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パトパト神話伝  作者: 閑野るた
序章
2/2

2.そして星々へ

「え、ええー!世界旅行がしたいって」

やっと帰ってきたと思ったパト様からいきなりそんな事を言われ、私は思わず大袈裟な声色(こわいろ)で復唱してしまいました。

「大事なことなんだよ!アリシア!頼む!」

どうやらパト様は本気で言っているらしく、両手を合わせて頭を下げ、14歳という遊びたい盛りの無邪気な声で私に必死にお願いしてきます、なんて愛おしい。



実際のところ、主様の言うことは絶対なので別に否定する気はありません。しかしそれにしても唐突すぎたため、少し困惑してしまいました。

とりあえず落ち着いてもらうために、おねだりしているパト様に許可を出しつつ1つ質問をします。

「私もパト様の専属神ですから否定はしませんが… 、 どうやって世界を回るつもりなんですか?この宇宙は広大すぎるので迷子になるかもしれませんよ?」



そこは私の懸念点でもありました。いくらパト様が世界最強とはいえ、この宇宙全体を掌握している訳では無いですし、幼い故に思いがけない事故を引き起こす可能性もあります。

「流石!流石はこの城のNo.3だぜ!世界旅行に関しては問題ない!メリアに着いてきてもらうからな!」

しかし私の懸念点は、分かりやすく私を褒めてくれたあと意外にもすんなりと解消しました。なるほど、もうメリア様とは約束済みというわけですか。



こういうことになると行動力が一層高くなるなとパト様に感心しつつ、今日の疲労とお2人が不在中どう帝国を動かそうか考えようと視線を部屋の隅にずらします。

すると先ほど一緒に帰ってきたメリア様が能力で作った風を全体に吹きかけ、汗を乾かしながら私たちの話を聞いている姿が目に映りました。

激しい運動をしていたにも関わらず髪などは一切崩れておらず、その美貌はメリア様を変わらず照らし続けています。



するとずっと見ている私の視線に気付いたのか、メリア様がこちらへ向かって歩いてこられ、私の体調を気に掛けてくれます。

「お互い苦労するわね、アリシア」

「いえいえ、たった2人の専属神の仲じゃないですか、大丈夫ですよ」

「流石は次期神王候補なだけありますね!」

「私は最上級クラスの第4位です、まだまだ先ですよ」



メリア様は普段厳しいのですが、評価するに値すると感じたことはしっかりと褒めてくれるので素直に嬉しいです。しかし私アリシア、お2人に追いつくにはまだ程遠いのでしっかりと謙遜して向上心を見せます。帝王神候補と最上級神の間には天地の差があるのです。



するとメリア様が申し訳なさそうに謝ってきました。

「苦労してるところ、本当にごめんね!」

「いや、今は特に苦労してないですよ」

さっきは疲れが態度に出てしまいましたが、もうそんな見苦しい姿はみせたくありません。両手で頬っぺを叩いて気合いを見せます。

メリア様は優しく微笑みながらこうして頑張る私を応援してくれて、パト様は「良いぞー!」と応援団の真似をしながらエールを送ってくれて…ちょっと照れ臭くなり目を泳がしていたのですが、次の瞬間、パト様が衝撃的なことを口にしました。



「そういえば最上級4位とか神王候補って何だ?」

それは予想だにしていなかったセリフ、流石のメリア様も少し呆れ気味にパト様を見つめていました。

それもそのはず、こうした神の階級であったり自身の専属神・従属神の地位を知ることは神界では常識中の常識です。 私は新参者で大まかな知識があるだけで詳しくは知らないのですが、まさか帝王神候補であるパト様も知らなかったとは。

普段の帝王神候補学や能力学などに力を入れすぎるあまり、基礎的な知識を忘れていたのでしょうか。



私もちょっと呆気にとられていると、メリア様が目の前で溜息をつきながらパト様に提案をしました。

「神の階級制度や専属従属神の地位を知っておくことは神界では常識です。世界旅行に行くのなら、せめて一般常識くらいは覚えてもらいましょう。今から説明しますのでよーく聞いておいてください!」



