後から優しく、凛とした男性の声。


 振り向くと、そこにはプリンス=プリンプリン王子が、少々困り顔で立っておられました。


「おっ、王子!! どうしてわたくしの屋敷に!?」


「君が最近、執事と一緒に『あっくやく!!』と叫びながら、毎日のように国中を走り回っているのを見ていた。もしかしたら、以前僕が君に言ったことが関係しているのかと思い、確かめにきたんだ。それに、伝えたいこともあって……」


 そ、そんな……わたくしの日々の特訓の様子が王子に見られて……!?


「これは好機ですぞわ、お嬢様」


「セッ、セバリーナ!?」


 すかさずセバリーナがわたくしに耳打ちします。


「今こそお嬢様の悪役令嬢っぷりを遺憾なく発揮するときですぞわ!」


「くっ、しかし……」


「ここに来て何を怖じ気づいているのですぞわお嬢様ァッ!! あの辛い特訓の日々をお忘れかこの野郎が!!」


 そ、そうですわ。


 わたくしは王子のお好きな悪役令嬢になるために、血の滲むような努力を……!


「もともとお嬢様には、恋慕の情を抱いているはずの相手にメンチを切ったり、猥語だと思うものに過剰に反応したりと、決して清楚とはいえない野蛮で下劣な側面が見え隠れしておりましたぞわ」


 ここに来て衝撃的な悪口。


「しかし、幼き頃からの旦那様と奥様からの厳しい教育のおかげで、お嬢様はそういった令嬢らしからぬ言動を完全に封印し、誰にも気付かれることなく今日まで生きてこられましたぞわ」


 つい先程『野蛮で下劣な側面が見え隠れしておりましたぞわ』と言ってましたが。


「清く正しく美しく……それも大変結構な生き方でございましょう。しかしそれではきっと、お嬢様は幸せにはなれぬのですぞわ。どうぞご自身の気持ちを包み隠さずぶつけてくださいぞわ、お嬢様!」


 確かにキモリーナの言う通りですわ。


 どのみち王子は悪役令嬢が『(へき)』なのです。



 ならば、今わたくしにできることは……たった一つ。



「おーほっほっほ!! 貴女のような汚らわしい老……小娘が王子に近付かないで下さいますこと!? 王子に相応しいのは、このわたくしですわ! おーほっほっほっほっほ!!」



 言えましたわ。


 一ヵ所だけ間違えてしまいましたが、今までで最も悪役令嬢らしく、この台詞を言い放つことができましたわ。


「王子、今やわたくしは完全なる悪役令嬢ですわ。その上で、改めて言わせてくださいまし。ぜひわたくしと……わたくしと恋仲に」



「本当にすまない!! 僕の『(へき)』はこの1ヶ月の間で、悪役令嬢から女装男子に変わってしまったんだ!!」



 ぽかん。



 おぽかん。



 おぽかんお。



「セバリーナさんと言ったかい? なんて素敵な女装なんだ……良ければ一緒に食事でもどうだろうか」


「えっ……そんな……恥ずかしいですぞわ……ポッ」


「僕は毎日トマトジュースを30杯飲みながら書物を読み漁るのが趣味でね。君にもぜひご馳走したい」


「は? やってること大食い読書家ヴァンパイアじゃん。大好きなんだが俺様」


「ははっ、どうやら僕たち気が合いそうだね。さあ、城まで送ろう」


「ふっ、ふつつか者ですがよろしくお願いいたしますぞわ……!」



「あははははははは!」



「うふふふふふふぞわ!」



「あははははははは!」



「うふふふふふふぞわ!」



 王子とセバリーナが手を繋ぎ、幸せそうに笑い合いながら去っていきます。


 二人の後ろ姿を見て、わたくしはセバリーナ……いえ、セバスチャンが言ったことを思い出しました。



『最終的にヒロインはハッピーエンドを迎え、自身は痛い目を見て破滅の道を辿ってしまう……これが、一般的な悪役令嬢というものですじゃ』



「こ、これが……破滅…………」



 どうやら皮肉なことに、わたくしの『悪役令嬢になる』という当初の目標は、これにて完全に達成することができたようです。



 ですが。



「おっ……お待ちなさいセバリーナ!! わたくしを…………わたくしをどうにかして女装男子にしてくださいましぃぃぃぃ!!」



 辛い辛い特訓の日々は、まだまだ続きそうですわ。






                  おFin.



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
今まで読んだコメディの中で一番面白かったかもしれません。終始すごく純粋に笑えて読後の爽快感がいいです。 みんなの名前に心の中でくすっとしながら読み進めて、角煮とともに!で笑いが顔に出てしまいました。 …
ベラベラベーラ家の破壊力が凄まじかったのにその後登場するキャラの名前でいちいち笑ってました笑笑 油汚れみたいな気品とか大食い読書家ヴァンパイアとかワードチョイスがツボです笑 セバスチャン一人称『俺…
投稿お疲れ様です! 猥語が狸語に見えましたꉂ(´ᗜ`*)ヶラヶラ 飛び膝蹴り良きでした(๑•̀ㅂ•́)و✧
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