そう言ってメリア様は、どこから取ったのか神の地位についてまとめられた用紙を能力で目の前の空中に浮かせ、私たちに見えるように広げ固定しました。

パト様はまさかこんなに言われるとは思わなかったと言わんばかりに目を丸くしていましたが、メリア様の言っていることも正しいと理解したのか大人しく指示に従います。



私もちょうどいいと思い、この機会に詳しく勉強しようとパト様と一緒にメリア様に頭を下げます。

「よろしく頼んだ」

「私もお願いします!」

それを聞いたメリア様は笑顔で返事をし、説明をはじめます。

「私たち神の地位は()()7段階で分けられています。この表を見てください。」



~~〜~~~〜~~〜〜~~〜~~~〜~~〜〜~~


【帝王神(U)】戦闘力約1阿僧祇以上

1→全世界の王

2→帝王神候補の神を超える力


【帝王神候補(SSS)】戦闘力約1正以上

1→生まれた段階で決まる

2→現時点で12体しか存在しない

3→神王を軽く倒せる

4→潜在能力が未知数

5→個体ごとに順位が付けられてる


【神王(SS)】戦闘力約1穣以上

1→各世界の王

2→全世界で100体しか存在しない

3→戦闘力は軽く1垓を超える


【最上級神(S)】戦闘力1垓以上

1→上級の中でも優れた神

2→個体毎に順位をつけられる

3→戦闘力が1垓を超える個体が多く存在する

4→神王候補


【上級神(A)】戦闘力1京以上1垓未満

1→中級、下級を支配する存在

2→星や各宇宙を管理する

3→戦闘力が最低1京必要

4→パトの城の配下はこの地位から所属できる


【中級神(B)】戦闘力1兆以上1京未満

1→信仰、崇拝なしで存在できる

2→戦闘力が最低1兆を超えている


【下級神(C)】戦闘力1兆未満

1→信仰、崇拝で生命体から力を取る神

2→ほとんどの神がこの地位に属する


〜〜~~〜~~~〜~~~〜〜~~〜~~~〜~~〜



「このように7つの指標でどの地位の神か分かります。」

表には階級名と戦闘力、各階級の特徴が箇条書きで記載されています。

私はこう見えて覚えるのが得意なので、この表を見て完全に理解することができました。



「下級は信仰や崇拝などで生命体から力を分けてもらうことで存在できる神を現します。各星々に依存する神のほとんどがこの地位に属します。」

たしか神全体の99%以上がこの地位だと聞いたことがあります。各星に伝わる神話に出てくる神は大体全員この地位になります。



「そして中級は信仰なしで存在することができる神を現します。あと、最低条件で戦闘力が1兆を超えている必要があります。この地位になると下級に比べてかなり数が減ります。」

下級より数が減るといっても、それでも無数に存在するらしいですね。ここまでは何となく覚えていました。



「次は上級、この地位は中級以下を支配する存在を現します。この地位では全分野で優秀でなければこの地位になることはありませんし戦闘力も最低1京(10000兆)は必要と定められています。ちなみにご主人のお城に属する神はこの地位からになります。今の配下が1兆あたりなので、全世界の7割以上の上級を従えていることになります。」

そうそう、この帝国は世界的に見ても強大な軍事力を誇る大国で、実は優秀な女神が揃っています。

パト様はふむふむとノートにメモをとって覚えようとしているようでした。



「そして次が最上級、現時点で全世界に100体しかいないと言われている上級の中でも優れた神を現します。この地位になると神王候補に選ばれ、各個体に順位がつけられるようになります。私と同じ専属神のアリシアは最上級クラス第4位と優秀な成績を収めている神です。ご主人はそこまで関心がないみたいでしたのでアレですけどね。」

メリア様が私の方をチラッと見てきました。別に理解されてなくて悔しかった訳じゃないんですけどね。



「そして神王、各世界に10体だけ存在する各世界の王となる存在です。各世界、詰まり10の世界があるので、数は合計100体となります。この地位になるためには最上級が現神王を倒すか、神王が指名するか、もしくは順位順に神王になるかの方法しかありません。この地位になると戦闘力も平気で1穣(10000杼)を超えてきます。」

この地位は今の私の目標地点でもあります。

現状はまだ序列4位で神王を倒す実力もなく、指名にも程遠いと思いますが地道に頑張っていきます。



「そして次は帝王神候補、この地位は特殊で頑張ってなれるものではありません。生まれた時の潜在能力の高さ、能力の質、などの要素がほぼ神王超える個体がこの地位になります。現在、現帝王神メルトリアの10体の子供とパト様、あとパト様と同じ突然変異種個体の神、合計12体が属します。この地位も帝王神候補として順位が付けられていてパト様は1位、私メリアは10位に属しています。あと、この地位の共通点は神王を軽く倒せる神しかいないということです。現にパト様も2歳の頃にはすでに触れずに全神王に勝っています。私も2歳ごろに同じく全神王を倒しています。」



改めて聞くと本当に凄いです。

メリア様は何気なく話していますが、努力やちょっとした才能だけでのし上がれる地位ではないということは、神王を目指すので精一杯な私に刺さります。

やはり、一生パト様とメリア様には頭が上がりそうにないですね。



「そして最後が帝王神、全世界の頂点に君臨する神で、私のお母さんでもあります。その強さは、私も見たことはありませんがこの私達でも想像を超える力を持っているのは確かです。帝王神になる条件は2つ、帝王神候補で1位であること、現帝王神を倒すこと。つまり帝王神を倒すことで、帝王神になることができるのです。」



こうしてメリア様による神界階級制度の説明が終わりました。

この短い時間にパト様が居眠りをしていたのはまた別のお話です(そんな事ない気もしますが)。











あれからパト様はメリア様から受けた説明を2人で一緒に覚えており、その間に私が帝城の雑務を済ませているとすっかり夕暮れ時になっていました。

ちょうど今いる部屋から上はパト様と専属神専用の特別階層になっていて、水晶を使って作られたこの部屋は(きら)びやかでいくつかある出窓からは城下町を一望できます。

外を見ると地平線に差し掛かった太陽が辺り一体を黄金色に輝かせていました。



「それじゃあ悪いけど、配下の面倒よろしくな!」

ちょうどパト様たちも終わったらしく、声が聞こえて振り返ったのですが・・・

「毎回帰ってこないのですか?」

「どうせなら、その星で寝泊まりしたいそうです」

「当然だろ!毎回帰ってきてたら意味がないだろ!」

なんということでしょう。旅行中ずっと帰ってこないそうです。

このお2人が帰ってこないということは、その間帝城の管理は私1人でやらなければならないということです。

はあ〜〜、頭が痛くなってきたわ。

思わず溜め息と独り言が出てしまいましたが、2人が気付いてないのでセーフとしましょう。



それから私は少し考えて、パト様が安全に帰ってこられるようにひとつ約束をすることにしました。

「わかりました!ですがパト様!私から1つ条件があります!」

「条件?」

「星訪問の時は必ずメリア様の言うことを聞いてください!メリア様は全世界の地理と作法を全部習得してますから」

そう、メリア様は帝王神メルトリアの家系特有の能力【全知全能】があるため知らないことはありません。行くならせめてメリア様の言うことは聞いて欲しいところです。



実際問題、宇宙にはまだ解明できてない異常空間がいくつか存在し、過去に帝王神候補がその空間に巻き込まれて行方不明になる事件が発生したと聞いたことがあります。

その他にも色々と危険な状況が想定できるので、最低限メリア様の言うことは守って欲しいのです。

ですがパト様はあまりこの重要さに気付いてないのか、なぜか少しだけドヤっとした表情をしているメリア様をおちょくっていました。

「お、そうだな!便利だな!全知全能!」

「こういう時だけ褒めないでください!でもアリシアの言う通りです!ご主人は法則は理解してますけど、言語とか作法はからっきしですからね!」

「う、それを言われると・・・」

しかしさすがはメリア様、こういう重要な場面ではイタズラモードのパト様も無理やり説得させてしまいます。

特に喧嘩になることも無く、パト様も納得してくれましま。



「それじゃあ決まりですね!」

「ああ、仕方ない、メリア、その場でちゃんと教えてくれよ」

「はい!それでは明日準備が出来たら私の部屋に来てくださいね!」

「俺が行くの?」

「パンツを盗んだ罰です!明日は甘やかしません!」

「専属神ってなんだろうな・・・」

ほんと、仲良いですねこの2人。











次の日、私は旅支度をしているご主人を呼びに部屋の前まで来ていました。

「ごしゅじーーん!準備できましたかー?」

太陽がすっかり顔を出し始めた朝の7時、昨日あまり寝れなくてまだ少し眠い体を無理やり起こしてご主人の準備を待ちます。別に今日が楽しみで寝れなかったとかじゃないですよ?

「結局迎えに来てるじゃないか、メリア」

心做しかいつも以上に整った姿のご主人が部屋から出てきて、なにやら私に不服そうなジト目を向けてきました。…好きです。

馬鹿だなぁ〜ご主人、本当にご主人を動かすわけないじゃないですか。…可愛いです。

ちょっと漏れ出てしまった本音は心の中にしまっておいて、早く旅に出たかった私とご主人は足早でアリシアのいる階に行って挨拶をします。



「それじゃあ後は任せたぞ!」

現在時刻7時30分。すでにアリシアは帝城にいる人数分の食事を作り終え、清掃に入っていました。

その後に書類制作やら配下指導やら帝国政治やらでさらに忙しくなると思うと、大丈夫と言われてても申し訳なく思ってしまいます。

しかしアリシアは思いのほか強い子なようで。

「大丈夫です!私の分身を既に1億体配置させましたので!」

「もうですか!?すごいですね!」

「最上級の家政婦?」

食事だけでなく人手の整理もしていたとは。

私はよく分からないツッコミをしているご主人をよそにアリシアと手を組み、素直に褒めました。

そして。

「なに馬鹿なこと言ってるんですかご主人」

「今馬鹿って言ったね!主人に馬鹿って!泣くぞ!俺だって泣くんだからな!」

いじけてるご主人最高ですね。しばらくそのモードでも良いんですが…。



いつもの願望も程々に、アリシアに最後の挨拶をかわします。

「それじゃあアリシア、お願いね」

「はい、メリア様」

よし、やっとご主人と2人で旅に出られる。胸の中でガッツポーズを決めご主人と共に帝城の外に向かいます。スキップをしているみたいに軽快に足が進み、心が踊っているような感じさえします。

夢にまで見たご主人と2人きりのデート。しかし少し浮かれてしまっていることに気付き、なんだか少し恥ずかしくなってきました。



ご主人にバレてないか心配で反応を見るために顔色を確認してみます。すると意外にも

「そんなにパンツで怒ってるのか!メリア!」

「もうパンツは関係ないですよ!」

さっきの馬鹿発言を気に病んでいたのか、少し怒った口調で急に昨日のことを掘り返してきました。

本当年頃の女の子にパンツパンツ言わないでほしいです!はしたないし恥ずかしい!

そしてなにやら後ろから子供のじゃれ合いを見て微笑んでいるようなアリシアの気配がしたのですが、私の平常心を保つために気付いてないふりをして足早に外に出ました。



広大な大地と爽やかな青空。賑やかな神の声や小鳥のさえずりが自然の音楽を奏で、まるで私たちの旅の出発を歓迎しているかのようでした。

「それじゃあ行くぞ!メリア!」

アリシアに見送られながらご主人が手を伸ばしてきます。

「はい!ご主人!」

私は迷わずその手を取り、無限に広がる宇宙へ飛び出しました。




こうして私達は世界の星々を巡るようになったのです。










************************













「さて、そろそろ娘たちが帰ってくる時間かしらね」

ここは【太陽系第三惑星 地球】。宇宙単位の住所で言うなら、【ラニアケア超銀河団・おとめ座超銀河団・おとめ座銀河団・局部銀河群・ 天の川銀河・オリオン腕・太陽系第3惑星 地球】といった感じか。

さらにその地球の中の日本という国のとある場所に、【四季神社】と呼ばれる神社と家系があった。

それは何百年も前からある由緒正しい神社であり、名前の通り四神を祀っている。その力は強大で、そこに仕えている【四季家】は四神の力を使って度々起こる異変から幾度となくこの地球を救ってきた。

他にも日本には有名な神社がいくつかあるが、そのどれもが強大な力を秘めている家系であり、人知れず地球を守っている者もいる。

これはそんな四季神社でのお話。



「お父さんは結局出張先で大火災が起きて帰れなくなったらしいし大丈夫かしらね〜」

彼女の名前は四季 礼花。4姉妹の母親で、四季家現当主の妻である。

礼花はどうやら家族の帰りを待っているところらしかった。

「ただいま〜」

すると早速1人、神社らしい引き戸を開けて4女の芦花が帰ってくる。

茶髪のおかっぱ頭とアホ毛が特徴的な子である。



「芦花、今日もまっすぐ帰ってきたのね」

芦花は真面目で成績良好、さらに元気もある優秀な中学生だ。

「うん!今日は月花姉に新技の特訓に付き合ってもらう約束なんだ♪」

「んん?月花が?」

「とりあえず準備するから先にいくね〜〜」

「おかしいわね、今日月花塾で遅くなる予定だったはず・・・」



月花とは四季家の長女で姉妹最高の能力者であり成績優秀者である。

そんな一見完璧な彼女だが、かなしいかな、サボり癖という致命的な欠点があった。礼花が怪しむのも無理はない。

「お母さんただいま~」

やはり月花が帰ってきた。銀髪のおかっぱ頭をした姉妹最強の高校生。



「月花・・・塾はどうしたのかしら?」

礼花は単刀直入に聞く。

塾があれば本来帰る時間は数時間遅くなるはずだ。

「ああ、今日は設立記念日だから休みだよ♪」

「あなたの塾には何日設立記念日があるのよ!!」

やはりただのサボり。それに毎度同じ言い訳を使うあたり全然懲りてない。



「それじゃあ芦花が待ってるから行ってきま〜す」

「こら!まだ話は終わってない!っていないか」

よくこれで成績を維持できるなと謎の関心を抱いた礼花をよそに、月花が適当にあしらって逃げ出した。

「まったく、あの子のサボり癖は一体誰に似たのかしら。さて、そろそろ夕飯でも作りましょうかね」



子育てをする母親が大変なのは全国共通らしい。

娘の教育に悩みながらももう夕飯の時間になってしまった。

「桜花と雪花は今日も遅いのかな・・・」

礼花はまだ帰ってない2人を心配しながら、台所に立ち夕飯の準備を進める。











「はあ、何やってるんだろ、私・・・」

彼女の名前は雪花。落ちこぼれの次女で、水色のおかっぱ頭が特徴的な女の子。

しかし雪花は家に帰らず深い森の中にいた。

「結局帰らずにこんな森の方にきちゃった。どうせ帰っても、私の居場所なんて・・・。どうせみんな月花お姉ちゃんと芦花ちゃんに期待する。私なんて、誰も期待されない・・・」



そう、雪花は自他ともに認める落ちこぼれ。どうせ帰ったところで居場所なんかないと思い込み、家に帰らずさまよっていた。いわゆる家出である。

「おやおや?そこにいるのは我が姉ではないかね?」

「こんな森で会うなんてやっぱり私達には何か凄い力があるのかしらね」

するとそこに雪花の双子で3女の桜花が現れる。



「桜花、こんなところで何してんの?」

「ふふふ、今日こそわらわの演舞を完成させるための」

桜花はピンク色のおかっぱ頭をしており非常に綺麗な容姿ではあるのだが、重度の厨二病だった。

「桜花!!良い加減にしなよ!!最近わけのわからないことばかり言って!帰りもずっと遅くて!学校も遅刻!成績もほぼ最下位!挙げ句の果てには髪を染めて変な色になってる!!何がしたいの!!」

「雪花ちゃんならわかるでしょ・・・落ちこぼれの気持ちが・・・」



そして桜花も四季家の中では落ちこぼれだった。何をしても上手くいかずに修行は半ば諦め、代わりにこうして厨二じみた遊びをよくしていた。

「努力しても努力しても月花お姉ちゃんや芦花ちゃんに離されていくばかり」

「だからと言ってサボっていい理由には!」



しかし雪花と桜花には、向上心があるかどうかという違いがあった。もはや強くなることを諦めてる桜花に対して雪花には、まだ強くなりたいという明確な意思があった。

それは雪花が【能力者】として生まれた以上、責務を全うするべきだという考えのもと生まれた気持ちだった。

なので、弱い者同士仲良くするということはなく、むしろ意見が剃り合わずに喧嘩になることが前から何度かあった。



「じゃあ何しろって言うのよ!!!このまま負けることが決まってる戦いをずっとやってろと!?私は雪花ちゃんみたいにはなりたくない!!全部中途半端で結局結果を出せてない!なら私は自分の好きなことをして、卒業したらすぐにでもこの家から出て行ってやる!!」

「桜花・・・」

「私は私なりに幸せな形を見つける、雪花ちゃんは邪魔しないで」

「わかった、なら勝負して決めましょう。桜花が勝ったらあなたの言う通り、好きにしてもいいよ。けど、私が勝ったらせめてちゃんとした生活をしてもらうのとサボりだけはやめてもらうわ」



ここまではテンプレ。いつも喧嘩して戦ってなんだかんだ仲直りしての繰り返しだった。

「わかった!いいよ!私が勝ったらもう私に指図しないで・・・」

「ええ、いいわよ」

「いくよ」

そして何度目かの本気の戦いが始まる。










一方その頃、パト一行はこの地球を目指して宇宙を走っていた。

次回、能力関係の基本設定解説があります。

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